興亡の世界史 アレクサンドロスの征服と神話 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062923507

作品紹介・あらすじ

講談社創業100周年記念企画として刊行された全集「興亡の世界史」が、いよいよ学術文庫化。まず第一期として、5冊を5ヵ月連続で刊行する。本書はその第一冊目。
前334年、ギリシアから東方遠征に出発し、たった10年で現在のトルコ、シリア、イラク、イランを経てインダス川西岸のパキスタン、アフガニスタンに至る大帝国を築いたアレクサンドロス。エジプトではファラオとして振る舞い、古都バビロンにもメソポタミアの伝統に学んで入城。広大なペルシア帝国を滅ぼしてからは後継者として東方の儀礼を自ら導入し、兵士たちとペルシア人女性との集団結婚式をあげるなど支配の強化を図った。しかし、インダス川流域での戦いで、ついに長期の遠征で疲れ切った兵士たちが行軍を拒み、大王も反転を決意。バビロン帰還後の前323年、アレクサンドロスは熱病のため死去する。怒涛のごとく駆け抜けた32歳11か月の生涯。アレクサンドロスはどうして短期間で大帝国を築き上げることができたのか。また、死後その帝国がたちまち四分五裂したのはなぜか。古代ローマのカエサルや初代皇帝アウグストゥスらが英雄として憧れ、神格化したアレクサンドロスの軌跡と、後世の歴史に与えた影響を探究。新たなヘレニズム史を構築する。
[原本:『興亡の世界史 第01巻 アレクサンドロスの征服と神話』講談社 2007年11月刊]

感想・レビュー・書評

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  • 240121004

    アレクサンドロスもそうであるように、いかなる人物もその時代から自由ではありえない。アレクサンドロスは古代ギリシア人の価値観を追求するなかで空前絶後の帝国を築いた。私たちが歴史を見るときはそのような考えで見つめるべきである。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741392

  • 興亡の世界史。

    いかにして、あれほどの広大な土地を征服したのか、彼のエピソードや当時の世界情勢などを考察しながら、読み解いていく。

    ワクワクして読んだ。

  •  興亡の世界史は、「第何巻」という表示はなく、全21巻の第1号巻がこのアレクサンドロス大王を扱ったこの巻である。私はこのシリーズの最終巻と云われる「人類はどこへ行くのかという巻をまずアナログ文庫で読みました。
     このシリーズを読もうかどうか迷っていたのですが、kinoppy(電子書籍)でこのシリーズ全巻が半額なっていたため、思わずポチってしまいました。そしてまず最初に読んだのは、「人類文明の黎明と暮れ方」です。これを読んで私はこのシリーズを読破しようと決意しました。何しろ面白かったのです。普通は、古墳時代の話なんて退屈なものですが、科学的な記述が素晴らしかった。
     そしてこのアレクサンドロスの話も素晴らしい本でした。
     一番不思議なことは「なぜ、アレクサンドロスはあれほど広大な地域をわずかの間に征服できたのか?」ということですが、彼の行為がいかに残虐であったか、彼の名誉欲は半端なく高かったことがわかります。信長が日本において行った事を、アレクサンドロス大王は、より短い期間でより圧倒的に広大な地域を征服します。
     新大陸発見時代のスペイン人が、現地人をまさに残虐に殺戮し続けるのですが、西欧人の持っている残虐性と体力的な優位性が、ペルシア人を圧倒するからこその征服なのだろうと思います。
     
     歴史は常に後の支配者が書き換え、征服者やたまたま権力を握った人を正当化・権威化します。アレクサンドロス大王にとっての「目的」は、自分個人の名誉欲だったのです。何万人の命より「自分の名誉の方が価値がある」からこそ、どんな政権でも権力者はそれを脅かす可能性がある者を抹殺します。
     このシリーズを征服しようと思います。

  • Fate zeroに登場する征服王イスカンダルのキャラクターにハマった事から読む。世界史を学習する機会がないまま成人を迎えたため、単純に世界史って難しいけど面白いと感じた。

    アレキサンダー大王の出生前から死後までの社会情勢から、大王自身のエピソードや内面までが丁寧に記されていた。
    インダス川を境にした撤退や、フィリッポス国王とのいざこざが個人的に好き。

    自身の神格化をアジア圏の人々から信仰を得るためのツールに使うも、内面ではさほど自己陶酔はしていなかった、というエピソードから、建前と本音の使い分けが上手だと感じた。

    とはいえ、遠征撤退後の無謀なソロ特攻やバビロンの式典放棄など、完全無欠な人間では無い所に人間味を感じる。

    清濁併せ呑む偉大な王、アレキサンダー。

  • アレクサンドロス大王の征服について、帝国の拡大だけでなく支配体制などから批判的な考察もされている。個人的に興味深かったのが神格化と古代ギリシア的価値観について。後世への影響と名誉が英雄として今でも語り継がれる原動力というのは凄いなぁと思う

  •  「ぺルシア・アジア世界へのギリシャ文明の浸透」と一般に解されている「ヘレニズム」。ここに西洋文明の東洋に対する優越というバイアスを嗅ぎ取った著者は、東洋へのペネトレーションを驚くべき迅速さで達成し、古代ギリシア的価値観の体現を目指したアレキサンドロスの生涯と業績にフォーカスし、その背景に当時の東洋と西洋の邂逅の実際を浮かび上がらせようとする。
     
     「ギリシアの大義」を掲げて始まったアレキサンドロスの東方遠征だが、アカイメネス朝ベルシアとの戦いではギリシア人部隊を重用せず、またギリシア的価値観に反する僭主制を許容するなど、そもそも矛盾含みの立ち上がりであった。アカイメネス朝滅亡後はペルシアにおける支配体制確立を企図し、宮廷儀礼にペルシア風の跪拝礼を取り入れ、またペルシア王族に倣い豪奢な天幕を備えるなど「王権の視覚化」に傾注するが、かえってマケドニア古参らの反感を買いクレイトス刺殺の遠因を作る結果となる。そればかりか、ペルシア人貴族らの重要性に気づいていながら彼らとの安定的関係構築を怠ったため、自身の死後に帝国の不安定化を招いてしまう。結局ペルシア文化に倣う風を見せながら、アレキサンドロスの東方世界の文化・伝統に対する理解と洞察は、あくまで表面的な水準に止まっていたのだ。
     名誉を重んじるマケドニア人の心性を利用した論功行賞の巧みさに見られるように、結局帝国を纏め上げていたのはアレキサンドロス自身に対する臣下らの「忠誠心」であり、その中心にあったのは常勝を宿命づけられたホメロス的英雄像に沿わんとするアレキサンドロスのあくなき競争=アゴンの精神だった。アレキサンドロスの最大の功績は、神の系譜に繋がる神性に英雄の姿を見るギリシア的心象を最大限に利用し、後のローマ帝政に繋がる君主崇拝に道を拓いたことであり、アジア地域へのギリシア文化の浸透に対する貢献は限定的で、従ってヘレニズム文化形成における当時のギリシア文化の比重も然程高くはない、というのが著者の主張。むしろギリシア文化再評価を経由したローマ文化の方が影響大であると説く。

     著者はさらに歩を進め、ヘレニズムという概念自体、「アレキサンドロス=文明の使徒」とするドグマが、19世紀の西欧帝国主義において、文化融合の旗頭として御都合主義的に用いられた結果の産物だと喝破する。「結局われわれがなすべきなのは、ギリシア文化を含む多様な文化の、アジアにおける動向を実証的に研究していくという、当たり前のことしかないのではないか」としてしまうのはやや真っ当に過ぎるような気もするが、西洋に深く根差した異文化蔑視の空気に対するもどかしい思いが伝わってくる。

  • MK2a

  • 第1章 大王像の変遷
    第2章 マケドニア王国と東地中海世界
    第3章 アレクサンドロスの登場
    第4章 大王とギリシア人
    第5章 オリエント世界の伝統の中で
    第6章 遠征軍の人と組織
    第7章 大帝国の行方
    第8章 アレクサンドロスの人間像
    第9章 後継将軍たちの挑戦
    終章 アレクサンドロス帝国の遺産

  • 2016-4-24

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著者プロフィール

1956年生まれ。帝京大学名誉教授。専門は古代ギリシア・マケドニア史。著書に『アレクサンドロスの征服と神話』など多数。訳書にプルタルコス『新訳アレクサンドロス大王伝』などがある。

「2023年 『アレクサンドロス大王の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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