Aではない君と (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937146

感想・レビュー・書評

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  • はじめは息子が人の心も無いような悪人かと思っていましたが、読み進めると息子も心を殺された被害者だったことがわかります。

    しかしひとたび犯罪を犯してしまったら、息子は加害者でしかありません。
    そこに至るまでの過程は、息子を裁く上で情状酌量の余地でしかなく、「加害者」の烙印は一生消えることがないのです。

    被害者の親も辛いでしょうが、加害者の親も辛い。
    周りからの同情が無く、プライバシーもないように扱われる点では被害者の親よりも辛い。

    罪の重さ、罪を償うということの意味を改めて考えさせられる作品でした。

  • 第37回吉川文学新人賞受賞作品
    重く、暗い気持ちになる物語
    少年犯罪、加害者家族、被害者家族感情の物語

    ストーリとしては
    14歳の息子・翼が同級生を殺害した容疑で逮捕。
    警察だけでなく、親にも弁護士にも口を閉ざす翼。
    なぜ、口を閉ざし続けるのか?

    両親は離婚していて、母親の純子が育ててきていますが、ここで描かれている純子はかなりひどい母親という印象です。
    一方で主人公である父親の吉永。
    息子の事件を受け入れられない父親の動揺が描かれていきます。そして、世間の対応。会社での立場など
    自分がその立場になったらと考えさせられます。

    父親が事件の真相を本人から聞き出そうと奔走します。
    父親が息子に本気で向き合った結果、明らかになる真実
    ミステリーとしては、想像通りの展開です(笑)
    しかし、この物語の本質はそこではありません。

    被害者と被害者の父親の感情
    正直、この被害者および被害者の父親には同意できない。
    一方で、突きつけられる
    「体を殺す事と心を殺すことはどちらが悪いのか?」
    といった翼の想い

    考えさせられます。

    お勧め!

  • ものすごくリアル。
    何も語らない翼の、少しずつ明らかになる真実と本当の気持ち。
    息子のサイン、絶対に見逃さないようにしよう。

  • いじめを受けた本人と、いじめを受けた子供を持つ親には
    ガツンとくる物語。

    「子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ」
    物語のなかで加害者の親はこれを考えた。
    被害者の親はこれを考えただろうか。
    全ての親が考えるべき事柄だと思います。

    いじめをする本人と、いじめをした子供を持つ親の心にも
    届く物語があるといいと思います。

  • 加害者の父親が主人公で加害者である息子と贖罪について共に考えていくというストーリー。
    薬丸岳さんは加害者と被害者の両方の見解を参考文献等から調べ上げ、片側に偏らないような執筆活動をしていることで有名だ。主人公が加害者サイドだけに、加害者からの見解が多いが、被害者の視点も合わせており、とても腑に落ちる。物語に一貫性があり、とても読みやすかった。

  • 最後の1ページまで貪るように読んだ。
    親子って…。

    『どっちの罪が重いの?』
    『心とからだと、どっちを殺したほうが悪いの?』

    自分が親だったら、人を殺してしまった我が子
    と向き合えるのか?
    子供の心の悲鳴に気付き寄り添えるのか?
    吉永さんの気持ちを痛いほど感じながら
    最初から終わりまで自分なら、夫なら、
    子供たちなら、何をどう感じてどう行動するのかを
    自問しながら読み続けた。

    作品を通して貴重な追体験をさせてもらった
    気がします。

  • 同級生の殺人容疑で十四歳の息子・翼が逮捕された。

    誰もが加害者にも被害者にもなる可能性を持っている。
    そして、加害者の親にも、被害者の親にも…。

    どうすればよかったのかではなく、これからどうすればいいのか、何をしなければならないのかを考えながら生きていくしかない。
    薬丸さんは、胸の痛くなる答えの出ない話を書くのが上手い。

    よほどのことがあったとしても、人を殺していい理由にはならない。だけど、
    「心とからだと、どっちを殺したほうが悪いの?」
    もし子供にそう問われたら?吉永は最後に答えを出した。私は…まだ出てない。

    ドラマも見ました。原作に忠実でよかった。
    吉永が原作より少し弱くて、その分神崎先生の言葉が響いた。

    私の棒読みじゃなく、仲村トオルの心から出てくる叫びを聞いて、あぁ、藤井さんも愛していたんだなって震えた。

    愛って伝わりにくい。特に親子は…。

    「性格や価値観が同じ人間などいないと思いますが」言い訳の隙を与えない許さない瀬戸さんが好き。

    電子書籍を2台買ってふたりで本を共有する。
    お互いそれぞれ好きな本を買う。色んなジャンルの本が電子書籍の本棚に並ぶ。
    いつもなら読まない本を読む。
    相手の事が少しわかったような気になる。
    私も娘とやってみたい。


  • 殺人を犯してしまった14歳の息子と父親の物語。
    都合の良い展開には、易々と転ばない。
    薬丸岳さんの、情に流されない文章が好き。

    「心とからだと、どっちを殺した方が悪いの?」
    に対する父親なりの回答が凄く良かった。
    あれは響く。伝わる。
    正直、審判前の翼の訴えも理解出来てしまったから
    納得出来る回答って何だろう…と思っていたし
    反省や更生の兆しは皆無に見えていたから尚更。

    思わず、ラストのシーンでは泣いてしまった。
    逃げずに立ち向かい、罪と向き合い続ける。
    言葉にすれば簡単だけど、実行するのは…。

    読了後の今も、放心してしまうような、
    喪失感でいっぱいになる作品だった。


  • 息子が殺人容疑で逮捕され、加害者家族の父親として息子や被害者家族、社会と向き合っていく物語。

    読み進めるたび胸が痛くなり、重い話だけど目を背けず向き合って考えることの大切さを感じた1冊。
    同著者の「友罪」を事前に読んでいたこともあり、多少の免疫がついてたので衝撃少なく読み進めることができた。(「友罪」は読みながら思考がいっぱいいっぱいになって溢れた…)

    家族の形や状況は様々で全く同じ人はいない。
    主人公だけでなく母親や恋人ほか登場人物が抱く感情や行動は、誰もが抱きうるものであり起こりうる状況だと思った。1人ひとり個性があって違う人だからこそ、子育てだって1つだけの正解はないだろう。
    だた、大切だと共感したのは主人公の父親が発した言葉。
    「物事の良し悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ」
    もがきながらも息子と向き合い前に進もうとする父親の想いや行動から考え学べる事が多かった。

    少年犯罪に関わる人の心情をそれぞれの立場から繊細に描く著者の熱意がすごい。
    引き続き別の作品も読んで心を鍛え磨きたい。

  • この重く難しい内容を一気に読ませるのは さすが。
    読む前は いまはこんな暗くて重い話を読む気分じゃないんだけどと ためらいながら手に取ったのに あっという間に引き込まれて すごい勢いで読了。
    本を読む前に テレビドラマを見て わりと早々に途中で断念したので 正直本を読むのも あまり気が進まなかった。
    でも 借りた本だし いつまでも放っておけないし やや渋々読み始めたのに。
    こんなことなら ドラマ途中でやめないで もっとちゃんと最後まで見ればよかったなぁ。ドラマは キャストがよかったし 薬丸岳の原作だしで 期待値が高すぎたのかも。それか あのあと急激に面白くなってたのかもしれないし。
    こういう話は終わり方が難しいと思うけど こんなにスッとしっくりくる終わり方はさすが。どんな終わり方をしても なにがしかの違和感はあるものだけど これに限ってはなかった。
    もし第2章で終わってたら なんだかなぁだったと思うけど 第3章があることで すごく現実味が増して すんなり受け入れられた。
    最近自分の中で余裕がないせいか 重い話や長いストーリーには手が伸びず 軽く読める短編やエッセイばかり読んでいて
    こういう重い話や長いストーリーは 誰かから借りて 致し方なく読むって感じになってた。それも なかなか進まずって感じで。ひさびさに長編を一気読みした。この本も手に取ってストーリーは確認してたけど いまはあまり…と棚に戻してたから 借りなかったら 読んでなかったかも。読んでよかった。尾崎さん ありがとう 笑。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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