名前の哲学 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
3.67
  • (2)
  • (4)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 84
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065183601

作品紹介・あらすじ

「名前」ほど、日常にありふれたものでありながら不思議なものもない。自らをあらわす自分の名前さえ、ほとんどの場合、自分ではない他の誰かに付けられたものであり、死後まで自分の存在は、その誰かに付けられた名前によって語られることになる。なにより自分の名前は、自分で使うよりも他者から呼ばれることのほうが圧倒的に多い。最も身近で最も遠い、それが「名前」である。
 「名前」をめぐる哲学は、西洋の形而上学では真理についての文脈で考えられてきた。初めて「名前」を哲学の対象にしたプラトン、アリストテレスにはじまり、その流れを受け継いだ二〇世紀のミルやフレーゲの名前論をひもとけば、伝統的な西洋哲学がいかに「名前」を厄介者としてきたのかが浮かび上がる。
 ところが、ヴィトゲンシュタイン、ローゼンツヴァイク、ベンヤミンの三人の思想を解き明かしていくと、真理論の舞台から解き放たれて、名前の哲学はこれまでにない生き生きとした姿を見せはじめる。著名なジャック・デリダの三部作にかぎらず、先鋭的な名前論はなぜユダヤ系の思想家から生まれるのか――。その背景には、名前と同化をめぐるユダヤ系の人々の苦難の歴史があった。
 外側から貼られた単なるレッテルではない、「呼びかける」ものとしての名前がひらく、新たな時代の共同体論。

[本書の内容]

まえがき 名前――もっともありふれた不思議なもの
第1章 名前の哲学史――古代ギリシアから二〇世紀まで
第2章 生活形式――ヴィトゲンシュタイン
第3章 対話――ローゼンツヴァイク
第4章 純粋言語――ベンヤミン
終章 名前の哲学が教えること

書 誌
あとがき

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 神の名は。

    今まで食わず嫌いをしていた哲学。初哲学書?
    いや、めちゃくちゃ面白かった。

    言語と言葉と名前について。
    名付けの意味と真理について。

    ドイツ哲学(という呼称が適切かわからないが)をもっと読んでみたくなった。

  • 西洋における「名前」の哲学の歴史を追いながら、ユダヤ系
    の哲学者、ウィトゲンシュタイン・ローゼンツヴァイク・
    ベンヤミンを経て、今までに考えたことのない「名前」に
    ついての考え方へ導く。ウィトゲンシュタインまでは何とか
    ついて行けたのだが、その後はなかなか咀嚼できなかった。
    シンプルな哲学ではなく多分に宗教が絡んでいるからだろう
    か。まだまだ勉強不足である。

  • 名前がこれからとこれまでが交差する深淵だったとは。ポーランド語で学んだ呼格が、どれほどの深みを持っているのか。時間と人間社会について深く考えさせられた。ローゼンツヴァイクを読んでみたい。

  • ■0995. 2020.04.27
    固有名詞の問題にはたいへん興味を惹かれた。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1952年、熊本県生まれ。中央大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科博士後期課程中退。現在、中央大学理工学部教授。ドイツ・ユダヤ思想、ドイツ観念論専攻。著書に『対話の哲学』(講談社選書メチエ、2008年)、『ドイツ観念論』(講談社選書メチエ、2012年)、訳書にローゼンツヴァイクの諸著作のほか、ジェイ『アドルノ』(共訳、岩波書店、1987年)、カッシーラー『シンボル形式の哲学』(第3巻、共訳、岩波書店、1994年)、同『認識問題』(全5冊、共訳、みすず書房、1996-2013年)、ヘーゲル『ヘーゲル初期論文集成』(共訳、作品社、2017年)などがある。

「2019年 『新しい思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村岡晋一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
田中正人
劉 慈欣
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×