私の命はあなたの命より軽い (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936729

感想・レビュー・書評

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  • 年末年始にずっと本読んでてレビュー追いついていない問題、まだまだ続きます。
    こちらは2024年最初の作品でした。

    年明け最初の作品としては、タイトルが不穏すぎる…!
    もうこんな比較級の例文なんて嫌だ…!!
    一体、誰の命が誰の命より軽いのか…
    人の命に軽重なんてないわけで、それでもこんなタイトルがつけられてしまうのほどの恐ろしさ。

    まず、あとがきをちょっとだけ引用させていただくと、
    P274「この本が出たばかりのとき、何人かの男性にこんな感想を言われた。
    『いやあ、女の人って怖いですね』
    あれれ? と思った。わたしはそんな話を書いたっけ。
    <中略>
    それにしたってわたしにとっては、あまりにも不思議な反応だった。」

    あとがきに出てくる「わたし」というのは、著者である近藤さんのことである。
    うーん、これは読者の性別によっても感想が分かれるのだろうか。
    わたしも「女って怖い」って感想は持ってない。でも、最後の、ほんの一場面で「こわ!」となって、遡って物語を再構築した時に「女って怖い」と、ざっくりとした解釈になる可能性はあるなと思った。結局、本当の「悪」って誰で、何だったのか。

    読み始めたらするすると最後まで一気に読んでしまった。
    東京で出産を控えた主人公が、突然夫の海外赴任が決まり、急遽実家である大阪で出産することになった。ウェルカムな里帰り出産だと思われたが、なにやら家族の空気がおかしい。そこには何があるのか、主人公が突き止めていくお話。

    違和感があったのが、大阪に帰省しているのに、みんな標準語なところ。あと、ちょっと合わなかったのが、会話と価値観が古くさいところ。たぶんそれがネックなんだろうけど。
    話の内容が内容なだけに、これでかなりお腹いっぱいではあるのだけれど、もう少し遊びがあった方がすき。気になる(魅力的な)登場人物に出会うことができなかったなー。

  • やっぱり近藤さんの作品は好き。
    さくさく読みやすい!

    今回は不穏。
    うーーーん。
    4人で家族だって思うなら話せばよかったんじゃないの?
    何も言われないから知らなくて当たり前。
    知らないんだから普通に赤ちゃんの話もするよ。
    それで最終的に妹は私を許したのか?も何もないでしょ。
    それこそ逆恨みみたい。
    要はあの家族はみんなあの妹中心だということ?
    お父さんもダメだし。
    ラストもさぁ。
    何がしたいの?って話。
    もともと、どうして妹は主人公の旦那のことを嫌ってたんだっけ?
    主人公はササーッと距離取って赤ちゃんとお幸せに…

  • 早く抜け出したかった。左手の厚み(残りの頁)を見ながら、いつスッキリするのかと。
    事情があって里帰り出産を余儀なくされた遼子(姉)。しかし、実家はいつもと様子が違っていた。
    命の尊さを問うわりに、妹に関連した出来事があんまりだし。命に重いも軽いもない。そこから気持ちが移入できなかった。
    家族のギクシャクさ、妹の不安定さ、姉の他人軸な部分、全体通しての不穏な空気がよく伝わった。
    奔放な妹と、思慮深い姉。
    他者に振り回され、見えない力(流れ)により、人の意識まで取り込まれてしまう。個人的に、姉の心情のところでぞっとした。人が良い人程、攻撃されてしまうのか。怖いのは女だけではない、と思わさせられた。読後、嫌な感じが残った。

  • 遼子の実家で何があったのか?この家族の違和感は何なのか?気になって一気に読んだ。
    本来ならお腹に宿った命は奇跡で喜ばしいことなのに若すぎるという一言で周囲に反対され本人の意思とは関係なく堕胎させられるという決断に至ることは珍しいことではないだろう。15歳の少女の妊娠出産は両親にとって衝撃的で簡単に擁護できないことも分かる。
    同じ命でも祝福され望まれて生まれてくることもあれば、生まれ出る以前に疎まれ望まれないこともあるのかと思うと生まれてくる赤ちゃんには罪は無いのに命の重さに違いがあるのは悲しいことだ。この作品を通じて自分自身も勿論、たくさんの人が命の重さを一層自覚してほしいと願う。

  • 初めての出産をひと月後に控えた不安な最中、夫が半年間の海外出張を言い渡される。
    急遽、里帰り出産を決める遼子。
    だけど何かがおかしい…。
    よそよそしい家族。よそよそしい同級生。
    何かを隠していることは間違いなのいのだけれど、誰も教えてくれない。
    大きなお腹を抱え、不在の夫は当てにならず不安は募るばかり。

    なかなか真相を明かしてくれないので、少しイラッとするけれど、真相を知りたくてページは進む。
    命の重さ…悪戯に使う言葉ではないけれど、ああ確かに…子を持つ母として、遼子と美和と何が違うのだろうと思うとやるせない。

    本文より
    父と母のことを優しい人だと思っていた。だが、その優しさは自分たちが認めるガイドラインを守った人にだけ向けられるものだった。

    このセリフは響く。
    自分自身にもなくはない部分なのだろうと思うと胸が痛い。
    ただ、両親にはもう少し美和に寄り添って欲しかったと思う。
    極論ではあるけれど、我が子が法(人の社会が決めた良し悪し)を犯したとしても自分だけは我が子の味方であるのが親のような気がする。もちろんボーダーラインはあるけれどそれでも親というのはその中にあっても理由を見つけて我が子を救済するものなんじゃないかと思ったりする。甘いかな。甘いのだ私は。

    それでもね、愛されて生まれたきたはずの我が子に命に重さがあるだなんて思わせないのが大人の務めのような気がしてならないのです。

    とは言え…妹想いの優しい姉が、今後どのように心境を変えてゆくのだろうかと思うとページを閉じつつ苦笑いとなりました。
    結局、誰しも自らのガイドラインから逃れることはできない。

    今年の30冊目


  • 里帰り出産のため実家に戻るも家族の様子が何かおかしい。
    最初から主人公と一緒にモヤモヤしながら事実が気になりあっという間に読了。
    でも、最後は安心できない終わり方でした。苦笑

  • 一気読みでした

    女の敵は女
    そして女って怖いなあ(自分も女のくせに)

    姉妹のお話だけど自分は弟しかいないから姉妹がいたらどんな関係だったんだろうって想像した

    ヤフーニュースで教師同士が学校で性行為
    女性側が無理やりだったと供述していたが
    こういう行為って男性だけが悪いわけじゃないと思う
    結構女って誘うし、男性に誘われたとしても拒まない人多い
    なのに被害者面する

    本作でも高校生の妹がイヤな役で胸糞だった

  • あえて言う、この本に登場する父親は最低の人間だと思う。2人の人間の命を奪ったと言っても過言ではない。
    あと、最後の1ページで物凄く後味が悪くなった。

  • 色々事件が起こりすぎて続きが気になり、一気に読んだけど…
    ちょっと命が簡単に扱われすぎてる感じがして再読はしないかな。

    でも題名には共感。命は客観的にみたらきっと不平等なものだろうなと、思う。

  • 主人公目線で話が進み、難しい表現もなかったためとても読みやすかったです。家族に何があったのと、主人公とともにモヤモヤしながら読ませて頂きました。



    命の重さについて考えさせられるお話でした。祝福される妊娠と、そうでない妊娠。命は平等であるという倫理的概念はあるものの、そうは思えないときがある。その苦悩が感じられるお話でした。

    ラスト数行にゾクッとしました。あのまま終わってほしかった…

著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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