襲名犯 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062931687

作品紹介・あらすじ

関東の地方都市で起きた連続猟奇殺人事件。ルイス・キャロルの詩を下敷きにしたかのような犯行から「ブージャム」と呼ばれた犯人は、6人を殺害した後、逮捕される。容姿端麗、取り調べにも多くを語らず、彼を英雄視する熱狂的な信奉者も生まれるが、ついに死刑が執行された。そしていま、第二の事件が始まる。小指を切り取られた女性の惨殺体。「ブージャム」を名乗る血塗られた落書き。14年前の最後の被害者、南條信の双子の弟、南條仁のもとへ「襲名犯」からのメッセージが届けられる……。

感想・レビュー・書評

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  • 単行本を読んだが、文庫版で再読。デビュー作にして、江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリー。文庫化にあたり、加筆・修正されているようだ。単行本では、江戸川乱歩賞選考委員の作家センセイによる失礼なほどの酷評が掲載されていたが、文庫版ではカットされている。

    日本人の作家が、これ程のレベルで猟奇連続殺人事件とコピーキャットを描いた作品は少ないのではないだろうか。最後に明かされ真犯人と真犯人の歪んだ心…罪と犯罪の狭間で悩む若者…

    文章的に拙い部分はあるが、アイディアとストーリーは申し分無く、最後までハラハラしながら読み終えた。文章などは、これから磨けば良い。努力して身に付かないのは、着想と創造力だ。この作家にはそれがある。

    江戸川乱歩賞選考委員の涸れた作家センセイの戯言など気にしないで欲しい。

  • 何を推理すべき話なのか。hk

  • ー 「あるべき形を取り出していただけなんだ」
    「あるべき形?」
    「上手く言えないんだ。ごめんな」 ー

    シリアルキラーものなのに、その周りの人々、その街に住む人々の気持ちを描こうとしていて、不思議なテイストに。
    警察小説に寄せようとして、少し中途半端な感じになってしまったのが残念だけど、伏線の回収もしっかりできていて面白かった。

  • 連続殺人鬼のブージャムが死刑執行されるところから物語が始まる。執行後にまた地域を震撼させる殺人が起きた。それは正にブージャムを思わせ、第二のブージャムと襲名される。本家ブージャムと因縁がある主人公。第二のブージャムの目的とは…

  •  書き手の熱さ(圧)が物凄く伝わった小説であった。もっとさらっと書いてグッと物語りに引き付けてほしい。問題はストーリーが平凡であること、殺人の動機が「殺人鬼に憧れる」だけでは説明不足である。書き手の熱さは読み手を暑苦しくさせる場合もある。

  • 「ブージャム」こと新田秀哉が何故カリスマ的存在にまでなったのか。
    実際、派手な事件を起こした者がインターネット上などで祭り上げられることはある。
    だがそれは一過性のものでしかない。
    匿名性に守られた無責任な人間たちが、勝手に「神」などと呼び盛り上がるだけの現象でしかない。
    物語の中では「ブージャム」はリアル社会でも信奉者がいた設定になっている。
    果たしてそんなことがあるのだろうか?
    ブームが去れば忘れ去られる…それが世間というものだと思うのだけれど。
    犯人にとって新田が特別な存在だったのは理解できた。
    精神的にまだ大人になりきれていない時期に出会った本物の「殺人者」。
    彼にしかわからないルールに乗っ取り、彼は淡々と人を殺していたにすぎない。
    けれど、犯人にはそれがとても魅力的に映ったのだろう。
    だが、自分が第二の「ブージャム」となって再び惨劇を繰り返す動機としてはどうだろうか。
    新田には新田なりのきちんとした動機があった。
    欲しいものを手に入れるために殺人を繰り返すしか方法がなかったからだ。
    犯人にも犯人にしかわからない動機がある。
    けれど、それは所詮模倣でしかない。
    何故なら、新田の動機には苦しいまでの「渇望」があった。
    犯人が望んでいたものは何か?
    新田に心酔しながら、実は心の憶測にある「憎しみ」に決着をつけようとしていたのでは?と思う。
    出版にあたりある程度の改稿もしたとは思うのだけれど、粗が目立つ箇所がかなりあった。
    乱歩賞受賞作というのは当たり外れが大きい。
    デビュー作ということを考えれば仕方がないのかもしれないが。
    帯に書かれている「時折ぎらきと光る」や「何かを伝えたいという思いが一番強かった作品」といった選考委員の声に表れている気がした。
    時折…とか、思いが強かった…とか。
    物語そのものを認めての賞ではないのだな、と感じた。
    将来性を買っての受賞なのだろう。
    今後の作品を楽しみに待つことにしよう。

  • えー、ブージャムがなぜそこまで彼に執着したか、の部分が全然描かれてないように思ったけど…。彼のほかの部分の言動からもそこだけ浮いてる感じしたし。襲名犯があの”形”にこだわったのもよくわかんない。最も避けたいものじゃないのかなあ?いくら破壊するといっても。

  • ここ最近の乱歩賞としては面白いように思います。ただ、ここ数年の乱歩賞はひどいものが多かったからなぁ。
    かなり力が入ったというか、入り過ぎた作品で、伏線のはりかた、ミスリードのやり方があからさま過ぎて、逆に伏線が伏線として機能せず、ミスリードもされない結果となっている。
    でも、新人作家さんだからこれぐらいでいいと思う。構成は悪くないと思うし。
    これから先の作品に期待です。

  • レビューは追って。

    2016年1冊目。

  • 作者自身が図書館員ということで、職務について知らなかったことを色々知ることができた。
    図書館と事件のつながりもあるのだが、薄く感じてしまった。
    なにかと全体的に薄い。
    なにかによって導き出されるわけでもなく語られるのみの、原因となるシリアルキラーの過去なども、内容の悲惨さのわりにフワッとしている。
    しかし、このフワッとが狙いなら、なかなかの作品だと思う。
    意味深に見えるシリアルキラーにつけられた不条理な詩に登場する怪物の名前。
    テレビの文化人が名付けたブージャムという名をシリアルキラー自身はなんであるかも知らなかった。
    勝手にシリアルキラーを神格化する人々。
    彼等は自分こそが1番の理解者だと思っている。
    なんて現実感のなさだろう。
    なのに、彼等は、そんなフワッとしたことに人生をかけている。
    その情熱を違うことにかければ、立派な人に・・・なれるかどうかわかんないような人ばっかりだけど。
    信奉者たちの勝手な思惑とは1mmも合致することなく、シリアルキラー当人が求めていたのは、普通の感情を教えてくれる人だった。
    シリアルキラーからみれば輝く天使だが、一般的には育成環境のせいで少しだけ大人びた考え方の普通の少年だ。
    その普通が、一番難しく得がたいのかも知れないが、だいたいの人はそうとは思わない。
    そして、フワッとした設定でしかないとは思いもせず、非日常を求める。

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著者プロフィール

1980年茨城県生まれ。二松学舎大学文学部卒業後、東洋大学大学院で文学を専攻。図書館で司書として働くかたわら、小説執筆をつづける。
2013年、『襲名犯』で第59回江戸川乱歩賞を受賞。
2014年『レミングスの夏』、2016年『ペットショップボーイズ』を発表する。

「2017年 『レミングスの夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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