ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778602

作品紹介・あらすじ

『博士の愛した数式』の小川洋子さん絶賛!
「思慮深く、優しい声で、ダニエルは私たちにそっと教えてくれる。この世界は、生きるに値する場所である、と」

ぼくが生まれたのは一九七九年の一月三十一日、水曜日。水曜日だとわかるのは、ぼくの頭のなかではその日が青い色をしているからだ。水曜日は、数字の9や諍いの声と同じようにいつも青い色をしている。―――<本書より>

ヒゲがうまく剃れない。右手と左手をうまく操るのが難しいから。
人の言葉が聞き取れない。雑音の混じったラジオを聞くように、意味がつかめないから。
代わりに、彼は数字のなかに風景を見ることができる。
円周率22,500桁を暗唱するとき、豊かな景色が彼に正解を教えてくれる。
新しい言語を覚えるとき、文字の色が彼に正解を教えてくれる。

サヴァン症候群とアスペルガー症候群、そして共感覚をもつ、言語と数学の天才青年ダニエル。
他人と違うゆえの「普通になれない」悩みと、それ自体を人と分かち合えない苦しみ。
思春期をこえて、大人になろうとする彼が選んだ「自立」とは。
ダニエルが「頭と心の中」を語る感動の手記。
解説:山登敬之(精神科医)

感想・レビュー・書評

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  •  数字ととても、馴染んでいるのだろうなと思います。タメットさんにとって、数字があって、当たり前なのかもしれませんね。自分にとって、あって当たり前のものや能力って何だろうか?と考えます。

  • 言語と数字に関して驚くべき才能を有しながら、アスペルガー症候群であることから、対人関係においてはとても苦しんだ著者のダニエル。
    この本は、彼が自身のこれまでの人生での体験と考えを綴ったものです。
    その素晴らしい才能も去ることながら、彼自身がどういった苦悩を持ち、それにどう折り合いをつけて、あるいは克服して今にいたったかの部分にとても興味を持ちました。
    僕の息子も、ごく普通に高校生活を送っていますが、幼い頃に広汎性発達障害と診断され、ちょっとした時に垣間見せる「違い」に親として戸惑ったこともありました。
    そんな僕にとって、経験者本人の筆で語られる言葉は、今更ながらとても勉強になりました。
    そして、そんな彼を支え続けている家族の姿にも胸を打たれ、励まされるものがありました。
    ただ、ダニエルの人柄もあるのでしょうが、本書は決して重くも暗くもない、読みやすいお話です。
    誰にでも、気軽にすすめられる本が、また一冊増えたなと思っています。

  • 自閉症スペクトラムであると同時にサヴァン症候群で高い語学力や数字への理解を併せ持つダニエルの自伝。
    彼は同時に共感覚を持ち、数字が色や形や感情が浮かんで見える。

    自分とは違う世界の見え方をする彼への関心から本書を手に取り、記憶力や言語化に圧倒させられると同時に、いろいろなことを考えさせられた。

    今は広く「発達障害(生まれつき脳の発達のしかたが平均とはだいぶ異なる)」という言葉が使われるようになって私も随分身近なものとして捉えるようになってきた。
    「人と違う」「行間が読めない」「こだわりや不安が強い」など抱えていることは、社会においてなんと生きづらいことか。
    彼の幼少期を見ると、その苦労がより感じられる。

    驚くべきことは長男である彼を出産後、両親が8人もの子どもを授かっていること。1人でも大変だろうに、いくら子どもが好きとはいえ…。そして、彼に対して愛情深く接するその態度にもとても感銘を受けた。
    よく虐待の影響などで発達障害のような症状が出ることがあるけれど、その真逆で、愛情を受けて育ったことがまず何よりも彼にとって生きる力となったと感じます。

    そして、イギリスでの自活、パートナーの存在。
    それらの1つ1つが彼を自立した大人へと導いてくれた。自閉症スペクトラムの子を持つ多くの親に勇気を与えた、とあとがきで書かれていたのも頷ける。

    一歩違うと、その生きづらさから二次障害として鬱病など発症することも少なくないだろうに、その特性を理解してくれる人との関わりや自身の適性をきちんと評価してくれる人の存在でこんなにも誇りを持って生きていけるのか、と私も勇気づけられた。

    「若い人たちには、ひとりぼっちではないこと、だれもが幸せで実りのある人生をおくれることを知ってほしい。そして自信を持って生きていってほしい。ぼくがその生きた見本なのだから」という言葉のなんと力強いことか。読めてよかった。

  • 自分の認知の歪みや欠落を比較分析するのに役立つのではと手にとった。プリズムのように個々の心に映し出される認知という虹を愛おしいと思える。

  • 前半は幼少期からティーンエイジャーまでのこと。ダニエルはサヴァン兼アスペルガー兼自閉症で、こだわりが強く人間関係もなかなか構築できない。そこに周りの子供たちの無理解(仕方がないが子供って残酷)も加わって、なかなかヘビー。アスペルガーや自閉症の子供がどういう思考回路なのかを知れたのがよかった。

    ダニエルのような個性的な子も排除されない教室にするのって、どうすればいいんだろうと考えさせられる。私の子供たちは今のところアスペルガーや自閉症や発達障害的な気質はなさそうだけれども、今後そういう友達と相対するときに、そのまま受け止められるようにするには、親はどんな教えを伝えるべきなのか?そもそも親である私自身が個性的な子を受け止められる度量や理解力があるのか?そんなことを思って胸がざわついた。

    後半からはダニエルのこだわりや少しずつ気質が薄まってきて、世界が一気に広がる。親元を離れて異国でしっかりと仕事をし、パートナーも見つける。自分に何ができて、何が苦手なのかを十分理解した上で生きていく。とても眩しい。外の世界で飛び出す勇気、私はなかったし、まだ飛び出せていない気がする。30歳をとうにすぎているけど、まだ遅くないだろうか‥なんだか背中を押された気持ち。

    • やまさん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
  • アスペルガー、サヴァン、共感覚‥‥今作品は、脳の不思議を知る秀逸な科学読本であるのと同じくらい、ひとりの青年の成長記録としても印象深かった。

  • 小さい時のお気に入りの本。あんまり覚えてないからまた読みたい。

  • 原題 BORN ON A BLUE DAY

    blue day〝憂鬱な日〟ではなくて、文字通り〝青い日〟です。著者ダニエル・ポール・タメットの誕生日、1979/1/31 が彼には青く見えるんですね。

    数字に色や形が伴う共感覚はクオリアとして説明が難しく、ちょっと想像できない。言葉ってもどかしい。アーティストの説明できない感覚かなぁ。

    サヴァンは「レインマン」で広く認知されましたが、ASDであるからと言って「でも、それはあなたの可能性を狭めるものではないのです」(Steven Spielberg、自身もdyslexiaと診断されている)

    「わかるかい?きみは科学者にとって一生に一度あるかないかのチャンスなんだ」
    自身を説明できるダニエルにかかる期待。脳の働きを解き明かすことができればASDの治療に役立てられるかもしれません。でも他人と違うことを恐れずに生きられる社会の方がもっと人間らしい。
    そう、思えます。

  • 数字に,色や形や質感,動きが伴って見える共感覚の持ち主であるダニエル・タメットの半生が共有された本です.自閉症スペクトラム障害がありながら,驚異的な数字に関する能力を持っている彼が,子供の頃からどういった暮らしをしてきたか,詳しく書かれています.

    父親が精神的な病気で苦しむ状況にあったにも関わらず,ダニエルを支える家族の様子や,ダニエルの自分の生き方を追い求める姿勢に心打たれます.つらい出来事や感動的な出来事が淡々と,しかし率直に記されているのは,ダニエルの個性なのかなあと思います.

    自閉的な傾向があると,人と共感できる瞬間を感じづらいようです.そういった孤独の部分にフォーカスせずに,ダニエルの言葉は前向きです.能力は子どものころと変わっていないのに,「子どものころや思春期にはその能力のせいで同級生から疎まれ,孤立を深めたが,大人になってからはその能力のおかげで人とのつながりや新しい友人ができたのだ.」と語っています.

    恋人ニールとのやりとりにも,以下のようなことがあります.
    --
    だれもがときおり完璧なる瞬間を味わうものだ,と言われている.エッフェル塔の上から見晴らすような,夜空に流れ星を見るような,完璧な安らぎと絆を感じる瞬間がある,と.ぼくがそのような瞬間を味わうことはそれほど多くないが,ニールはそれでいいのだと言う.めったにないことだからこそ,それが特別な意味を持つのだから,と.

    ダニエルのように周囲からサポートを受けて,社会的に貢献をしている実感の持てる自閉症スペクトラムの患者さんが世の中に増えるといいと思います.ニューロダイバーシティが社会に今後もっと受け入れられるように祈りながら,以下も引用します.
    --
    自閉症スペクトラムの人々は,就職先の企業や組織に多くの利益をもたらすとぼくは思っている.というのも,こうした人々は正直で責任感が強く,正確な知識があり,細部にまで注意が行き届き,さまざまな事実や自分物について優れた情報を持っているからだ.また,自閉症やアスペルガー症候群の人を採用すると,社員は多様性に敏感になり,管理者は効果的に意思の疎通を図る方法を学べるようになるだろう.

  • この世界は自分が見てる景色だけでないことを教えてくれた。
    まるで全てが生き物のように色や形があって、苦労もあるだろうけど、とても美しく尊い。

    実際にサヴァン症候群である本人が自分の見えている世界を言語化して表現できることにすごく価値があり、感銘を受けた。

    他の著書も読んでみたいがなかなか手に入らない。

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著者プロフィール

作家、言語学者、教師。1979年、ロンドンに生まれる。9人きょうだいのいちばん上として育つ。2004年、円周率の暗唱でヨーロッパ記録を樹立。それをきっかけに制作されたTVドキュメンタリー「ブレインマン」は40ヵ国以上で放映され、大きな話題を呼んだ。自伝 Born on a Blue Day は世界中でベストセラーとなった。日本でも『ぼくには数字が風景に見える』(講談社)として出版されて、好評を博す。その他、邦訳書には『天才が語る サヴァン、アスペルガー、共感覚の世界』(講談社)がある。現在は、自身のウェブサイトOptimnem で、外国語学習プログラムを展開している。パリに暮らしている。

「2014年 『ぼくと数字のふしぎな世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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