上を下へのジレッタ (手塚治虫文庫全集)

著者 : 手塚治虫

• 講談社コミッククリエイト (2011年4月19日発売)

作品紹介・あらすじ

妄想世界ジレッタの恐るべき威力とは！？　敏腕ディレクターの門前市郎は、新人歌手・小百合チエのある「秘密」を利用して彼女を売り出し、芸能界に君臨させようとするが……？　異色極まるＳＦドラマ！

感想・レビュー・書評

[yamaitsuさんの感想 · 2017年5月31日]

先日舞台を観たので原作を。手塚作品ではややマイナーかな？私も舞台化の話が出るまで知らないタイトルでした。

天才肌の野心家プロデューサー門前は、普段は不細工なのに断食すると超絶美人になる歌手の小百合チエを利用して芸能界でのし上がろうとするが、チエの幼馴染で恋人で売れない漫画家の山辺音彦と工事現場でもみ合ううちに落下させてしまう。しかし死んだと思われた山辺は、工事現場の地下にある柱と共鳴し、妄想世界ジレッタの中で生きていた。

ジレッタワールドは、今ならさしずめバーチャルリアリティか。人々は媒介装置をつけるだけで、山辺の妄想世界ジレッタに共鳴し、その世界をリアルに体験することができる。これを利用して一儲け企む門前と、そのスポンサーになる企業社長、さらには国民の洗脳にジレッタを利用しようとする首相らの思惑が入り乱れ、事態は世界規模のおおごとに。離婚した妻リエに未練のある門前、両想いだけど門前に利用されてなかなかハッピーになれないチエと山辺。二組の恋愛模様も絡めつつ、ジレッタの世界はカタストロフを迎える。

原作が連載されたのは1968～1969年。女性キャラの60年代ファッションが今なら逆にレトロフューチャーで、昭和の猥雑さと近未来感がブレンドされていい感じ。一種のSFだけれど、主人公の門前がどちらかというとヒールでダークヒーロー、二枚目だけど悪い奴な点と、下ネタというかエロティックな場面が多々あり、あまり子供に読ませられない（笑）のが、いまいちマイナーな要因かと思われ。ジレッタ内で繰り広げられる妄想もエロティックでシュールだし。

妄想ワールドであるジレッタを生み出す山辺は漫画家ですが、アイデアは面白いのに絵が下手なので売れないという設定。ゆえに自分の脳内を直接読者に見せられたら楽なのに・・・というようなことを述懐しますが、もしかしてこれは手塚治虫自身の気持ちだったのかも。頭の中に次々アイデアが浮かんでも、それを他人に見せるためにマンガの形でアウトプットするには非常に時間も手間もかかるわけで、もういっそこの脳内映像をすべて見せられたら！って思ったことが、もしかしてこの物語の発端だったのかも、なんて勝手に考えてしまいました。

[ジョウカダイゴ†††さんの感想 · 2021年4月28日]

コアなファンではないかもですが
手塚治虫好きなのでマイナーなのはそのつもりで読むと決めています。
クズなキャラクター門前ですが、こういったキャラクターを主人公に据えるの珍しいなぁ、と思いながら、それでもしっかり出来上がったタッチで個人的には何故か憎めなくて好きなキャラクター。

サイケデリックな描写はきっとディズニーアニメからのインスパイアだったりリスペクトなんだろうなぁ。
なんとなく漂う70年代の空気感を感じながら読めたのも◎(生まれてないが笑)

先日「人間ども集まれ！」を読んだところなのでそんな気はしていたが、やはり後半にかけて尻すぼみ気味。

とは言え、面白かったです。

[tsukasa26さんの感想 · 2019年1月15日]

局が一方的に専属契約破棄さ とどのつまり 千客万来 晴海なぎさ ミス丸太ん棒 門前市郎 セックスのあと女は一番美しくなるといったやつがあるが…この子は空腹で死にそうなとき一番美しくなるんだ！ 寺山修司 俺の丸太ん棒を使え 代々木マンション 山辺音彦 俺の考えた範囲の出鱈目しか起こらない 高地族 君原選手 無意識の中に強い惹きあいを感じた つくられたスター 暗黙のうちの同情心 まるで熱帯魚みたいにひ弱そう すっかり彼女にご執心しょうしん 霞ヶ関ビル 鼠が関ビル 恍惚状態 渾然と合流して 一種の共鳴状態 かァちゃんが恋しいという願望 つまり一般的な欲求不満の願望 民俗学上桃太郎伝説は川上から大きな… テレビ以上の怪物になるぞ 万朝日報 小百合チエのポートレート ジレッタ状態 アメリカでは損害賠償わ要求しますよ 喉に嵌め込まれているマイク 彼は凋落し だから精力を散らさなきゃァ… フーテン 初代教祖 フンあのゾッとしないほうの顔でか 磐石のような自信 有木足 松下幸之助 正力松太郎 天然肥料 妄想の世界では 裾野 静岡県警 富士メトロポリス 成田闘争 全学連のブレーン 他人なんか知ったことかお前一人の損得を考えろ 伝家の宝刀を抜きましたよ まあ言うなれば標準以下だ 心臓衰弱 過失致死 ゲンキンなやっちゃさあ今夜はファイトやぜ お前は彼等の偶像なんだぞ！ 越後君子くんのご面相に比べれば はざま間リエ あべこべね利用された憐れな人！ 白人のじいさんには絶倫が多いなオナシスにしてもヘンリー・ミラーにしても 終段暗示みたいなものだろうか… 自由人これ英語でジレッタンという オーソン・ウェルズって男知ってるかい？ 地球と月とが衝突する ライン川の川岸 リンツ リンチ リエのやつ大学出だとかなんだとかいったって結局金と平凡な家庭に転がっていく女なンだ 保証の限りにあらずだがね ローレライの岩 人気ども集まれ！ 寓意を読み取っていただければ幸いです 連載当時では大阪の万国博なのです 写植 バーチャルリアリティ（仮想現実）のようなものである 新しいマス・メディアを開拓しようとする姿勢 生き様が投影されていると思う 当該問題を考えて行く上でも決して適切な処置とは思えないこと

[hueyさんの感想 · 2015年9月25日]

手塚治虫ワールド、私の頭で処理できる世界を越えすぎているシリーズ2。

少し入れ知恵してから読むべきだったか。前半は面白く、男性が持つ支配欲や出世欲などに振り回される女性があまりに意志なさげで、読んでて情けなくなったけど、そんな感情は途中からどっかから行き、内容を理解するのに精一杯になった。正しくは理解できなかった。

でも、私それを理解できなくて、よかったと少し思っている。いずれにせよ、また読みます。

[xxciiiiiexxさんの感想 · 2012年2月10日]

バーチャルリアリティとマスメディア。

[kiyosiさんの感想 · 2011年12月16日]

敏腕ディレクターの門前市郎がスカウトした新人歌手・小百合チエには、ある驚くべき秘密があった。その秘密を利用して彼女を売り出し、芸能界に君臨すべく策謀をめぐらせる門前。そして漫画家アシスタントの山辺音彦が生み出す妄想世界「ジレッタ」の恐るべき威力とは？　異色極まるＳＦドラマ

[ピヨピヨさんの感想 · 2011年7月10日]

バーチャルリアリティの世界「ジレッタ」とメディアの融合の恐ろしさを描いた作品。大人漫画的でラフな線画にかかわらず、幻覚や妄想の描きかたの迫力がすごいです。物語には直接関係するわけではないけれども、「人間ども集まれ！」で最悪の人間性を見せた元呼び屋の木座神明が、なぜか特別出演していますね（笑）。文庫本の筒井康隆の解説が面白い！

著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」