ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • オーディブルで聴了。あの大著の解説本かな。これで本編に挑めるか?

  • 自分の職場にも思い当たる節があり、読了。

    タイトルほど過激な書きぶりはなく、BSJについて学術論文にも触れながら深い考察が展開され、最後までテンポよく読めた。

    世界の潮流として、約100 年前に労働組合が組織されたが、彼らの要求は賃上げよりも「労働時間の短縮=自由時間の獲得」だったという。しかし、その後の技術革新で生産性が向上したにも関わらず、庶民の労働時間はそこまで減少していない。この事象について著者は、「ひたすら穴を掘って埋めている」と表現していて、思わず笑ってしまった。実際にそのような経験をしたことが何度もある。

    ブルシットジョブ(BSJ)について、本書では「完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある雇用形態」と定義している。ここまでストレートに文字化されると気持ち良い。

    上記の定義を前提として、BSJの特徴として「そうではないと取り繕わなければならない」場面があり、その原因としてマネジリアリズム(経営管理主義)イデオロギーがあるという。確かに、官僚的な組織構造のマネジメントにおいて、「取り繕う」場面は容易に想像できる。

    また、とあるエピソードで、楽で給与も高い「おいしい仕事」に就いた青年が、悩んだ挙げ句に仕事を辞めてしまう。その理由は「完全に”目的がない”状態で生きることの辛さ」や、仕事をしている「フリ=欺き」に対するストレスがあったから。

    確かに、自分が「何でこんな事に時間をかけないといけないのか」と感じる作業は本当にストレスフルである。認知的不協和を発生させる。

    日本は特に、ヒエラルキーのためのヒエラルキーを好む性質や、閉鎖的な文化であることからBSJ が発生しやすいと書かれている。特に、その「ゲームから降りることができない=簡単に”辞めてやる”と言えない」雇用形態が、原因としてあるのではと思う。

    ただ、本書を読む限り、BSJは世界の名だたる先進国でも蔓延しているようで、決して日本の組織で突出している訳ではないことに少し安堵感を覚えた。

    狩猟採集民、ノマドワーカー、フリーランス・起業など、BSJから抜け出す術はあるのだろうが、そんな仕事から受けるストレスを上手く交わしつつ、相応の報酬を得て人生を楽しむ。そんなスキルもまた、現代社会で幸せに生きるためのコツだと最近は思えるようになってきた。

  • 「ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論」デヴィッド・グレーバー著を翻訳者でもある著者が分かり易くかみ砕いたのが本書との触れ込みですが、米国の文化をベースとした文脈そのままで要約してある印象で、あまり分かり易くなっているとは思えない読後感でした。ただし、「東京オリンピックで電通とかパソナに金をばらまいて、必要な仕事はボランティアを募ってまかない、医療従事者にはなけなしの報酬しか払わなかった。」との一節はとても印象に残りました。ここで思ったのはむしろブルシット・ジョブというよりプルシット・ビジネスと捉えたほうが良いのではと思いました。プルシット・ビジネスとは単なるピンハネとか効果が定量的に測れないことを効果があるように思わせることで対価を得るとかかな。他にもありそうです。

  • デヴィッド・グレーバーさんの「ブルシット・ジョブ」の翻訳者による解説書。

    グレーバーさんが定義した5類型の詳細と、便利になっているはずの現代社会において、なぜブルシット・ジョブが増え続けるのか?の背景を解説している。

    そこには、たとえ「穴を掘って埋める」ようなブルシットなジョブでも「雇用を生むこと自体を良し」とするマクロ経済の観点と、新自由主義が格差を拡大させているが故に富裕層が「脅し屋」にもっと集金させ、さらに多くの「尻拭い」を必要とし、「取り巻き」と「書類穴埋め人」の数の多さを自慢し、「タスクマスター」がさらなるブルシット・ジョブをバラマいて使役させて優越感に浸る、という何とも邪悪なサル山ヒエラルキーがあるという。

    こうしてブルシット・ジョブに巻き込まれてしまった人々は高給(あるいは安定)と引き換えに疲弊し、心に闇を抱える。そして低給のエッセンシャル・ワーカーらが労働条件カイゼンを訴えた時には「直接的にお礼を言われるので十分でしょ!やりがいある仕事できているんだから幸せと思いなさい!」とディスったり、コンビニ立ち寄る警官やクラブ活動を外部委託する学校に「ちゃんと仕事しろよ!」と怒ったりしてしまうのである。

    先進国の労働環境に充満するこのギスギスした空気感はブルシット・ジョブだけが理由でないにせよ、その一端は担っているように見える。

    僕はBtoBプラットフォームを運営しているので、この負の連鎖への処方箋まで読みたかったが、デヴィット・グレーバーさんが亡くなった今、この論点の先に議論を展開するのはすぐには難しいのかもしれない。

    自分の組織については「心理的安全性」や「1on1」といった手法で目を配ることはできるかもしれないが、BtoBプラットフォームで何かしら作用できることはないか?と思うと立ちすくんでしまう。労働人口が減り続ける日本においてブルシット・ジョブに浪費されている労働力がもったいないのは言うまでもないが、何よりこの人たちの労働意欲の削がれ方がエグすぎる。

    ーー生成AIと壁打ちしてみるか。

  • 人類学者のデヴィッド・グレーバー さんが提唱した「ブルシット・ジョブ」を翻訳された著書が、別に書いてくれた解説本。
    勉強になったことは、下記の2点
    ・それをしている自分自身も価値がないと思っている
    ・ブルシットジョブは精神を蝕む

    特に2番目は納得で、私自身も誰の役にも立っていないのではないかと思うといくら給料が高くてもモチベーションが下がってストレスが溜まってしまう。
    これだけ高度の発達した社会なのに、仕事がなくならないのは、無理やり仕事を作っているから、効率的にと言えばどこか資本主義の権化っぽく聞こえてしまうが、もっと手を抜けるところは抜いてもいいんじゃないかと思う。
    労働時間で契約が決まっていることが多いせいか、ゆっくりと時間をかけて、さらには残業してまで頑張っている感を出した方が評価が高いような印象を受けてしまう。

  • 「この仕事なんのためにあんの、マジでクソ」と脳内でぼやきまくっているあなたに。
    【あってもなくてもクッソどうてもいいしそれどころかダメージをもたらす仕事】=ブルシットジョブ。
    100分de名著を見てからずっと読みたかった本をようやく読み終えましたがとても面白かった。

    筆者が適宜説明や日本ではという身近な話題を挟んでくれるから、経済とか社会とかに明るくない自分にも楽しく頷きながら読み終えることができた。

    昔はすべきことをやればよかった「タスク指向」だったのに、決まった時間仕事をしなければならない「時間指向」に変わったこと。

    仕事で奉仕しやりがいを得ることそのものに価値が見出されたばっかりに、エッセンシャルワーカーが待遇改善を求めると敵視されてしまうこと。(教師のバトンの大炎上にも触れられてた)

    人間は放っておくと怠けるから仕事を与えなくては行けないというシステム(非行に走らないために部活で束縛する学校の仕組み)

    なんだろうね。こんな社会に誰がした。でもこれを読む前と後では「仕事」や「労働」に対しての考え方が変わると思う。新しい知見を得た感じです。
    まあ、解決策がベーシックインカムなのかはまだ悩ましいところだけれど。でも他の解決策は浮かばないや。

    読んでよかったです、おすすめ。

  • 現代社会で「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」が増え続ける背景を解説した本。

    世界的なベストセラー『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』の訳者が書いたもの。『ブルシット・ジョブ』の副読本的な役割となる一冊。

    本書は仕事とは何か、社会とは何かを考えさせます。

  • 『ブルシット・ジョブ』の副読本的なもの。
    資本がおおきくなり会社が雇用を増やせば増やすほど、ブルシットジョブは増えてしまうんだなあ、ということをジワジワ伝える本。
    自分がこれまでやってきた仕事はブルシットジョブではない、と思いたいところだけど、100%ではないにせよ、本書で触れられているような事象・精神構造にあったことはある。むう…

  • 週休増やそうよ。ベーシックインカムもあげよう。ということをイメージ主体で論じ、実際の解決についてあまり立ち入っていない、思った以上に細かくない本でした。実例を挙げての説明にも正直あまり共感できず、乱暴な論調も多いと感じました。やっちゃえば介護とかの3K労働は高待遇になるし、ホワイトカラーは賃金0になる、それでも彼ら働くよ、と最後にポンと言っていましたが、さすがにちょっと‥。でも発想がとても根本的で、そこは好きです。

  • ・完全に無意味で不必要で有害でさえある仕事
    ・詐欺師にはまだ創意工夫など主体性の発揮がある
    ・受動的に場当たり的に取り繕う
     たとえそうであってもそうではないと取り繕わなければならない
    ・取り繕いがもたらすのが、ごっこであり空気
    ・各人の能力に応じて、各人にはその必要に応じて

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著者プロフィール

1965年生まれ.大阪府立大学教授.専門は社会思想,都市史.
著書に,『賢人と奴隷とバカ』(亜紀書房),『ブルシット・ジョブの謎』(講談社現代新書),『完全版 自由論』(河出文庫),『暴力の哲学』(河出文庫),『通天閣 新・日本資本主義発達史』(青土社)など。
訳書に、デヴィッド・グレーバー+デヴィッド・ウェングロウ『万物の黎明』(光文社),デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』(共訳、岩波書店),『官僚制のユートピア』(以文社),『負債論』(共訳,以文社),ピエール・クラストル『国家をもたぬよう社会は努めてきた』(洛北出版)など.

「2023年 『四つの未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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