ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
3.42
  • (22)
  • (60)
  • (61)
  • (24)
  • (4)
本棚登録 : 1004
感想 : 83
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065266595

作品紹介・あらすじ

誰も見ない書類をひたすら作成するだけの仕事、無意味な仕事を増やすだけの上司、偉い人の虚栄心を満たすためだけの秘書、嘘を嘘で塗り固めた広告、価値がないとわかっている商品を広める広報……私たちはなぜ「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」に苦しみ続けるのか? なぜブルシット・ジョブは増え続けるのか? なぜブルシット・ジョブは高給で、社会的価値の高い仕事ほど報酬が低いのか? 世界的ベストセラー、デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』の訳者による本格講義!

【目次】
第0講 「クソどうでもいい仕事」の発見
第1講 ブルシット・ジョブの宇宙
第2講 ブルシット・ジョブってなんだろう?
第3講 ブルシット・ジョブはなぜ苦しいのか?
第4講 資本主義と「仕事のための仕事」
第5講 ネオリベラリズムと官僚制
第6講 ブルシット・ジョブが増殖する構造
第7講 「エッセンシャル・ワークの逆説」について
第8講 ブルシット・ジョブとベーシックインカム
おわりに わたしたちには「想像力」がある

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 原本の解説的な本。とするのであれば、もう少し平易な感じで書かれていてほしかった。

  • ブルシット・ジョブそのものを読んでないのだが(価格で二の足を踏んでいた)、その概要がとてもわかり易く説明されていた。
    全く関係ないのだが、この概念の理解と共感にとても役に立った概念が『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日記』の「人間病」と称された概念で、なんというか、学びというのはリレーショナルなんだなと改めて思った。
    過剰な自律であり、分不相応な自己抑制であり、良く在ろうとするご気分と、良く在るべきだという社会的な同調圧が、ブルシット・ジョブを生んでいる。
    そこで語られる「良さ」が本当に「良さ」なのか、誰も議論されず、誰からも疑われぬままに。

  • 賃金労働に対して過度に期待しないようになるという気が楽になる部分もありつつ、社会的な必要度合いや働く人間の満足度合いと対価は必ずしも釣り合わない仕組みを知ってしまう虚しさがある

  • まず、ちょっと勘違いがあった。仕事の中での無意味な作業を指しているのかと思って読み始めたが、職業というか職種そのものの話しだった。
    無意味な仕事が発生する原因について、いくつかあげていたが、時間給というか、雇った人の時間に対して対価を払うという考え方が、この無意味な仕事の発生源というのはなるほどと思った。要するに、お金を払うならなんかやらせないともったいない。
    自身がコンサルタントを名乗っており、まさにこのブルシットジョブに当たる。
    あと、人は、楽して儲けるというか、働くふりをしてお金を儲けることに本能的な忌避感があり、それを続けることで、病んでいくというのも、今の社会に鬱といったものがあることにもつながるのでは。
    また、作業の生産性について、よく日本が低いと言われているが、程度の問題こそあれ、海外でも発生しており、生産性なんていう尺度もあまり意味がなさそう。
    いわゆるエッセンシャルワークのほうがブルシットジョブよりも給与が低い傾向についての分析では、価値の低い仕事をしている人びとの嫉妬が一因になっているというのはそういうこともあるかもだが、ちょっとやっぱり海外も同じというところに意外な感じがした。

  • デヴィッド・グレーバー氏の「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の論理」を訳し、またグレーバー氏の著作の多くを翻訳しておられる酒井隆史さんの著作。
    真面目に仕事をやっている多くの方々のために、この世界を本当に見直す道を探る本。ふざけたタイトルからは信じられない程の説得力を持ったグレーバー氏の原作をその思想の本質を掴み出しながら教えてくれる。
    とにかく分かりやすい。
    勢いに乗ってオリジナルも読んでみるか。

  • 幸せとは何か?そして、何のために仕事をするのかを個人個人が考えなければならないし、価値観を転換しなければならない。
    企業も、目的が何かを考えそこに向けた人員配置や仕事の割り振りが必要だろう。
    社会全体でブルシットジョブを減らしていけたらいいな。

  • ブルシット・ジョブという問題提起は随分前から気になっていたが、原文のグレーバーのものは量も凄いし、価格も高いので放置してきたが、訳者の一人が安価な入門書的な本書を出してくれたのでとりあえず読んでみた。
    正直、ブルシット・ジョブは社会人なら薄々は気づいていた問題意識である。なんか「⚫︎⚫︎マネージャー」という肩書きの人多いなとか、何しているかよくわからない総務人員多すぎないかとか、「コーポレート部門」とかよく分からない横文字の部署あるなとか…それを言語化して掘り下げた点は素晴らしい。ただ、読み終わって思ったのは、結局、資本主義社会でもある以上、ブルシット・ジョブはなくならないよねってこと。
    グレーバーも指摘している通り、ブルシット・ジョブは本当に無益で有害だと思う。何とかマネージャーが増えたり、部署が増えて管理体制が複雑になるにつれ現場の人間からすれば能率・効率が下がる。今まで直接指摘・指示できていたものが、一旦その何とかマネージャーを通さなければならないとか、どこに言えばいいのか分からないとか手続きの煩雑さ時間が増す。リターンも遅いし、なぜか大事になる。じゃあもう言うのやめようってなる。ブルシット・ジョブについている人間からしても自分の仕事の価値が分からず、さらに板挟み状態になってストレスを抱える。誰も得しない。そんなことは百も承知。でも、なくならないし、寧ろ増えている。それは、資本主義が常に経済的上昇を目指している形態だからに他ならない。経済的上昇を目指すには組織を拡大する必要があり、それに伴いよく分からない管理ポストが増大するのは自明の理。
    グレーバーは1つの解決策として、ベーシックインカム(BI)の導入を掲げている。理想としては素晴らしいと思う。ただ、社会主義が結局崩壊したのと一緒で理想論でしかないと思う。BIを導入すれば、ブルシット・ジョブはなくなり、必要なエッセンシャルワーカーの賃金は上がり、人々は自由時間をジョブ以外の余暇に、幸福度をあげる活動に充てる…そんなわけない。現在でも生活保護受けている人がそれで満足しているか、社会的によしとされているかと言えばそうではない。それが人間である。
    寧ろ、1つ示唆に富むのが、中世以前の近代では労働・仕事はタスク指向(つまり、成果主義・請負や委任的性質)だったものが現代では時間指向(労働時間制)になったのが要因の1つとして挙げている。また未開社会では生きるために必要な労働しかしない(ある意味動物本来の形)という例も挙げられている。
    つまり、今の資本主義制度が自然・動物的にはおかしい、異質なのである。それゆえに必要のない無益で有害なブルシットジョブが量産されていく。なので、解決策が原点回帰ではないが、皆が時間に縛られないタスク指向性の仕事をするか、未開社会のように日々生きるためだけの仕事をするしかない。そこには無駄な労働がない。
    でも、安定性に欠ける。だから今の資本主義・時間指向性が確立しているともいえる。
    結局、堂々めぐりで、ブルシット・ジョブはない方がいい。でも、今の社会システム上、ある意味「必要悪」。なくなることはない。嫌なら個々人が辞めるなどして対策を取るしかない…というのが本書を読んだ感想かな。

  • 『ブルシット・ジョブ』の日本語版訳者による解説本。何せ「ブルシット・ジョブ』が高くて厚く、ちょっと手が出なかったので、その意味では大変ありがたい。
    ただ、サブタイトルにある「クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか」には答え切れているように思えなかった。社会学的アプローチ(社会学者の方なので当たり前だが)で、歴史文化の観点からの説明に偏っている感がある。もっと数字を使った検討も欲しいと思ってしまうのだが、経済学との壁も感じられた。学術の派閥みたいなのもあんのかな…笑

    #夏の読書感想文

  • 「他者ないし社会への貢献度が高ければ高いほど報酬が低く、貢献度が低ければ低いほど報酬が高くなる」謎。これが「(1)労働は人間に与えられた罰であり、人間にとっては苦痛であるという観念(2)労働は無からなにかを生み出す創造であろうという観念(3)労働にはそれ自体で価値がある、しかもそれはモラル上の価値であるという観念」によるものではないか、との考えは興味深い。「やりがいのある仕事です」と謳う求人広告に応募すべきではないのだろう。タイトル通り、謎の解明には役に立ったが、それに悩む人間の解決には役に立たなかった。

  • 『ブルシット・ジョブ』サイズで酒井隆史が新書サイズでまとめた感じ
    そもそもグレーバーの段階で、どれをブルシット・ジョブにするのかの論証はこれでいいんか?という感じはあった

全83件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1965年生まれ.大阪府立大学教授.専門は社会思想,都市史.
著書に,『賢人と奴隷とバカ』(亜紀書房),『ブルシット・ジョブの謎』(講談社現代新書),『完全版 自由論』(河出文庫),『暴力の哲学』(河出文庫),『通天閣 新・日本資本主義発達史』(青土社)など。
訳書に、デヴィッド・グレーバー+デヴィッド・ウェングロウ『万物の黎明』(光文社),デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』(共訳、岩波書店),『官僚制のユートピア』(以文社),『負債論』(共訳,以文社),ピエール・クラストル『国家をもたぬよう社会は努めてきた』(洛北出版)など.

「2023年 『四つの未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

酒井隆史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×