風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ)
- 講談社 (2016年6月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062940368
作品紹介・あらすじ
聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについていた試料の収められた遺跡は、まさに人類の聖地だった。
ハギリはヴォッシュらと、調査のためその峻厳な地を再訪する。ウォーカロン・メーカHIXの研究員に招かれた帰り、トラブルに足止めされたハギリは、聖地以外の遺跡の存在を知らされる。
小さな気づきがもたらす未来。知性が掬い上げる奇跡の物語。
感想・レビュー・書評
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聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについていた試料の収められた遺跡は、まさに人類の聖地だった。ハギリはヴォッシュらと、調査のためその峻厳な地を再訪する。ウォーカロン・メーカHIXの研究員に招かれた帰り、トラブルに足止めされたハギリは、聖地以外の遺跡の存在を知らされる。小さな気づきがもたらす未来。知性が掬い上げる奇跡の物語。
「裏表紙に記載」
読み進めるうちにドキドキが止まらなくなる.哲学的.何処へ行くのだろう.そしてあの人へとつながっている証拠がポロポロと出てきて、さらにドキドキが加速する.
途中、ハギリ博士がタナカさんに「彼女(ウグイ)は人間です」と言った言葉に、ハギリ博士の考え方だと彼女は人間なんだなと思った.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ただの想像ですが、森博嗣にとって現代は、彼が何十年も前に予測していたことの起こっている(その程度に差はあれど)時代なのではないかと思います。
そして、このWシリーズは、彼からの、彼らしく彼らしくない「お節介」なんじゃないかなとも思ったりします。
こんなことが起こるよ、こんなことは問題ではなくなるよ、もっとフォーカスすべきはこちらの方向だよ…と。
作中で「そんな時代もあった」「それらが問題だったこともあった」「その懸念が蔓延していた頃もあった」と過去形で語られるたびに、なんだか、自分もずっと先に生きているような気持ちになります。
ヴォッシュと一緒に、今現在、自分が体験していることを「懐かしく」思い返すような気持ち。
Wシリーズに通して言えることですが、水面下で何かが動いていることを知りつつ、穏やかな表面を眺める感覚が強いです。水面下で起こっていることについてはいずれ対処せねばならないが、それは今ではない。無視をするわけでも、楽観しているわけでもないけれど、意識的に手を出さない。
そんな、張り詰めた弦楽器が弾かれるのをじっと待っているような気分が、ふいに落とされる爆弾で、毎度毎度、息が止まりそうになります。
今回は、メールに書かれた彼女のフルネームを読んで、思わず本を閉じて天を仰ぎました。 -
Wシリーズ3作目。前作で見つかった「遺跡」とその土地の人に対しての調査が始まる。その過程でウォーカロンメーカー側との接触がありそちらから別の遺跡の存在を知らされる。2つの遺跡の繋がりは?あの彼女との関係は?今回学者同士の対話が多くてハギリ博士が生き生きしてる。本来これだけでいきたいだろうにお疲れ様です。感情移入しやすかったので後半の気付きの部分は一緒に興奮してしまった。調査の過程で人間としての条件が提示されているけど進化していく過程で人間はその条件を手放していきウォーカロンは獲得していく。人間という認識は何が元なのか。曖昧さがさらに増し危うい。全てはあの彼女が敷いたレールの上を進んでいるのか先が気になる。
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Wシリーズ3作目。
森ファンにはたまらない一冊であること,間違いなしの今作。
最初のページからグッときた。この一文……「ランダムに小石があって,フラクタルに雑草が生えている」。こんな文章を書けるのは森さんしかいない!なんとなくお気に入りの文章です。
物語はいよいよ核心へと迫って行ってる……という印象を受ける今作。ヴォッシュ博士とハギリ博士の議論が熱い。読んでいると,自分までその問題を論じている学者の一員になってしまう錯覚を覚えるくらい,二人の議論に没頭して考えた。
最後のハギリ博士の発想。これも読み手も一緒に興奮してしまう。
あとは,カンマパの本名,そして最後の一文。これはファンにとっては「えーーーっ!?」と叫びたくなる言葉でした。百年シリーズ3作目とほぼ同時期に出された理由がよく分かる。
さて,この作品を楽しんだところで次は百年シリーズ3作目「赤目姫の潮解」を読みます。あぁ、楽しみだなぁ♪ -
終わり方よ…後半の急展開にもドキドキしたけど、それより最後〜!!めっちゃ気になる終わり方する。
砂で描かれた曼荼羅、迷宮百年の睡魔?関係ない?やっぱり百年シリーズ読み返さないとかな。 -
「Wシリーズ」第三作。
チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下を、ハギリはヴォッシュらと、調査のため再訪します。
ウォーカロン・メーカの研究員に招かれ、トラブルに足止めされたりしながら、ハギリは遺跡の存在を知ることになります。
そしてさらに出会った人々や、そこにまつわるウォーカロンの秘密とは。
ますます面白くなってきています。 -
なんとなく読後感が良いのは、
この巻の終わりが比較的希望に満ちているから。
物語の進行は遅いしこれまでと何も変わらない。
でも読後感が良い。面白い小説ってそんなものだろうか。 -
Wシリーズ3作目.「ウォーカロン」と呼ばれる人工細胞で作られた生命体が普及したいつかの未来の物語.
研究者視点の発想と思考回路に脳みそを叩かれる.政治的な能力でなく純粋に頭の良い研究者は穏やかで信用できるという印象.今回は人間もウォーカロンも生き生きと描かれていてその場面だけなら平和でもある.
ハギリ博士とウグイも良いコンビだと思うよ.表紙にハギリ博士とウグイの会話が入っていることに初めて気付いた.
*2019.5 *2020.4