超高齢社会の基礎知識 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881388

作品紹介・あらすじ

長寿社会のゆくえを科学する。老化予防から福祉・介護制度、医療体制まで、この1冊でわかる。

感想・レビュー・書評

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  • 超高齢社会の基礎知識をまとめた本。
    そもそも高齢、高齢社会の定義とは何か、という点から、なぜ高齢社会になったのか、老化とは何か、などを様々なデータをもとにまとめており、非常に分かりやすい

    また、個人的にも健康を維持するためにどうするか、
    どのように死を迎えるか、という万人が考えるべき
    テーマが改めて提示されている

    ●ポイント
    ・福祉などを語る際に北欧の国々が題材にされるが、
     その国は人口500~900万人程度なので、参考は難しい
    ・今後日本は単身高齢者が増えていく
     2009年:23% →2030年:38%
     特に女性は67%が単身(未婚、死別、離別)
    ・大都市特有の団地での高齢化対策が必要
     地方はすでに高齢化が進んで、割合は変わらない
     ただしコミュニティ消失の可能性が出ている
    ・日本人はなかなか死なない国民(医療の発達)
     だが、必ず死ぬ。生老病死の中で死が遠い存在
     もっと「死を想う」必要がある=メメント・モリ
     ラテン語で自分が(いつか)必ず死ぬ事を忘れるな
     →「いつ、どこで、どのように死を迎えるか」
      各人が真剣に考え、答えを出すテーマ
    ・生活習慣病の予防策は、ほぼ飽和状態
    ・老年症候群は年齢のせいと思いこみ、病院へ行かない
     ケースが多い。また病院側もマニュアルがなく整備が
     されておらずに対応できないのが現状
    ・介護サービスだけではなく、介護予防サービスが
     存在するが、利用率は低く、低迷
    ・歩く速度が健康と比例
     移動が最初に衰える生活機能であることが多い
    ・予防策
     転倒予防プログラムにより改善が大きく見られる
     尿失禁も下腹部の近力を鍛えることで改善
     認知に関しても脳の動きを活性化せる運動により
     発生率を低下させることが判明
    ・社会的な繋がり
     老化では、まず社会的な繋がり、知的活動、自立的な
     日常生活の順番で衰えていく
     社会的な繋がりを維持させるかは課題
    ・介護視点での衰え
     歩行→排泄→食事の順番で衰える
    ・超高齢社会では「歩行」をいつまで維持するかが
     最も重要なテーマとなる

  • ・超高齢社会を自立して生きていくための第一歩は、いかに「歩ける能力」を維持していくか。

  • 漠然としか認識していなかったこの国の一面を、くっきり明確にしてくれる一冊です。「高齢化社会」と「高齢社会」と「超高齢社会」の違いにはじまって、高齢者を対象にとるべき対策<病気予防>と<介護予防>の区別とその境界年齢、
    はたまた性差によって異なる陥りやすい疾患、などなど、統計データを駆使し、現状から今後の動向までクリアに解析。グラフの意味を知れば、(その意味する内容の重さはさておき)その曲線が美しくさえ見えてしまいます。
    今ある長寿は、戦後50年以上かけて実現した医療・衛生面と栄養面の向上の賜物。
    でもどんなに予防しても必ず必要となる介護について、制度や運営の構築に50年かけてはいられない。客観的でコンパクトな解説に、ぐいぐい引き込まれました。

  • もっとも興味を持って読めたのは、やはり前期高齢者、後期高齢者の健康に関するところでした。老化は足からくる、ということです。だんだん歩けなくなるということが、介護を受けてしまう方向への下り坂をあらわしている。歩けなくなると、まず転倒の恐れがある。転倒は高齢者にとっては、骨折してしまうことも多く、そこから寝たきりになったり、または転倒そのもので命を危うくするリスクがあります。次に、歩けなくなると、尿失禁を防ぎにくくなる。こうなると、オムツを履いたりすることになり、尿がいつ漏れるかという怖れから、外に出ることが不安になって、社会との関わりが薄くなっていき、それによって認知症のリスクが高まります。続いて、歩けなくなると、認知機能の低下そのものの予防もできなくなる。歩くこと、運動をすることで、認知機能を維持したり回復したりできることが、実験からわかっているそうです。最後に、歩けなくなると、筋肉量減少症(サルコペニア)を予防できない。高齢者になると筋肉の量が減っていって、痩せていく人が多いそうです。そうしていくと、認知機能の低下の可能性が高まる疑いがあるそうです。これら、老化の負のスパイラルに陥らないためには、歩くこと、運動すること、という自助努力、そしてそれらを促す周囲からの助け(共助)もときに必要になるんです。人間にとって歩くことって本当に大事なようですよ。といいつつ、ネットのニュースで、
    一日一万歩健康法のウソ、みたいな記事の見出しを見ましたが…。まあそこは本書のほうを信じることとします。

  • 長生きは良いことだ、と当然のごとく思っている人には痛恨の一冊。
    長生きした際の老後の心配、独り身の心配などが浮き彫りになってくる。

  • 右肩上がりの経済が絞み始め、収入が落ち込む。過去の大量消費文化にどっぷりと浸かった日本人は巨額な医療費・介護費をはじめとする現在と今後の社会負担の凄まじさとそのリアリティに愕然とし、ただただ戸惑うばかり。今後、超高齢化社会を迎え、この国の膨大な借金と急増する高齢者の借金をどうするのか。間違いなく言えるのは、これまでのような低負担中福祉はもはやありえないということ。巨大な借金と少子高齢化の中で中負担低福祉なのか高負担中福祉なのか、どちらかを選択しなければならない待ったなしの時期に来ている。身の程を弁え息の長い高齢社会を目指しての合意形成が求められている。

  • 泣けてきました。嘆いても仕方ないのですが、泣けてきました。
    なぜなら、今は「こうすりゃいいじゃん」と思うことも、その時が来たら、きっと苦しくて辛いだろうと想像してしまうからです。
    如何にして生きようか、ファイトも湧いて来ました。足靴を大切にします。ありがとうございます。

  • 75歳以上の高齢者になると、「どういう変化・問題が生じるのか?」を医学的かつ生活の質の視点から、多面的に述べられている。
    病気予防と介護予防の健診の指導ポイントは、「やせること」と「太ること」の全く逆。75歳を超えると、健康リスクの分布が変化するらしい。
    「歩ける」力(秒速1m以上)を維持することが、認知症やサルコペニア(筋肉量減少症)予防、そして「生きがい」のために、重要なポイントとのこと。
    本書に書かれている科学的根拠を持った実践を、全ての高齢者が享受できるまちづくり、これこそが地域包括ケアなのだろうと思った。

  • 高齢者が増える社会を、前期高齢者増加時期と後期高齢者増加時期に区分して、身体機能の変化に即して今後考えるべきことが述べられている。前期は多くの人が健康だが、後期になると体が衰える可能性が高い。男性は血管系疾患が多く、女性は転倒等の外傷により、要介護状態に陥る。対策は性別によって異なるが、運動は大切ということだった。
    団塊世代は日本の高度成長と共に生きてきた人たちであり、価値観は多様化する。そうした人たちをマスで捉えるのではなく、個別ニーズに対応する、というのが企業が向きあう高齢化社会なんだろう。

  • 高齢社会を非常に科学的に、データ的に解説してくれる。特に予防介護の項は勉強になる、これでもか、というくらい実証実験のデータをもって、認知症の発生率やその予防介護の効果を解説。
    こんなに超高齢社会の予防に向けてのデータ(10年単位の長期的実験)を日本はしてるのかーと、勉強になる。
    介護予防て遺伝子とかデジタルデータで見れるようになったらすごいビジネスだよなー、マジで。(あなたの5年後の歩行障害の発生率何パーセントで、認知症の発生率何パーセントとか。)運動機能の低下予測はナイキあたりが出しそうだが…

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