対馬丸 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062930246

作品紹介・あらすじ

昭和一九年八月、沖縄から本土に向かった学童疎開船対馬丸はアメリカ潜水艦の魚雷を受け、深夜の海に沈んだ。乗船者一六六一名、うち学童八〇〇余名。生き残った学童はわずか五〇余名。戦争完遂という大義名分のもとに実施された疎開事業における最大の悲劇は、なぜ起きたのかを伝える名著。

戦争についての記憶を21世紀に伝える重要な文学作品だ。
―佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

この著作の主人公は子どもたちであり、本はそれを代弁するに過ぎない。子どもたちの親兄弟も残り少なくなった。せめて、この本がその慰めのいくらかをも果たせればと願う。―大城立裕(「文庫版あとがき」より)

感想・レビュー・書評

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  • 「対馬丸」大城立裕著、講談社文庫、2015.03.13
    310p ¥788 C0193 (2020.10.09読了)(2019.01.23購入)
    単行本は、1961年に3人の共著として刊行されています。
    「悪石島―疎開船学童死のドキュメント」大城立裕・嘉陽安男・船越義彰著、文林書房、1961
    「悪石島―学童疎開船対馬丸の悲劇」大城立裕・嘉陽安男・船越義彰著、おりじん書房、1975
    1982年にアニメーションになったのを機に大城立裕さんの単著となって刊行
    「対馬丸」大城立裕著・長新太絵、理論社、1982
    児童向けのものも刊行
    「対馬丸―さようなら沖縄」大城立裕著、フォア文庫、1987
    「対馬丸―さようなら沖縄 (アニメ絵本)」大城立裕著、理論社、1994
    講談社文庫として刊行するにあたり、若干の加筆

    【目次】
    いのちがけの教育
    行くも地獄、残るも地獄
    親と子と
    不気味な前夜
    集合
    たそがれの出航
    無邪気な乗客
    今晩はあぶない
    撃沈
    死とたたかう漂流
    役に立った手旗(仲宗根正男の話)
    助けあいながら(阿波連休子の話)
    幼い知恵と意志で(宮城啓子の話)
    わんぱくも参った(田場兼靖の話)
    泣きべそと夜光虫(名城妙子の話)
    愛児の死をみながら(田名宗徳の話)
    むなしい上陸
    校長が殺したか
    燃えろ、燃えろ……
    付録
     事件の概要ととむらいの記録
     県通達文書
     対馬丸遭難学童名簿
    あとがき  大城立裕 2015年2月
    解説  佐藤優 2015年2月1日

    ☆関連図書(既読)
    「海に沈んだ対馬丸-子どもたちの沖縄戦-」早乙女愛著、岩波ジュニア新書、2008.06.20
    「ひめゆりの塔をめぐる人々の手記」仲宗根政善著、角川文庫、1982.04.10
    「ひめゆりの沖縄戦」伊波園子著、岩波ジュニア新書、1992.06.19
    (アマゾンより)
    戦局傾いた昭和一九年八月、沖縄から本土に向かった学童疎開船「対馬丸」はアメリカ潜水艦の魚雷攻撃を受け、深夜の海に沈んだ。乗船者一六六一名、うち学童八〇〇余名。生き残った学童は五〇余名に過ぎなかった。戦争完遂のため、次代を背負う若き国民を護るため、という大義名分のもと、国策として実施された疎開事業における最大の悲劇である。その歴史的全貌を伝える名著。(解説・佐藤優/作家・元外務省主任分析官)

  • 2015年(底本2005年)刊。

     昭和19年8月22日(日時特定すら関係者で記憶・意見の対立があり、ひと悶着する位)未明、沖縄から本土への学童疎開船「対馬丸」(軍人や軍事物資も同載)は、米潜水艦の魚雷攻撃で沈没した。
     乗船していた学童800余名のうち生存者は50名余り。この凄惨かつ否応なく戦争の只中に巻き込まれることとなった少年少女らからの聴取と記録から構成された小説である。


     漂流中の模様が余りに生々しい。幻覚を見てしまう様や、同じく漂流していた人たちが離れていく様子、流失油を誤飲し死に至る等、想像もし得ない模様を叙述している。
     ひめゆりに負けず劣らず語り継いでいくべき事実を、丹念に追跡し、かつ改訂作業を辞さずに継続している著者らの熱意には感服。

  • こんなことが本当にあったのか、信じたくないが事実なのだ。後世にしっかりと確実に残したい書だ。

  • 沖縄への米軍の上陸が現実化しつつあった太平洋戦争末期の昭和19年8月、非戦闘員の九州への疎開を進めるために対馬丸は学童800人超を乗せて出航し、その航路の途中でアメリカ潜水艦の魚雷を受けて沈没しました。生き残った学童は50名余り。地上戦が予想される沖縄に「残るも地獄」、潜水艦による撃沈が予想される疎開船に乗り込む「行くも地獄」という究極の状況下で、わが子、教え子を疎開船に乗船させるのか、させないのかの判断に迷う親と教師。対馬丸出港までの状況から、魚雷を受けて沈没後、生存者が救出されるまでを辿ります。戦後70年となる今年、様々な戦争体験記が公になっていますが、本書も「戦争完遂」という大義名分の下に引き起こされた悲劇を現代に伝える貴重な記録であると思います

  • 一気に読みました。
    戦争終結の一年前に、疎開の子供を犠牲にするこんな痛ましいことがあったとは。
    知らないことはまだまだ多い。風化させないようにしていかなければならない。

  • 昭和一九年八月、沖縄から本土に向かった学童疎開船・対馬丸はアメリカ潜水艦の魚雷を受け、夜の海に沈んだ。乗船者一六六一名、うち学童八〇〇余名。生き残った学童はわずか五〇余名。戦争完遂という大義名分のもとに実施された疎開事業における最大の悲劇が、なぜ起きたのかを伝える名著。(解説・佐藤優)

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著者プロフィール

大城立裕(おおしろ・たつひろ)
1925年沖縄県中頭郡中城村生まれ。沖縄県立二中を卒業後、上海の東亜同文書院大学予科に入学。敗戦で大学閉鎖のため、学部中退。’47年琉球列島米穀生産土地開拓庁に就職。’48年野嵩(現普天間)高校教師に転職し文学と演劇の指導にあたる。’49年『老翁記』で小説デビュー。’59年『小説琉球処分』連載開始。’67年『カクテル・パーティー』で芥川賞受賞。『恩讐の日本』、『まぼろしの祖国』、『恋を売る家』など著作多数。また沖縄史料編集所所長、沖縄県立博物館長などを歴任。

「2015年 『対馬丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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