明治維新の遺産 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062921862

作品紹介・あらすじ

幕末、明治、昭和、そして……。近代以降の日本の歴史はひとつの対立軸を中心にかたちづくられてきた。本書は徳川官僚制とそのイデオロギー的基盤から説き起こし、明治維新、昭和維新、そして敗戦後まで「官僚的合理主義」と「維新主義」の相剋として描き出す。現れては消える〈維新〉はわれわれに何をもたらすのか? 歴史解釈は未来を見据える。

感想・レビュー・書評

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  • 徳川時代から続く官僚制を日本独特の政治体制であるとの論点で幕末、明治維新、昭和維新を考察している。

    以下引用~
    ・(徳川の時代)土地か武士身分かの選択をつきつけられた武士はその大部分が官僚としての地位と都市生活を選んだ。
    ・中国は分権的な支配から中央集権的帝国体制へと発展したが、日本はその逆に、中央集権的な政府から分権的な支配へという道を進んできたのであり、徳川幕府はその頂点を画すものである。
    ・明治維新直後の政治的結着は、強力な国家の建設についての相異なる方法を強く確信する集団間の抗争から生じた、強度の緊張と混乱によって特徴づけられている。しかしその歴史は、徳川末期の「維新主義」自身のなかで培われてきた現実主義的思想と行動の勝利を明白に指し示している。大久保利通、木戸孝允、伊藤博文、山県有朋らが、この寡頭制確立の中心的指導者である。
    彼らにとって明治維新とは、官僚的手段によって、強力で豊かで自律的国家日本を創出せよという至上命令にほかならなかったのである。
    (⇔西郷に代表される理想主義的価値観)

  • 官僚組織を縦糸に、非官僚の思想を横糸に
    近世から近代を通読していく。
    あまりない議論だと思う。どうしてだろう。

    たとえば、
    官僚組織は現実的な思想を持っている
    非官僚は創造的な思想を持っている
    という類型を立てることができるとする。
    これは官僚は改革に抵抗するというレッテルであり
    非官僚は現状打破の勢力であるといレッテルから派生する。

    では、日本を破滅的な大戦へと向かわせたのは官僚か非官僚か
    と問われたときに不思議な感覚になる。
    どちらかというと、現実的だと言われる官僚組織が道筋を付けた
    ように見える。
    国家社会主義や国家総動員体制を研究する革新官僚がいる。
    非官僚的な皇道派を粛清している、陸軍の官僚派閥たる統制派がいる。
    そして官僚組織は現実的にも関わらず、なぜ敗戦に至らしめたのか。
    ここでつまずく。

    敗戦までの道のりは狂気の過ちであり、
    現実主義には当時の開戦も敗戦もありえなかったという考えを抱くとき
    官僚制度VS非官僚の構図から上手に近代を説明し得ない。
    もしかしたら
    合理性が戦争を生んだ可能性を考える必要があるのかもしれない。
    もしくは帰納的に当初のレッテルが間違っているのだろうか。

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著者プロフィール

(Tetsuo Najita)
1936-2021。ハワイ生まれ。1965年、ハーヴァード大学で博士号取得。カールトン・カレッジ、ウィスコンシン州立大学を経て、1969年以降シカゴ大学で教鞭をとる。シカゴ大学名誉教授、ロバート・S・インガソル記念殊勲教授(歴史学・東アジア言語文明研究)。専攻は近代日本政治史・政治思想史。1989年に大阪府より山片蟠桃賞を受賞。著書 『原敬——政治技術の巨匠』(読売選書、1974)、『明治維新の遺産——近代日本の政治抗争と知的緊張』(中公新書、1979、講談社学術文庫、2013)、『懐徳堂——18世紀日本の「徳」の諸相』(岩波書店、1992)、『Doing 思想史』(みすず書房、2008)。編著(共著)『戦後日本の精神史——その再検討』(岩波書店、1988、2001)ほか。

「2022年 『相互扶助の経済【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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