深夜の酒宴・美しい女 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 99
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062900928

作品紹介・あらすじ

焼け残った運河沿いの倉庫を改造したアパートに蠢く住民達。瀕死の喘息患者、栄養失調の少年、売春婦の救いのない生態を虚無的な乾いた文体で描き、「重い」「堪える」の流行語と共に作家椎名麟三の登場を鮮烈に印象づけた「深夜の酒宴」。電車の運転の仕事を熱愛する平凡な男が現実の重さに躓きつつ生き抜く様を特異なユーモアで描く「美しい女」(芸術選奨)。戦後の社会にカリスマ的光芒を放った椎名文学の代表作二篇。

感想・レビュー・書評

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  •  
    ── 椎名 麟三《深夜の酒宴 1947‥‥ 美しい女 20100709 講談社文芸文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4062900920
     
    (20231128)

  • 椎名麟三、2冊目にしてこの作家が「死んでるように生きてる人たち」を描いていることがわかった。それを否定してないところが好き。「ええやん、こんな生き方のどこが悪いねん?」てなもんである。
    「なぜ生きているのか」という大上段に構えた問いに悩む人が多いが、人間の生などはほかの動物同様なんだから、「生まれたから生きてるんじゃん」ということでいいのではなかろうか。
    彼の文体に慣れてきたので、何かもう1冊読んでみよう。

  • 正直、『深夜の酒宴』は短かったから読み終えたが、『美しい女』は休憩のために本を閉じることが多く、一度閉じると再び本を手に取るまでに長い時間がかかった。
    強く惹きつけられる表現が無いからなのか?
    つまらなく感じるのは、どうしてなのか?という点に興味がある。
    もう読むのをやめてしまおうかとも思うが、読み通せば何かあるんじゃないかという思いがあり、つまらないけれど読み進める。

  • 「美しい女」の主人公はこれといって取り柄はないがただ一つ尊敬できるのは人間性を失って行く時代と戦い続けたことだ。それもただ無邪気に愚鈍に働き続けることによってだ。もちろん勤勉さという意味では正反対だが、誰からも理解されず孤独に何かと戦い続けるという意味ではどことなく阿Qを思わせる。ただきこちらはハーレム的なラブコメでもある。現実には存在しない美しい女という幻想を常に抱いていることが玉に瑕だが、それは彼にとって一種の救いである。そうすることによって何とか正気を保っているのだ。ある意味でそれこそが人間性の砦というか、少なくともエネルギーの源になっている。もちろん、感覚を麻痺させているとも言える。だがそうしないことには仕方ない状況である。事実、こういうものを持っていない他の登場人物たちは次々に発狂していく。
    現実に存在しない女に現を抜かすことで現実から遊離しているかに見えるのは確かだが、逆に普段の生活においては、この主人公のように決してありのままの自分から目をそらすことなく誰にも褒められることのない人生を厳しく耐えて歩むことのできる人間がどれだけいるだろうか。女の問題以外に、天皇の写真に落書きをするなどの子供っぽさを除けば、ほとんど欠点はなく、絶賛されるべき文章がそこここに書かれている。
    問題はそんな主人公には救えない女がいるということである。しかしだからと言ってどうすればよいのだろうか。主人公には体が一つしかないからだ。主人公は最後苦しい決断をするのだが、そんな主人公を支えてくれるのはやはり心の中の美しい女だという。全ての問題を一挙に解決する方法などはあり得ない。誰もがそうできればいいと思ってはいるが。正気を保ちながらコツコツやっていくしかないということだろうか。

  • 美しい女のほうがよかった。瀬戸内海。

  • 「深夜の酒宴」は「重き流れの中に」と抱き合わせでした。最初の雨したたるシーンから、何か違うものを感じ、人生に直面した描写にショックを受けました。「美しい女」は形而上学の問題です。元車掌の作者が体験を活かし、ちょっと変わった男女の風景を、気取らずステキに表現しています。

  • 1/20
    生者にとってはどこまでも観念的でしかない「死」への拒絶。
    「死」に意味付けをしてきた時代にあってあえて「生」を選ぶことの困難さ(と暖かさ)。

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