ヨーロッパ世界の誕生 マホメットとシャルルマーニュ (講談社学術文庫)
- 講談社 (2020年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065202890
作品紹介・あらすじ
「地中海世界」の没落と「ヨーロッパ世界」の誕生、その背後で決定的役割を果たしたイスラムへの着眼ーー。歴史家が晩年の20年に全情熱を傾けたテーマ。ピレンヌの集大成にして、世界的に参照され続けている古典的名著、待望の文庫化!
感想・レビュー・書評
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はるか以前から創文社版を積ん読のままだったのが、創文社の事業中止に伴い、今般、学術文庫として刊行されたことに感慨を覚えながら、改めて購入することとしたもの。
ピレンヌ・テーゼという言葉は知っていたが、本書を通読して、その内容が一応理解はできた。全体を通して、ローマ帝国及びその内海であった地中海の圧倒的な歴史的重みと、イスラム勢力の拡大がヨーロッパに与えた歴史的影響の大きさを、そのシャープな叙述で明らかにしているところが非常に印象的であった。
訳者あとがきにもあるとおり、本書は、綿密周到な「研究」を裏に潜めながらも、研究とは一応区別される「叙述」になっているところに、一般読者としては魅了された。ゲルマン民族の移動によってもローマ世界は連続性を維持していたのであり、それが断絶し、「ヨーロッパ」が誕生したのは、イスラム勢力により西地中海における交通が遮断され、経済的、通商的に大変動を来したことに由来することを、おそらくは膨大な社会経済史的な研究蓄積を背景に持って著者は明らかにしていく。
同じくフランク王国といってもメロヴィング朝とカロリング朝では国家政体が全然異なること、イスラム以前は東ローマ帝国が西方世界に対しても大きな影響力を持っていたこと、東方教会とローマ教会の対立、そしてヨーロッパ世界の確立に教皇庁の動向が重要であったことなどが、本書の叙述全体によって、立体的なイメージを持って理解できた。
おそらくは、著者以降の歴史研究の進展により、例えば商業の規模や貿易品の実態を始め各分野で異なる事実や史実評価が出てきているのかもしれないが、本書の面白さに変わるところはないと思う。
欲を言えば、文庫本として一般読者向けに出すのであるから、本書の扱っている時代が、ヨーロッパから中東に至る500年以上の歴史を扱っているので、年表は付けてもらいたかった。また、人名索引は付いているが、あまり馴染みがないので、王朝各王の系図と在位年が分かる表は欲しかった。
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複雑。とても細かいところまで書いてあるけれど、理解が追い付かなかった。自分が歴史のどんな部分を掘り下げたいと思っているのか少しわかったような気がするので、その点は良かった。
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すごく面白かったけど高校教員がピレンヌ・テーゼをインストールしたいだけなら『中世都市』だけもいいかも
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ずっと前に買ったものの手が付かないで放置していたが、ふと読んだら大変面白く、一気に読んでしまった。地図がもっとあるといいのだが。
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https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/768321