国税局査察部24時 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884075

作品紹介・あらすじ

国税局査察部、通称マルサ。闇に潜んでいる資金に目を光らせ、時に経済社会の網の目をすり抜けようとするカネを引きずり上げるため、資金警察とも呼ばれている。

このマルサにまつわる話は、すべてが極秘である。

国税職員には国家公務員としての守秘義務と、国税通則法で定めた守秘義務の二重の制約があり、重い罰則が定められているからだ。そのため、国税職員は自分が携わった事案を誰にも話さずに墓場まで持っていく。

だがしかし、マルサの仕事が世に知られないのは、あまりにもったいない。もっと世に知られてよいはずだ、そう私は思う。

その理由の一つは、マルサの仕事を示すことで、「悪いヤツら」に立ち向かう使命感を読者と共有でき、それが結果として、悪いヤツらを排除する原動力となるからである。

「国税の最後の砦」と呼ばれ、しばしば嫌われ役となるマルサたちも、元をただせばサラリーマン集団だ。サラリーマンだからこそ、日頃から重税感を抱いている(あなたも重い税負担に不満を抱いていないだろうか)。

そしてマルサは、税制の不公平ぶりを他のサラリーマンよりもずっと知っている。きっちり源泉徴収されているサラリーマンの中でも、税に関するスペシャリストだからこそ、税を免れる者に対して強い敵意を燃やし、時に家族を犠牲にしながらも、日本の税制を守るというモチベーションがマルサにはある。

租税正義の実現のため、安月給で歯を食いしばって頑張っている「マルサの男」の姿を知ることで、脱税は社会公共敵であるということを思い返してほしい。

マルサが職人として、いかにして脱税の端緒を掴み、接触せずに大口、悪質の脱税を暴いていくのか? 刑事さながらの張り込みや尾行によって脱税を暴く、内偵調査のスリルをこれから伝えていきたい。

そのために、本書は実話に基づきながらも、刑事ドラマを見ているかのように、なるべく読みやすく脱税事件を追ったつもりだ。

脱税者の悪い手口の数々や、それを追うマルサのひたむきな姿を読み終える頃には、知らぬ間に、とっつきにくい税制についての理解が深まっているだろう(税制についての理解をさらに深められるよう、各話終わりごとに税に関するコラムも付記している)。  ――著者より

感想・レビュー・書評

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  • 面白いけど、それだけ。
    査察の実態を窺い知ることはできるけど。

  • 途中で飽きたところと、興味深かったところと。
    この組織が軍隊的なのは、以前の私なら共感できたかも。今は、しれっとした気持ちで読みました。

  • 東京国税局のマルサ経験者である著者が、守秘義務とのギリギリの兼ね合いの中で、脱税事件に係る5つの査察事案について忠実に再現。著者のデビュー戦であるフィリピンパブでの事案、「原発から流れ出るカネ」が絡む事案、「悪さをする約束手形」が絡む事案、FXとタックス・ヘイブンが絡む事案、「口座売買屋の暗躍」が絡む事案が取り上げられている。
    守秘義務の壁があり、あまり内実が知られていないマルサの実態について、査察官同士の会話の再現など、かなり臨場感あふれる形で描かれていて、なかなか面白かった。マルサのまさに職人ともいえる仕事ぶりを垣間見ることができた。

  • 本の性質上ちょっと古い話だけど、十分面白い
    内部の本だけに人間的な苦悩や葛藤も書かれていて興味深い
    久しぶりにマルサの女見たくなった

  • 元マルサで税理士で僧侶でもある上田二郎先生によるマルサ本。実体験に基づく臨場感のある内容はさすがという感じだ。段々とネタがマンネリ化してきているのは仕方ないか。でも続編が出たらまた通読してみたいと思わせる内容だ。
    P227
    オレオレ詐欺の口座で詐取したカネは、振り込まれた数分後には引き出されてしまう。被害者が詐欺に気づいて通報すると、警察は即座に口座の停止要請をするが、騙し取られたカネは既に跡形もなく消えている。近頃では、銀行側のガードが固くなっているため、銀行口座を使わず、郵送や宅配便を使って送らせるなどのケースも増えている。
    停止要請した口座の名義人は、警察が調べればすぐに分かる。そして、名義人のもとに警察がやってくる。「軽い気持ちでお金欲しさに口座を売却した。犯罪や詐欺に使われるなんて思いもしなかった」などの言い訳をしたところで後の祭りだ。
    口座売買自体が禁止行為のため、検挙されてしまうこともある。法律では通帳やキャッシュカードの売買·譲渡を行った者は罰金50万円以下、商売として行った者は懲役2年以下又は罰金300万円以下の刑が科される。
    オレオレ詐欺の被害拡大をきっかけに、銀行は不審口座を管理して不正に使われている可能性のある口座を「疑わしき口座」として金融庁に報告している。が、実際にはその前に危険を察知してトンズラしたり、既に警察から口座の凍結要請が来ている場合も多い。つまり、詐欺が発覚した時点では犯罪が完了していて、犯罪者は既に安全な場所へ隠れてしまっているため、口座を売却した人だけが罰せられていることさえある。わずかなお金の為に、人生を棒に振ることになりかねない。これが口座売買に潜む危険の実態だ。口座売買は表立った広告ができないため、携帯の求人サイトなどに潜んで募集をしている。そして、こうした口座が脱税に使われるケースもある。

  • 図書館で借りた本。フィリピンパブ、原発から流れる金、悪さする約束手形、FXとタックスヘイブン、口座売買屋の暗躍を取り上げている。会話形式で話が進んでいくので、あっさり読める。いかに情報を掴んでいくのか?から捜査の流れは分かりやすい。マイナンバー登場で今後は脱税し難い環境になりそうだが、海外拠点の脱税は相変わらず多いのかも。

  • 上田二郎『国税局査察部24時』(講談社現代新書、2017年1月読了)

    この手の本は、いわゆる趣味と実益を兼ねてという意味あいが強いので、純粋に本を楽しむという意味で手に取ったわけではない。
    ただ、ずいぶん前(1987年)に『マルサの女』(伊丹十三監督)を観て大いに楽しんだこともあり、今でも少なからず興味があることには間違いない。

    帯には「追うマルサの男、逃げるワルサの男」とあり、クスリとさせられる。
    本書は、マルサとして国税局に勤めていた筆者が、5つのエピソードに基づいて、退職後にマルサの活動を紹介したものである。そのエピソードは次のとおりである。

    第一話「繁華街の帝王」篇-査察官は尾行する
    第二話「原発から流れ出るカネ」篇-張り込みの妙味
    第三話「悪さをする約束手形」篇-上司との喧嘩、同期との競争
    第四話「FXとタックス・ヘイブン」篇-最新の脱税手口を見破れ!
    第五話「口座売買屋の暗躍」篇-マルサの女、そして家族

    これらについて筆者自身である上田(筆名で本名ではない)と上司や部下との会話形式で綴られ、それを補足するための解説や解釈が展開されている。

    第一話や第五話は、『マルサの女』に出てきてもいい題材。第二話は、福島第一の原発事故の前に書かれたものであるようで、今読んでもまことしやかに思える(ただし原発そのものが題材ではない)。第三話は、最近では有価証券のペーパーレス化が進んでいて、手形もご多分に漏れず紙の手形は少なくなっていると言われているが、紙ベースでの手形取引を巡ったエピソード(オーソドックスな裏書の話)である。第四話は今時の脱税の手口。

    マルサは、①悪質な脱税行為が明らかで、②刑事告発できるような証拠がある場合にのみ調査(裁判所からの令状に基づく強制調査)し告発する。
    我々のような個人の場合は、脱税額が少ないこともあり、マルサのターゲットになることは少ない(相続税などの場合は調査対象になることもあるらしい)。

    本書を読んで認識を新たにしたのは、悪質で告発できるケースというのはそれほど多くないということである。
    本書によれば、ひとつの査察チームが扱うのは、年に1回か2回あればいい方で、それも刑事告発まで至らないケースもある。
    しかも気の毒なのは、マルサとて公務員であり、出世競争があることである。これが結構熾烈らしい。本書では次のように語られる。

    「国税査察官は各事務系統(所得税、資産税、法人税、徴収など)からマルサに招集されているため、マルサの背番号(国税では人事管理を背番号と呼ぶ)が外れれば、各事務系統へ戻されて税務署勤務になる。戻ったところには、各事務系統生え抜きの職員がいて、出戻り職員はピカピカの1年生からの再スタートだ。
    いっそのこと、早くマルサの背番号を外して税務署勤務に戻った方が、精神的にも、家族のためにも、税法を学んで将来、税理士になった時にも役立つといった思いが、上田の心のどこかにいつもあった。」[pp.172-173]

    これは本音に近いのかもしれない。もちろん、出世競争に果敢に立ち向かう職員もいるだろうから、すべてがそうであるとは思えないが、一方で「正義の味方」であり、他方で出世競争をするというのは、何とも精神的に宜しくないように感じられる。

    中小企業経営者や確定申告して税務署と「お付き合い」がある方にとっては、読みながらいろいろ思うところが多いと思われる。

  • マルサの仕事、頭脳とともに体力も必要だな…想定通り査察が進むとアドレナリンがビューーー!っと出るとあった。分かる気がする♪もっと知りたいもっと読みたいと思った。

  • 査察部のリアルな仕事内容を記述しているのは面白かった。質問検査権で得たものを、犯則調査へと流用することに興味があるので、税務署から査察連絡があること、その「調査概況を説明するための資料」(185頁)が税務署から査察部に渡されるらしいと普通に書いてあったことに、おーやっぱりそうなのかー、となった。その中身がどの程度なのかが気になったが、そこまではわからない。基本的に机の上でお勉強するだけの人なので、現場の人の話は興味深い。

  • 20170224 013

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著者プロフィール

1964年生まれ。東京都出身。83年、東京国税局採用。
千葉県内および東京都内の税務署勤務を経て、88年に東京国税局査察部に配属。その後、2年間の税務署勤務があるものの、2007年に千葉県内の税務署の統括国税調査官として配属されるまでの合計17年間を、マルサの内偵調査部門で勤務した。
09年、妻の実家を継承するために東京国税局を退職したが、縁あって再び税理士として税務の世界につながっている。
著書に『マルサの視界 国税局査察部の内偵調査』(法令出版)、『国税局直轄 トクチョウの事件簿』(ダイヤモンド社)、『国税局査察部24時』(講談社現代新書)がある。

「2022年 『税理士の坊さんが書いた 宗教法人の税務と会計入門 第三版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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