訣別(上) (講談社文庫)

  • 講談社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065123102

作品紹介・あらすじ

ある日、元ロス市警副本部長で、現在はセキュリティ会社トライデント・セキュリティの重役になっているクライトンに呼び出され、トライデント社の顧客の大企業のオーナーである富豪、ホイットニー・ヴァンス(八十五歳)が、ボッシュを名指しで依頼したいことがあると言っている、と告げられる。依頼内容は、クライトンも知らず、ボッシュにのみヴァンス本人から伝えるとのこと。


ボッシュは、ロス市警時代の旧知の知人が本部長を務めるロス北郊の小さな自治体サンフェルナンド市(人口二万人強)の市警察に誘われ、無給の嘱託刑事として勤務するようになっていた(一方で私立探偵免許をあらたに取り直していた)。  ある日、元ロス市警副本部長で、現在はセキュリティ会社トライデント・セキュリティの重役になっているクライトンに呼び出され、トライデント社の顧客の大企業のオーナーである富豪、ホイットニー・ヴァンス(八十五歳)が、ボッシュを名指しで依頼したいことがあると言っている、と告げられる。依頼内容は、クライトンも知らず、ボッシュにのみヴァンス本人から伝えるとのこと。  ヴァンスに会いにいくと、高齢と疾病のため、老い先短いことを悟った老人から、大学生の頃知り合い、妊娠させながらも、親に仲を裂かれたメキシコ人の恋人を、あるいはもしその子どもがいれば、探してほしいと頼まれる。ヴァンスは未婚で、ほかに子孫はおらず、彼が亡くなれば莫大な財産の行方が気になるところで、もし血縁者がいれば、会社の将来を左右する事態になるかもしれず、そのため、会社側の利益(ひいては自分たちの利益)を優先させる行動に出る重役たちがいることが予想されるため、調査はくれぐれも極秘でおこなってほしい、と念を押される。また、この調査に関する報告は、かならずヴァンス自身にのみおこない、ヴァンス以外の人間から調査への問い合わせは一切しない旨、告げられる。

感想・レビュー・書評

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  • 刑事ハリー・ボッシュのシリーズ、第19作。
    ロス市警は退職したが、ロス郊外のサンフェルナンドの市警察署に誘われ、無給の嘱託刑事となっています。
    私立探偵の免許も取り直し、それぞれの立場で事件を抱えることに。

    根っからの刑事が警察を辞めてどうなることか、と思わせたが。
    サンフェルナンド署は小さくて人手も予算も足りないが、ボッシュの能力を認め、力を貸してほしいと言ってきたのが嬉しい。
    ボッシュにとっては、警官の身分を維持していられるのも、ありがたいところ。

    ある日、かっての上司に呼び出され、大富豪ホイットニー・ヴァンスからの依頼があると伝えられます。
    ボッシュを名指しで、若い頃の恋人かその子孫に遺産を譲りたいので探してほしいという内容だった。
    莫大な遺産を巡って、妨害が出る可能性があるため、極秘の捜査となる。

    ボッシュの娘のマディは、大学生。
    調査には、異母弟の弁護士ミッキー・ハラーも協力することに。
    私立探偵としての仕事はやはり、私立探偵ものの雰囲気が出てくるのが面白いですね。

  • マイクル・コナリー『訣別(上)』講談社文庫。

    シリーズ第19作。扶桑社ミステリーの『ナイトホークス』を読んで以来、マイクル・コナリーの作品を読み続けて27年になる。作品によっては多少の出来・不出来はあるものの、常に一定水準の作品を描き続けて来たマイクル・コナリーには敬意を表する。

    さすがは現代最高峰のハードボイルド警察小説と評されるだけのことはあり、非常に面白い。巧みなプロットと類い稀なるリーダビリティ、どれを取っても全く非の打ち所が無い。

    サンフェルナンド市警の嘱託刑事と私立探偵を務めるハリー・ボッシュに85歳の富豪、ホイットニー・ヴァンスから名指しで人探しの依頼が舞い込む……破格の報酬の割りには単純と思われた依頼は困難を極める。一方、刑事としてボッシュは『網戸切り』と呼ばれる連続レイプ犯を追い掛けるのだが……

    タイトルの『訣別』の意味はそういうことだったか。いや、まだ何かあるやも知れない。波乱の予感。

    ボッシュが新鋭ジャズ・トランペッター、クリスチャン・スコットのアルバムを聴いている!(^_^)

    本体価格880円
    ★★★★★

  • ハリーボッシュ・シリーズの最新作。本当に相変わらずとても面白い。前作よりも面白かった。作者のマイケル・コナリーのクォリティの高さには驚くし、信頼を深めるのみ。どの作品も本当に面白いので、是非とも読んでもらいたい。

  •  『ナイトホークス』で始まったハリー・ボッシュ・シリーズも、主人公が60代後半に差し掛かった今、終盤を迎えつつある感がある。LA警察を退職し、サンフェルナンド市警の非常勤職員として細々と警官業を続ける一方、私立探偵の免許を再取得し、警察の事件と探偵の事件の二つを抱え込む。警察の事件は連続レイプ事件、探偵の事件は遺産相続のための古い血縁者の捜査依頼。

     探偵の一件では、長らく追想されることのなかったヴェトナムでのトンネルネズミ時代が、事件とのかかわりによってボッシュの心に帰ってくる。ヴェトナムで心身共に傷を負ったボッシュは、初期作品では戦場の暗い影をひきずった刑事でもあった。そのことが書かれなくなって久しいにも関わらず、まさにシリーズ終盤を思わせる今になって、老齢に達したボッシュの前にヴェトナム時代が蘇る。

     今になってボッシュという人間像の一部を象ることになったヴェトナムを、改めて当人に振り返させることになるこの事件。主人公とそのシリーズをより深部まで理解させるために重要なポイントとなり得る一冊。蘇るヘンドリックス、クリーム、ストーンズ、ムーディ・ブルース。『青春の光と影』。まさにぼく自身も、日々ギターと長髪とベルボトムで送って過ごした1970年の日々。

     さらに、病院船にヘリで慰問に訪れたボブ・ホープとコニー・スティーヴンスの挿話。強風で一旦は着艦を諦めながらも、引き返して強引に船に着け、五か月前に月面を歩いたアームストロングとともに彼らが降り立った昔日のエピソード。その後、コニーとLAのシアターで再会した時の追想を共有する一瞬。心にずんと来る情感に満ちたこれらのシーンは、本書における追憶の名シーンである。

     以上のことだけでも本書はシリーズにとってとても重要な意味を成すことのように思う。ましてや大学に通う娘マディとの時間の中ですら、ヴェトナムの時間が登場するようになるのである。そしてリンカーン弁護士ミッキー・ハラーとの重要な共同作業に取り組んでゆく点も含め、最新のオールスターキャストで臨む本書で、ボッシュは非常に困難な二つの事件に取り組んでゆく。

     さて本作は、タイトルも重要だ。チャンドリアンである作者は、この作品に『ロング・グッドバイ』へのオマージュとも取れる名をつけた。"Tre Wrong Side of Goodbye"。矢作俊彦の二村刑事シリーズ『ロング・グッドバイ Wrong Goodbye』を想起する人もハードボイルド・ファンであれば、少なくないに違いない。

     LA市警を追われたからのボッシュの今後が気になる。一作毎に急変を遂げつつ、それらのバリエーションのなかで、一歩も譲ることなくハイレベルのストーリーを編み続けるコナリーの手腕に市警の仲間たちとともに、高らかなスタンディング・オベーションを送りたい。

  • ボッシュシリーズ、やっぱりおもしろい。無給の刑事(?ちょっと訳わからないけれど)と私立探偵でもある。大富豪から依頼された人探しと警察の事件の行方。

  • ボッシュシリーズ最新刊
    予算が切り詰められた小さい署で無給の刑事と私立探偵をやっている66歳のボッシュ。
    娘は大学生、家を出て一人住まい。
    ある日かつての嫌いな上司の天下り先に呼ばれたボッシュ、嫌々訪問する。
    元クソ上司から大富豪からの依頼を紹介され翌日に赴く、この辺はチャンドラーの「大いなる眠り」っぽい話になるかと思ったが、大富豪との会談はあっさりしたもの。
    10代の頃、妊娠させた女性が居るので係累を探して遺産を相続させたいとのこと。

    いつものようにボッシュは他にも事件を抱えていて、それは連続強姦犯。
    どっちも精力的に追っかけて行くのだが、職場の嫌な上司、意欲的な女性相棒、無能な同僚など周りのキャラも相変わらず多彩。

    連続強姦犯がまたやらかして、何気ない目撃情報からの推理で周辺のゴミ箱を3っつひっくり返して証拠を漁る。
    すげえ執念のボッシュ、無給なのに。

    探し人の方も目鼻が付きそうなところで大富豪の訃報が、下巻に続く。

  • 新天地で、ボッシュが始動。

    結局、LAPDとは喧嘩別れっぽいですね。その代わりと言っては何ですが、SFPDで、無休ではあるものの刑事を続けている様です。

  • ボッシュはロス市警時代の旧知の知人が本部長を務めるロス北郊のサンフェルナンドの市警察に誘われ、無給の嘱託刑事として勤務するようになっていた。一方で取り直した免許により、私立探偵として個人的な仕事を受けていた。ある日、85歳の大富豪ホイットニー・ヴァンスから呼び出され、人捜しを依頼される。

    シリーズ第19作。一粒で二度おいしいストーリー。下巻に続く。

  • 相変わらず面白い。本巻は家族の秘密がテーマでロスマク風。リーダビィティもいつもどおりで下巻に期待。

  • 安定の面白さゴミある。今作のボッシュはストーリーが変わって新鮮味がある。私立探偵としての後継探しの依頼と嘱託刑事で殺人事件ではない婦女暴行事件の捜査が同時進行する今作がこれまでと比べ新鮮味がある。捜査における詳細の社会描写と警察組織の具体的な描写は今作も健在で非常に良かった。依頼人が死亡するという驚きとともに終わる上巻、下巻も楽しみです。

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著者プロフィール

Michael Connelly:1956年生まれ。LAタイムズ元記者。代表作としてはボッシュ・シリーズ、リンカーン弁護士シリーズがあり、当代随一のストーリーテラー。

「2023年 『正義の弧(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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