Ank : a mirroring ape (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065171240

作品紹介・あらすじ

2026年、京都で大暴動が起きる。「京都暴動=キョート・ライオット」だ。人々は自分の目の前にいる人間を殺し合い、未曽有の大惨劇が繰り広げられた。事件の発端になったのは、「鏡=アンク」という名のたった1頭のチンパンジーだった。霊長類研究施設に勤める研究者・鈴木望は、世界に広がらんとする災厄にたった1人で立ち向かった……。

感想・レビュー・書評

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  • 佐藤究さんの著書、自分にとって2作品目。前回読んだ「テスカトリポカ」が最高に面白かったのでこちらの作品も期待していた。

    作品は本当に面白く、色んな知識が散りばめられていてそのほぼ全てが新な勉強になる作品だった。作者の膨大な知識と裏付けの為のレファレンスが凄い。執筆の苦労は容易に想像でき、難作だったろうと思わされた。

    ヒトと大型類人猿(オランウータン、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ)
    の違い等この本を読むまで考えもしない、知らない事ばかりで理知的な刺激が堪らなく昂らされた。
    共通祖先のロストエイプ、「自己鏡像認識」という初めて知る知識だったが、きっとこの作品にあったように反射した自分の姿を自分と認識し、だけど左右が逆転した姿を見て自分じゃないという考え方の発展から脳が発達して言葉も生まれヒトは進化できたような気もする。
    メチャクチャ面白い。

    この先また何万年後とかどんな生き物がどんな世界を作っていくのか?
    ヒトは進化したからこそ今があるけれど、この進化は長い月日がたてばもっと進化するかもしれないし、また別の生き物が違う進化をして地球上で新たに席捲するかもしれないと考えさせられる。今生きてる我々の子孫がいつかロストエイプのように何かで生滅してしまうかもしれない。
    絶対に知ることはできない遠い未来にワクワクするような興奮を感じさせられる。まるで宇宙論のような未知で不思議な興奮に似ていると感じる。

    650頁越えの大作で読みきるのに結構時間がかかった。手を止めて思考に落ち考えていて楽しめる作品だったから。
    それが極上の興奮を知的に刺激させられる、自分にとってはとても満足度の高い作品だった。

    佐藤究さんの作品はこの先も読んでいきたい。次は「QJKJQ」を。

  • 1Q84O1さんにおすすめいただいて!
    今作の佐藤究さんは類人猿から原生人類への進化がテーマ。今まで興味持ったことないテーマだったけど、めちゃくちゃ好奇心が掻き立てられた。

    本当に鏡の理解から人類が進化したってこともあるのかも、と後半は鳥肌が立った。
    『テスカトリポカ』同様に、鏡、太陽、光が大きなキーワードになっていて、佐藤究さんの根底にあるモチーフなのかなあなんて思う。

    『テスカトリポカ』が自分にどハマりすぎたのもあるけど、『Ank』より『テスカトリポカ』の方がより予測不能なエンタメに進化している気がして、それもすごいと感じた(Ankも十分傑作なのに!!)。
    佐藤究さん恐るべし。

    • 1Q84O1さん
      ロッキーさん、こんにちは
      『Ank』読まれたんですね^_^
      『Ank』も『テスカトリポカ』も最高ですね!
      っていうか、佐藤さんが最高です(〃...
      ロッキーさん、こんにちは
      『Ank』読まれたんですね^_^
      『Ank』も『テスカトリポカ』も最高ですね!
      っていうか、佐藤さんが最高です(〃∇〃)
      また良かったらその他の佐藤作品を読んでみてください♪
      2023/08/08
    • ロッキーさん
      コメントありがとうございます!!
      Ank、期待を裏切らない完成度で、面白かったです!
      佐藤究さん最高です…次は『爆発処理班の〜』かなと思って...
      コメントありがとうございます!!
      Ank、期待を裏切らない完成度で、面白かったです!
      佐藤究さん最高です…次は『爆発処理班の〜』かなと思ってます\( ˆoˆ )/
      おすすめありがとうございました!
      2023/08/08
    • 1Q84O1さん
      ロッキーさん、どんどんいっちゃってください!
      『爆発物処理班の〜』も気に入って頂けるとうれしいです(〃∇〃)
      ロッキーさん、どんどんいっちゃってください!
      『爆発物処理班の〜』も気に入って頂けるとうれしいです(〃∇〃)
      2023/08/08
  • 冒頭の、衝撃的な事件から幕を開けるこの物語は、断片をたどりながら、新しい事実が次々と明るみになっていく。
    京都「暴動(ライオット)」とも呼ばれた事件がどうして起こったのか。タイトルのAnkとは、a mirroring apeとは。

    1人の小説家が書いたようには思えない、世界の広がり方と、生物学、言語学、哲学と多くの分野をまたぐこのSFの世界観は、読む人を圧倒するだけでなく、もし自分が小説家になることを目指していたら、諦めざるを得ないほどの衝撃を受けました。

    登場人物の過去と現代を断片的に、交互に行きつ戻りつする構成は、最初は時系列にすればいいのに、と素直に思いましたが、読んでいるうちに、むしろこちらの方が伏線が見事に回収されていて、面白いと感じました。


    AI研究という、未来を作る研究から撤退した、ダニエル・キュイ。そして、人類と類人猿との違いを研究し、人類進化の謎を解こうとする、鈴木望。彼らが出会ったきっかけはなんだったのか。そして、そこから「暴動」へとどう繋がっていったのか。

    問に対する仮説が果たして正しいのか、そして結末がどうなるのか。500ページを超える長編にもかかわらず、まるで映画を見ているように、読み切った一冊でした。

    次は、西加奈子さんの「夜が明ける」を読もうかと思います。・・・積み上げられた本は、いつ消化されるのだろうか。

  • 読むのに時間がかかりそうだなぁと思いながら読み始めましたが、面白くて一気読みでした。
    もっと沢山の方に読んでほしい。

  • 佐藤究さんは私が激推しの作家さん。

    これもすごく面白くて、止められないけど終わってしまうのもイヤ、と葛藤しながら読みました(苦笑)

    佐藤さんの小説が面白いのは専門的な知識やデータの多さにあります。佐藤亜紀さんに近い面白さ。
    加えてアクション映画のようなスピード感とテンポの良さと、SFミステリーなどの要素。
    どうなるんだろう、とページを捲る手が止められなくなる面白さ。
    さらに、神話や伝承の古代をうまく取り入れているところもたまらない。
    あと、人種が幅広いところも良いです。スケールが広がります。
    そして、深いテーマがきちんとあって読む側に問うてくるところ。考えさせられるところが良いです。
    今回は人間について。
    明確な深いテーマ性は小説を骨太にします。表面的な小説はやっぱり薄っぺらい。

    とても良いフレーズがあったので抜粋。

    『友好度は知能と比例する』

    本当にその通りだと思う。
    だから人間は争ってはいけないのです。思い遣れるのが人間です。

  • 分厚さに尻込みして長い間積読になっていましたが、受賞のニュースで思いだし手に取りました。
    陳腐な表現ですみません。
    すごいです。この作家さん。
    冒頭から一気に引き込まれて、発生から終息までの描写と徐々に明らかになっていく計画の全貌。そして深い余韻が残るエピローグ。

    ダニエル・キュイが語った、8分19秒の意味は鳥肌モノでした。

    そして、物語で語られた、人を人足らしめるもの。
    見たいけど見てはならないものなのかもしれない。ヤタノカガミの様に。

  • 読みたかった一冊が、文庫に!!

    単行本版の情報を見ると、意外とレビュー数が少なくてちょっと驚いたのだけど、高野和明『ジェノサイド』でうはああ……ってアドレナリンが放出された方は、もっかい放出されるから。
    まだ、こんな切り口あったんかい!となるから。

    まず。霊長類研究と言えば、で京都が舞台になる所、個人的にはものすごいツボです。
    というか、今朝方、山極寿一とゴリラの話を聞いた所だからというのもある。

    この作品に登場するのは、チンパンジー。
    ゴリラもそうだが、チンパンジーと私たちの遺伝子上での差ってほっとんどないに等しいらしい。

    そして、このチンパンジーを研究していく上でぶつかってくるのが「鏡の謎」。
    人間が鏡を見ても、それは、鏡の中に自分が映っているんだということが分かる。
    でも、同時に鏡の中の自分は左右反転の虚像であることも分かる。

    昔、童話で口に肉を加えた犬が、水に映った自分の姿を見て、相手の肉を取ろうとして自分の肉を水に落としてしまうという話、あったなぁ。
    つまり、そこに映るはずの自分は、自分でないと認識するだけの種もいる。
    こうした鏡像の認識には、どんな意味があるのか。

    ストーリーはすごく面白かったのですが、京都暴動の描写が結構ハードで長い。読むのが辛い所もあったので、星を一つ減らしました。
    暴力的な描写が苦手な方は、気をつけた方がいいかも。

    単に出来事だけではなく、主人公やヒロインが鏡に執着を持つくだりや、京都が混沌としていく様まで、まとまりながら最後まで駆け抜けた感じです。
    (反対に、物語が進めば進むほど、もうこの終わり方しかないだろうなというのも分かって、ちょっと複雑ではあるし、伏線回収されたっけ?と思う箇所もあるのですけど)
    いやあ。『三体』と言い、最近SF強し。

  • おもろ〜。
    まずこんな大作をよく書ききったなと脱帽しました。
    京都でおこる大暴動。かなり痛々しい描写があるものの、混乱と恐怖が生々しく伝わってきました。
    さらに暴動が起きた謎に迫るパートも、難しいけど挫折すること無く没入できました。
    本当にヒトになる特異点が、ゲノム配列によるものだとすればかなり興味深いなと感じました。さらに、鏡が今作の鍵になるのもかなり面白い。
    いやあ〜作者の文章力恐るべし。

  • あらすじ
    2026年に人同士が壮絶な殺し合いをする京都暴動(ライオット)が起こる。それは細菌、ウイルス、汚染物質が原因でなく、ゾンビのようなものでもない。ただ発端はアンクという一匹の実験動物(チンパンジー)だった。

    佐藤究の良さは凄まじいリサーチ力とスケールのでかい戦闘シーン。この二つは高野和明の「ジェノサイド」級に面白かった。
    進化論と人類学を専門家レベルまで掘り下げて、(無知の私には研究論文を読んでるように感じる。)すごい奥行きがあるのと同時に歴史都市である京都を舞台にした戦闘シーンが秀逸だった。
    テスカトリポカもかなりの大作だったが、これはそれを凌ぐ作品。

  • うわぁ凄い...
    裏表紙にある通り、まさに超弩級エンタメ小説。

    謎の暴動の描写を挟み、過去と現在を行き来しながら人物の背景を描き、前提となる知識を読者に植えつける。

    そして3章でついに京都暴動が起こる。
    理性がなくなり、獣と化した人間たちの文字通り死に物狂いでの殺し合い。
    バイオレンスの描写はそんなに多いわけではないが、それでも狂気が存分に伝わってくる。

    だが、本書の最大の凄みはやはり4章で明かされる、"なぜ暴動が起こったのか"という点。
    「人類はなぜ言語を手に入れたか」という壮大な謎までも科学的見地から解き明かしていく。
    本物の研究者が見たらどう思うのかは定かではないが、少なくとも一般の読者は納得させられるだろう。

    迫力あるサスペンス、壮大な謎への見事な仮説、そしてその裏にある丁寧な人物描写。
    舞台となる街に「京都」を選んだことにも量り知れないほどのセンスを感じる。

    最初から最後までどこを取っても面白い読み応えのある傑作。


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著者プロフィール

1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。2016年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を、『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞、第165回直木賞を受賞。

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