ソラ色らせん

著者 :
  • 講談社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062800129

感想・レビュー・書評

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  • 泣きぼくろはもう涙を忘れてしまったけれど、いつでも、身体のどこかが泣いているようなのだ。

    指にくっついた、桜の花びら。
    涙の形。ハートの形。いずれにしろ、悲しい形。

    目をとじて、ぎゅっ、と、とじこもりたいと思うけれど、そうすると実体のない痛みが生き物みたいに独立して生きてきて、自分をまるごと消したくなってしまう。

    突き詰めれば一分一秒、それぞれが「初めて」なのだけれど。秒針ごとに、初めてが刻まれていくのだけれど。
    そういうの、忙しさにかまけて忘れそうになるけれど。

    言葉があって身体があって熱や涙があって、伝える手段の選択肢は数限りなく、これはきっとしあわせなことなのだ。

    約束をはたすという義務ではなくて、思ったことを忘れないでほしかった。何かをもらいたいのでも、何かをしてほしいのでも、本当はなくて、ただ物や行為があるほうがわかりやすいからというだけで、本当は、無意識にあふれる思いだけでよかった。そういう無意識を、忘れないでほしかった。

    約束そのものより、約束にたどりつくあらましが大切だと、知っていたから。めまぐるしく変わるいろいろを、やるせなさで見送っても、変わらないものもあると、信念をかためていた。

    愛してると壊れてるは、同意語かな。

    「身体なんかいらないもの」
    「熱とか涙とか、感情だけでいいもの」

    あの時、あたしは腕時計をはずして、時間を消そうとしたのだ。数字で表される経過というものに、リアルに苦しめられたくなかったから。

  • 出会ってすぐに恋に落ちた二人。
    周りに内緒の恋に、幸せいっぱいの毎日。
    二人の秘密の場所で誕生日を祝い、一緒の高校に行こうと約束をした日…彼は屋上から転落した。
    意識不明のまま眠り続け、奇跡的に目覚めた8年後。
    家族が見放しても見守り続けた彼女に向けて、彼が言った言葉は・・・
    「あんた誰?」
    14歳のまま時間が止まってしまっている彼との生活。
    二人の距離が戻る日はくるのか。。


    事故で記憶を失うっていうのとはまた違った状況で、記憶があるだけに…ものすごくせつないです。
    彼が愛しているのは14歳の自分で、23歳の自分じゃない。
    一緒にいるのに彼の目には映らない。

    目覚めるまでに8年。
    8年ってものすごい長い時間ですよ。
    その間、二人で行くはずだった高校に通いながら、彼のことを理解してくれない家を捨てて働きながら、毎日毎日病院に通って…。
    それが「あんた誰?」ですよ。
    もちろん彼は悪くないんですけど・・・やりきれないですよね。

    主人公の彼女の強さに心うたれます。

  • 美しい映画のような小説。愛の話。初めて知った愛は呪いみたいにただそこにある。ずっと。苦しくっても手放せない。
    分かりやすいし、愛を知るひと全員の心に届く作品ではないかと思います。

  • 図書館から借りました

     恋愛小説。一人称。視点主はマリ。

     14歳の頃、事故で昏睡状態になった恋人ソラ。
     ソラを見守り続けるマリ。
     8年後、ソラは目覚めるが……。

     23歳のマリ。それなりに汚れ、成長していく彼女。
     一応、眠ったままでも体は成長したものの、精神は14歳のままのソラ。
     目覚めた直後のソラのセリフはむごい。
    「あんた、だれ?」
     実の母親すら、3年目ぐらいで再婚し、見舞いにあまりやってこなくなり、起きた息子を引き取ろうともしない。そんななか、マリだけが足繁く病院に通い、体を拭き、寝返りをさせ、髪や爪を切ったりとお世話をしていたというのに。

     ソラは23歳の恋人をなかなか受け入れない。
     同棲が始まって、マリは何度も何度も誘う。
    「一緒にお風呂に入ろう」「一緒に寝よう」
     でも、ソラが見ているのは、14歳のマリ。

     いやはや。
     ここまでしてもらっていて、なんなの~?
     とか、思ってしまう。
     最後はハッピーエンドですが。

     文章は好悪なく、それゆえに別にこの人の本を見かけたら次ぎも必ず読もう、という気にはならない。
     ・・・嫌、でもないんだが。

  • 若い頃には早く大人になりたかった。

    大人になったら青春が恋しくなった。

    もし、不可抗力として歳をとることを止められてしまったら...
    その現実を受け入れることはできるのだろうか。

  • 出会ってすぐに恋に落ちた中2のマリちゃんとソラ君。マリの15歳の誕生日に悲しい転落事故が起きてしまい、ソラは意識不明のまま。奇跡的に8年後に目を覚ましたが、マリに対して第一声は「あんた誰?」。14歳のまま時間が止まっていたソラと23歳の女性のマリ。二人のつながりは元に戻るのか・・・というお話です。
    普段は恋愛小説って苦手なんですが、これは好きなんです。なんとなくタイトルに惹かれて、購入したんですが、見事に私のつぼにはまりました。14歳の恋愛をずっと大切にしてる感じといえばいいのでしょうか。ピュアな気持ちを待ち続けているマリちゃんが切なくて。でも、最後はハッピーエンドで、またステキなんです☆
    手をつなぐことは、大事なんだなと、思いました。本当に、文章から切なさが伝わってきます。なんだか、恋がしたくなるような、幸せな気分にさせてくれるような、そんな作品です。
    好きな台詞は、「忘れないでね」(マリちゃん)、「一生懸命の味がする」(ソラ君)です。

  • 読んだあとにじんわり幸せになれる。話の進め方が好き

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著者プロフィール

1970年、埼玉県生まれ。1995年、少女小説家としてデビュー。2013年、「朝凪」(「まばたきがスイッチ」と改題)で、R-18文学賞読者賞を受賞。主な著書に、受賞作を収録した『主婦病』のほか、『私の裸』『母親病』『神様たち』など。アンソロジーに『黒い結婚 白い結婚』がある。

「2023年 『わたしのいけない世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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