闇に香る嘘 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934824

感想・レビュー・書評

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  • 腎臓病の孫への臓器移植を望むも適合しないと診断された村上和久は、兄の竜彦に頼み込む。
    しかし、移植どころか検査さえ頑なに拒絶する竜彦に疑念を抱く―
    目の前の男は実の兄なのか―
    27年前、中国残留孤児の兄が永住帰国した時、失明していた和久はその姿を視認できなかったのだ。
    兄が本当に兄なのか、なりすました別人なのか…調べ始めた和久の周辺に不審なことが起こり始める。
    驚愕の真相が待ち受ける江戸川乱歩賞受賞作。


    家族愛が大きすぎて…!
    兄も、だけど、やはり母の想いが尊い。

    自分の記憶が飛んでたら、先ず自分自身を疑うけどな-
    そして目が見えないと、ネットで検索とか手軽な下調べができないから、不便でも対面して話を聞く方法が第一になるのね-と。
    時代や情勢、いろいろなことが複雑に絡み合ってのことだけど…戦争の傷跡って深くて後を引くなぁ…と。
    未だに続いてるものね…

    重い話でしたが、希望ある終わり方で良かったです。

  • 文章が読みやすく、時々メモに残したくなる心に残るフレーズがあり、文章力を感じた。

    盲目と中国残留孤児という、どちらも身近では無いテーマを扱っているが、かなり調査をしたのであろう、読むだけでいつの間にか読む側も知識が豊富になる。

    もともと、本は映像が無いので盲目のようなものであるが、読んでいると見えない不安感が伝わって来るのがすごいと思った。

    盲目である事をひねりに使っているが、トリックのためだけではない、しっかりしたストーリーでラストもスッキリして良かった。

  • 主人公は全盲のお爺さん!
    孫は腎臓病で移植手術を必要としている。
    しかし、自分の腎臓は移植手術に不適と診断。
    兄に頼ろうとするが、兄は検査を拒否!
    そこで主人公『村上和久』は疑問に思う?
    『自分の兄は本当に兄なのか?』

    和久の兄は満州で残留孤児となるが和久の失明後に帰国が叶う?

    和久はその兄を他の残留孤児の成りすましと疑い始めるが、全盲の老人が偽の兄の証拠を探す物語!



    主人公は全盲で行動に制限があり、あらゆる事をネガティヴに捉え、更に記憶障害を思わせる症状もチラホラと!

    こんな物語、何を信じて良いのか?何を拠り所にして良いのか?確固たるものが無く非常に不安定な気持ちで読み進みました。


    でも最後まで読んで良かったです。


    作者の他の作品も読みたいと思った。

  • 出てくる人出てくる人皆疑わしくて、いい意味で参った。高齢になっても体が不自由になっても、息子を気遣う母の姿が終始印象的。ラストにその愛情が大波となって押し寄せてきて更に参る。自分一人の物だった私の脚は息子をこれからずっと支える脚になったんだな…思わず感慨にふけってしまう。
    ラストの鮮やかな反転と伏線の回収もお見事。
    主人公の思い込みの強さや移植に適さなかった実父への娘の態度にドン引きしたりはあったけど、読み出したら止まらない。いつの間にか手探りの闇の中に引き込まれてゾクゾクしていた。
    「闇の中で座り込まず、光を探していこう」…とてもいい言葉だ。

  • 孫への腎臓移植を望むも不適合と診断された村上和久は、兄の竜彦を頼るが、移植どころか検査さえ拒絶される。兄は中国残留孤児の帰国者であり、和久は盲目であった。この男は本当の兄なのか。第60回江戸川乱歩賞受賞作。
    設定、展開、そして真相のすべてに文句なし。主人公を含め登場する老人に、老人らしい老獪さがないのが少々不満。それでも、目が見えない主人公がパニック状態や疑心暗鬼に陥るシーンは、読み手側も不安な心になった。今後の作品も楽しみな作家の誕生である。

  • すごい。書き終えた後よく燃え尽きなかったな、と思うほど。

  • 主人公が盲目であることを活かした展開ではあるが、きちんとヒントを散りばめ、ミステリーとしてずるくない設定でよかった。
    また、主人公が疑心暗鬼になっていくさまは、勢いとリアリティーがあった。
    途中はいらいらさせられるシーンも少なくないが、結果的にそれらは全ていい話だったんだと思うと、とても感慨深い。

  • 腎臓移植、検査すら頑なに断る兄は本当の兄なのか。芽生えたら頭にこびりついて消えない疑念を明らかにしていく物語。
    中国残留孤児のことも学べる一冊。
    タイトルから誰かの嘘が鍵なんだろうと思いながら読み進めたが、まさかの結末だった。読後感は心地よい。
    後半にかけて物語の色が一気に変わっていく。

  • 面白かった!後半、娘の態度軟化は絶対に最後にひっくり返されると思ったらそうでもなかったです。よかった。笑
    お勉強になりました。

  • 盲目故の恐怖、猜疑心が上手かった。
    しかし、真相については少し弱かった気がする。
    ただ、話のまとめ方は良かった。希望が持てる感じ。

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著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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