- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065183601
作品紹介・あらすじ
「名前」ほど、日常にありふれたものでありながら不思議なものもない。自らをあらわす自分の名前さえ、ほとんどの場合、自分ではない他の誰かに付けられたものであり、死後まで自分の存在は、その誰かに付けられた名前によって語られることになる。なにより自分の名前は、自分で使うよりも他者から呼ばれることのほうが圧倒的に多い。最も身近で最も遠い、それが「名前」である。
「名前」をめぐる哲学は、西洋の形而上学では真理についての文脈で考えられてきた。初めて「名前」を哲学の対象にしたプラトン、アリストテレスにはじまり、その流れを受け継いだ二〇世紀のミルやフレーゲの名前論をひもとけば、伝統的な西洋哲学がいかに「名前」を厄介者としてきたのかが浮かび上がる。
ところが、ヴィトゲンシュタイン、ローゼンツヴァイク、ベンヤミンの三人の思想を解き明かしていくと、真理論の舞台から解き放たれて、名前の哲学はこれまでにない生き生きとした姿を見せはじめる。著名なジャック・デリダの三部作にかぎらず、先鋭的な名前論はなぜユダヤ系の思想家から生まれるのか――。その背景には、名前と同化をめぐるユダヤ系の人々の苦難の歴史があった。
外側から貼られた単なるレッテルではない、「呼びかける」ものとしての名前がひらく、新たな時代の共同体論。
[本書の内容]
まえがき 名前――もっともありふれた不思議なもの
第1章 名前の哲学史――古代ギリシアから二〇世紀まで
第2章 生活形式――ヴィトゲンシュタイン
第3章 対話――ローゼンツヴァイク
第4章 純粋言語――ベンヤミン
終章 名前の哲学が教えること
注
書 誌
あとがき
感想・レビュー・書評
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神の名は。
今まで食わず嫌いをしていた哲学。初哲学書?
いや、めちゃくちゃ面白かった。
言語と言葉と名前について。
名付けの意味と真理について。
ドイツ哲学(という呼称が適切かわからないが)をもっと読んでみたくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
西洋における「名前」の哲学の歴史を追いながら、ユダヤ系
の哲学者、ウィトゲンシュタイン・ローゼンツヴァイク・
ベンヤミンを経て、今までに考えたことのない「名前」に
ついての考え方へ導く。ウィトゲンシュタインまでは何とか
ついて行けたのだが、その後はなかなか咀嚼できなかった。
シンプルな哲学ではなく多分に宗教が絡んでいるからだろう
か。まだまだ勉強不足である。 -
名前がこれからとこれまでが交差する深淵だったとは。ポーランド語で学んだ呼格が、どれほどの深みを持っているのか。時間と人間社会について深く考えさせられた。ローゼンツヴァイクを読んでみたい。
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■0995. 2020.04.27
固有名詞の問題にはたいへん興味を惹かれた。