- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062881791
作品紹介・あらすじ
アメリカが世界最強の国であり続ける理由。「思想の国・アメリカ」の土台を形成するプラグマティズム。オバマでもロムニーでも、プラグマティズムが健在である限り、アメリカは変わらない。
感想・レビュー・書評
-
サブタイトルは、プラグマティズム入門。プラグマティズムについて書かれているのは前半のみ。後半は、アメリカの政治思想に話題が移っていきます。難解ではないんですけど。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
プラグマティズムとは一般に「実用主義」とも訳される、アメリカで生まれアメリカで展開してきた唯一の思想だ。端的に言うと生じた結果によって思考の意味を決定しようとする考え方である。
つまり知識と実践を結びつけるのだが、ポイントは直ぐに正解が出るものではないということだ。人間は間違いを犯すし、世の中には多様な考え方があるので、飽くことなく探求することが肝要だ。その知識が何に役立つのか、何をもたらすのかは実践を通じて知るほか無い。その意味で、プラグマティズムとは「知識のあくなき実践」にあるといえる。
アメリカの思想といえば「自由主義」だ。もともとヨーロッパで生まれた自由主義は、経済的側面と政治的側面に分けることが出来る。
「経済的自由主義」とは政治的権力が経済活動に鑑賞してくるのを拒む思想。
「政治的自由主義」とは政治的権力から個人の自由が驚かされる事は無いと言う意味での個人主義的自由を追求する思想。
アメリカではこの「政治的自由主義」に機会の平等より結果の平等を重視する福祉の発送を取り入れた自由主義という意味が加わってくる。日本では「リベラリズム」と訳される考え方だ。この考え方は1930年代の大恐慌後のニューディール期に形成された。それが70年代に理論化されいちやくアメリカの思想となった。
メイフラワー号に乗ってやってきた清教徒たちが建国した国=アメリカはその出自に於いて既に宗教国であり、いまでもそうであり続ける。
アメリカをひとつにまとめる道具としての「宗教」というものが浮き彫りになる。
平等を求めた民主主義は個人主義という名のジレンマに陥る。個人主義の病理を指摘したアレクシス・ド・トクヴィルは『アメリカのデモクラシー』に於いてこう記している。
<blockquote>合衆国では、もっとも富裕な市民が民衆から孤立しないように気を配る。それどころか、彼らは絶えず民衆に近付き、その声に進んで耳を傾け、毎日これに話しかける。彼らは民主政の国の金持ちは常に貧乏人を必要としており、しかも民主的な時代に、貧しい人の心を引きつけるのは施しよりも態度物腰である事を知っている。</blockquote> -
前半はプラグマティズムの概観で、省き過ぎに思える部分もあるが、非常にコンパクトにわかりやすくまとまっていると思う。ここまではプラグマティズム入門だが、後半は社会思想というか現代社会論にシフト。これは著者の関心が社会哲学にあるからであろう。アメリカの政治思想・政治状況のみならず、鶴見俊輔から中野剛志まで、日本のプラグマティズムに言及しているのが特徴的。尊王攘夷思想がプラグマティズムだったとは・・・。保守思想とプラグマティズムの関係については、今後考察してみたい。
-
哲学というよりビジネス書に近い。
そのために読みやすい反面、浅くて拡散しすぎ。
あまり役に立つ場面のない哲学に関する記述ばかりの書籍より、
「実用書」になっているところが、
プラグマティズムの入門書として捉えると、
これはこれで正解かも。 -
著者の主張は、(1)アメリカの思想や制度は上部下部構造を有していて、下部構造はプラグマティズムであること(p.112)。(2)社会を刷新するために下部構造のプラグマティズムに「イノベーションのための」という限定を加えるべきである(p.172)。
ただ、論証が弱い。第1点目については、「その証拠に、私がリサーチした限りでは、ほとんど誰もプラグマティズムが自分たちの行動原理の根底にあるなどと意識してはいません」(p.112)では説明になっていない。第2点目は、言葉遊びにしか見えない。 -
アメリカを動かす思想
アメリカの下部構造をプラグマティズムにみなし、上部の二大政党制やデモなどについて論じている。初めはパース、ジェイムズなどのプラグマティズムの概論であり、少しわかりにくい部分もあるが、後半からは具体的な話や、トクヴィルの話など急速に面白くなっていった。プラグマティズムは、デカルト的なすべてを疑うスタンスを推し進めた上で、実証主義的に仮説検証を繰り返し、暫定的な真理を追う姿である。カントやヘーゲルといった観念的な第一哲学を排し、帰納的に真理を得ようとする姿勢は科学的である。そして、機能をはたしていればそれは真理であるという発想もある。常に探求を求める会話の継続は、マイケル・オークショットに似ている。政治哲学を説明する3Dモデルもなかなか面白いはそうであると思った。さて、面白いのは5章のイノベーション・プラグマティズムである。クリステンセンのイノベーションのDNAを哲学や人類学的な視点から読み解くこの章は、自分の求めていた漠然とした概念を文字化したものであった。経営学などの実際的な学問といわゆる衒学的な諸学問の接ぎ木という自分の大学生活における学問の目標の答えの一端をなすであろうこの章の考え方は再読に値する。 -
プラグマティズムについて簡単な説明をおこなうとともに、現代のアメリカの政治哲学のなかでプラグマティズムが「下部構造」の役割を果たしているという著者の見方が示されています。
「プラグマティズム入門」というサブタイトルがつけられていますが、パース、ジェイムズ、デューイらのプラグマティズムについては本書で参照されている魚津郁夫の『プラグマティズムの思想』(ちくま学芸文庫)がありますし、ローティ以降のネオ・プラグマティズムに関しては、やはり本書で参照されているヘーゲルや現代思想に詳しい岡本裕一朗の『ネオ・プラグマティズムとは何か―ポスト分析哲学の新展開』(ナカニシヤ出版)があります。さらに本書と同じ新書で刊行されているものとしては伊藤邦武の『プラグマティズム入門』(ちくま新書)という良書があり、本書のやや不親切な解説よりも深い理解が得られるのではないかと思います。
本書の特徴となっているのは、むしろ後半の政治哲学における下部構造としてのプラグマティズムについて語っているところです。ただ、著者の考えそのものは興味深いと思うのですが、新書という厳しい紙数のなかで多くの議論を詰め込みすぎているため、個人的にはやや理解しづらいと感じるところがあります。もう少しじっくりと著者の考えが語られている本を読んでみたいと感じさせられました。 -
入門書というよりプラグマティズムの紹介書。わかりやすいが故にいまひとつ理解が深くならない。
-
これだけで理解するのは困難
-
フランスの思想家トクヴィルによって「自らの手で、
を求め、手段に拘泥せずに結果に向かい、 形式を超えて根底に迫る」として紹介され たアメリカ人哲学のプラグマティズムが学べる一冊。
特にアメリカでの政党政治に対する考え方や、哲学における取り込まれ方など多面的 なジャンルにおけるケースに触れられる。
リバタリアニズムとコミュニタリアニズムの2輪で辿りついてしまった思想と現実のギャップという限界に、新しい軸を加えるものとして取り込まれつつプラグマティズムの位置付けと流れが感じられた。