リストラ屋

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 150
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062821032

作品紹介・あらすじ

投資家をあざむく仮面を剥ぎ取れ! 「市場と投資家を欺こうとする奴は、絶対に許さん!」。米国ファンドからコストカットの手腕を買われて名門スポーツ用品会社の社長に就任した蛭田明。暗い過去を背負い、人を人と思わぬ非情さで次々と社員の首を切り、彼らを絶望の縁に追い込んでいく。 片や、自らはストックオプションで莫大な報酬を得ようと、役員たちを恐怖政治で支配して粉飾決算に荷担させ、アナリストを抱き込んで株価を上げさせる。 粉飾のカラクリにつけ込んで大儲けをたくらんだカラ売り専業ファンド「パンゲア&カンパニー」の北川靖だが、リストラの犠牲者たちのあまりに理不尽な現実に、いつしか義憤を募らせていく。蛭田と北川の対決はどちらが勝つのか?

感想・レビュー・書評

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  • 黒木氏2冊目。

  • 悪役がはっきりしていて分かりやすかった面もあるけど、その悪役の出生とかも時代的にありかもなという設定。

  • 著者の作品の中では迫力に欠ける内容か。コストカットすることで株価をあげる経営者と、カラ売り屋。

  • 初めて読む作家でしたが、どんな内容の本課と、手にとって見て、少し、経済が、わかったような感じが、しました。

    社員を、血も涙もなく切り捨て、報酬を丸儲けする、親社長にに就任した蛭田に、空売り屋と称する投資会社の北川。
    どうして、リストラだけでなく、株が、上がって行くのか?
    そして、合併に関しての取り巻きの証券会社の評価は、、、
    最後に、蛭田の過去の事も暴きだされるのが、母親との会話も少なくて、死後に、母の事をしのばれる所も、金の亡者の悲哀が、描かれている。
    又、空売り投資家の北川も、ハーレムの子供たちに、数学を教えたり、寄付をする所も、すがすがしく描かれている。
    これは、アメリカのサンビーム社の事なんだろうか?と、思いつつ読んで行ったけど、、、
    未だに、サブプライム問題で、辞任したメリルリンチのスタンレー・オニール氏の170億円の退職金などは、どのように対処されたのか?と、思う。

    黒木亮氏の作品は、初めてだったけど、初めのハーレムの勉強会からの筋から、子供たちにも、靴においてのニーズを、尋ねたりして、物流の流れなども理解出来るような本で、読み易く、面白かった。

  • ストーリーは面白いが空売り攻防の件が軽い。あと、敵役の実母の件は何だったのか?と疑問に思う。

  • 黒木亮の作品はなんと言っても勉強になる。おもしろいかおもしろくないかは別にして。

  • 読了。何と言っても「黒木亮」作品は面白い!!そして又してもGSのあの人が登場する。無期限の空売りが存在する事を初めて知った。又、買い手の我々からすると、業績・需給・話題性など文句の付けようのない(と思われる)銘柄がなかなか上がらずにズルズル下がっていく不思議、あぁ、こういう事なのか!!というちょっとした気づきがありました。。引き込まれるので一気に読めちゃいます。

    • saihou 55さん
      へーって感じ。だけどそれは需給関係だけの問題じゃあないのではないかなぁ。
      へーって感じ。だけどそれは需給関係だけの問題じゃあないのではないかなぁ。
      2012/11/26
  • 完了日:2012/9/30

  • この作者は、やはりフィクションが多いほど面白い。ということで、これは面白かったです。血も涙もない金の亡者であるウォールストリートの人々と、そういう状況に身を置きながら、ボランティア活動を続ける主人公。貧しいハーレムの子供たちの力も借りながら金の亡者から収益を上げる、という展開は痛快。

  • 本書(黒木亮『リストラ屋』講談社、2009年7月1日)は空売り専門の投資ファンドとリストラ経営者の攻防を描いた経済小説である。空売り屋とリストラ屋の対決となると、資本主義の寄生虫として「どっちもどっち」の感があるが、本書における善悪の位置付けは明確である。
    主人公(北川靖)は空売り屋である。インサイダー取引に該当しないように注意するなど法令遵守意識があり、ニューヨークの黒人街ハーレムで慈善活動を行う人間味ある人物として描かれる。これに対し、リストラ屋(蛭田明)は株価を上げることしか意識がない拝金主義者である。
    企業価値を損なうリストラを行って目先の株価を上げ、自らはストック・オプションで高額の報酬を得た上で、当該企業を他社に高値で買収させてサヨナラする。まさに企業を食い物にするハイエナである。そのようなリストラ屋への義憤が主人公の原動力にもなっており、読者は主人公側に容易に感情移入できる。
    優良工場を閉鎖して中国に集約する。その結果、製品の品質が低下し、売上げが落ちる。明らかにビジネスとしては失策である。ところが、それが株式市場では評価され、株価が上昇する。これは人間性や社会正義の点から批判できるだけでなく、経済原理としても非効率である。このような現代資本主義の欠陥が本書で明らかにされる。
    この欠陥はアングロサクソン型資本主義に起因すると見なされる傾向にある。由来の研究としては誤りではないとしても、ここには落とし穴がある。日本人にとって「日本社会の根本的な問題ではない。アメリカに染まり過ぎたことが原因」と心地よい責任転嫁の口実に悪用できてしまうためである。
    これに対して、本書の設定はユニークである。リストラを断行する主体は日本企業で、経営者の蛭田も日本人である。蛭田は英語も十分に話せない人物で、アメリカかぶれではない。反対に日本社会に根強く残る差別意識の被害者としてルサンチマンの鬱屈した人物である。その彼が断行したリストラによって北米支社は縮小され、多数のアメリカ人従業員が路頭に迷う。うつ病やアルコール中毒になるなど多くの元従業員の人生を破壊した。ここでは加害者は日本人であり、被害者はアメリカ人である。
    強欲資本主義が英米に端を発したとしても、英米とは比較できないほど人権意識や民主主義が未熟な日本で適用したならば英米以上に悲惨な結果になる。その悲惨さは住む場所も失う派遣切り問題が象徴する。帝国主義や植民地支配が欧米に由来するとしても日本の戦争犯罪を相対化できないように、強欲資本主義も日本の資本主義の病理として直視する必要を実感した。(林田力)

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著者プロフィール

黒木 亮:1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社を経て2000年、大型シンジケートローンを巡る攻防を描いた『トップ・レフト』でデビュー。著書に『巨大投資銀行』『エネルギー』『鉄のあけぼの』『法服の王国』『冬の喝采』『貸し込み』『カラ売り屋』など。英国在住。

「2021年 『カラ売り屋vs仮想通貨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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