地球の中身 何があるのか、何が起きているのか (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065266601

作品紹介・あらすじ

物理・化学・生物学を総動員し、地震波観測・理論的考察・高圧高温実験を組み合わせ、地球の中身とその歴史の謎を解く! ターゲットは地表から深さ6400キロの中心部まで、現代から46億年前の地球誕生まで。
世界で初めてマントル最下部の主要鉱物(ポストペロフスカイト)を実験室でつくりだした著者が、地球科学の最前線へと誘う!

宇宙に浮かぶ大きな球体である地球――わたしたちはその表面の様子しか見ることができない。しかし、科学の進歩が「地球の中身」の理解を可能にした。

・地球内部にはどのような物質が詰まっているのだろう?
・その物質はじっと同じ場所にとどまっているのだろうか?
・誕生したばかりの地球の中身はどんなふうだったのだろう?
・なぜこの惑星には海があり、生命が繁栄できたのだろう?

地球科学は答えを見つけつつある。
マントルには色とりどりの鉱物があり、その下には液体の鉄の層がある。それらは沈み、浮かび、動き回っている。そして、地球深部の現象が地表環境――海があり、生命が活動する場所――に大きな影響を与えていることがわかってきた。
答え合わせだけでなく、謎解きのプロセスを知ることで、さらなる謎まで見えてくる。あなたの「地球観」を一変させる一冊。

【目次】
序章 地球の中に潜る前に

第1部 現在――地球は何でできているのか? どんな活動をしているのか?
第1章 地球を覆うもの――大気、海、地殻
第2章 地球の白身――マントルは何でできているのか?
第3章 地球の白身は動き回る――プレートテクトニクスとマントルの対流
第4章 地球の黄身――コアの構造と運動
第5章 白身と黄身が殻を決める――3つの層の相互作用

第2部 過去――「生命の惑星」はどうやってできたのか? どのように進化してきたのか?
第6章 はじまり――地球誕生からマグマオーシャン、生命の誕生まで
第7章 進化――地球の過去を復元する
第8章 謎――地球はどうして生命を宿すことができたのか

感想・レビュー・書評

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  • 壮大なスケールで世界を見直すきっかけになるような本。読んで良かった。意味もなく、読後、空を見上げる。小さな自分もこの宇宙に繋がっていて、この広い宇宙のどこかに必ず生命がいるだろうと、そんな空想に耽る。

    地球の中身は大きく3つの層、地殻、マントル、コアに分けられる。地殻は卵の殻、マントルは白身、コアは君のようなもの。地殻とマントルは岩石、コアは金属のかたまり。コアの外核は液体、内核は固体だが、どちらも鉄。

    距離感を数字で掴む。人類が地球に開けた最も深い穴の深さは12kmで、地球の中心までの距離のわずか0.2%に過ぎない。地球の中心までは6400km。エベレストの標高が8.8km、最も深いマリアナ海溝の水深10.9km。飛行機の高さは、約10km。国際宇宙ステーションが存在する熱圏は高度 400km。地底人を想像した映画や漫画が作られる程、その距離の差にロマンがある。

    岩にも詳しくなる。初期の海は塩酸や硫酸などを多く含み酸性だった。この酸性の海水が岩石のナトリウムを溶かし出して塩濃度が高くなった。地球を代表する岩石の1つが花崗岩。マグマがゆっくり冷え固まってできる。花崗岩ができるのは水のある惑星。もう一つの岩石が玄武岩。マグマは急速に冷え固まってできる。富士山を作っているのも玄武岩、ハワイの溶岩も玄武岩。玄武岩は月にも火星にも太陽系内の岩石でできた天体の表面には必ずあるもの。月の黒い部分、うさぎに例えられる部分は玄武岩。白い部分は、斜長石と言う鉱物を主体とする斜長岩。世界で最古の岩石、片麻岩。

    木星の衛星には表面が厚い氷で覆われていてその内側に海があると言われている。土星の衛星も表面が氷で覆われていることが確認されていて、冥王星の内部にも海があることがわかってきた。地球の生命とは異なるセントラルドグマ。その海に、生命がいたりするのだろうか。これが、何故かノスタルジックに読後の余韻となった。

  • 想像もつかない超高温、超高圧の下での物性を知ることで、サンプルが取れないコアの組成まで論じることができているのに感動する。そして、そのことは生命発生にも関係してくるかもしれない。わかりやすい説明で知的興奮を引き出してくれたことに感謝。

  • 地球の構造について、もちろんざっくりとは知っていたのだが、さらに研究が進みいろいろと明らかになっていることを改めて知ることとなった。地球のコアに匹敵する超高圧・超高温を再現する実験が日本で行われ、この研究分野をリードしていることに驚き、地球の中身を考えることが地球の生い立ちとこれからの未来を考えることにつながり、ひいては生物、そしてわれわれについて考えることにつながっていることに興奮した。海がプレート運動に大きな役割を果たしていることや、地磁気が大気の散逸を防いでいることなど新しい知見も多かった。良書。

  • タイトル通り地球の構造を解説した地学の本かと思っていたが、それだけではなかった。第1部の「地球は何でできているのか?」に続く第2部「「生命の惑星」はどうやってできたのか? どのように進化してきたのか?」では、なぜ地球に生物が生まれたのかと生命科学と宇宙論まで広がる。
    一人の著者が新書版で書かれたとは思えない幅広さ。大事なことは繰り返し説明するなど一般人向けに丁寧に解説してもらえるのもありがたい。
    地球は太陽からエネルギーをもらう冷たい大地、そんなイメージとは正反対。内部でエネルギーをやりとりし、今も姿を変えていく、まるで生きているかのようにダイナミックであることに驚いた。

  • 好奇心がくすぐられる題名。わくわくしながら読みました。

    本書は半径6,400kmの地球の中身を最新の研究で論じる学術的な科学読み物。地球を表面から見ると岩石から成る「地殻」と「マントル」があり、中心には鉄でできた「コア」があります。子どもの頃から、どうしてそんなことがわかるんだと不思議に思っていました。実際、人類が地球に開けたもっとも深い穴の深さはたった12kmですから、地球の中身の観測は不可能です。
    中身を知るのに地震波のP波とS波の習性を利用することは聞いたことがあります。ただ、それだけでは地球の深部を構成する岩石はわかりません。そこで「高圧高温実験」が登場します。たとえば、上部マントルの底近辺、深さ410kmの環境は、圧力15万気圧、温度本書1500°Cです。高圧高温実験とは、上記の環境を作り、その環境での岩石を「人工的に作って」しまおうというもの。
    著者の廣瀬敬さんの専門は高圧地球科学、地球内部物質学。実際、マントル最下部の主要鉱物ポストペロフスカイを作り出した実績を持ちます。したがい、説明がわかりやすいだけでなく、好奇心も刺激されぐいぐいと本書に引き込まれました。
    地球内部の各層は複雑な構造をもち、動き回っています。そして本書は地球をひとつのシステムとし、海の存在→プレート運動→外核の対流→磁場の形成→大気の保持→海の維持を説明します。磁場があるから地球は宇宙線から保護され、大気や海が保持されるという一連のシステムにより、地球内部の動きにより生命が維持されていることが理解できます。
    本書の後半では、地球の誕生プロセスと初期の地球に起きたイベント、すなわち火星サイズの天体との衝突(ジャイアント・インパクト)や地球全体を覆ったマグマの海(マグマオーシャン)の形成、コアとマントルの分離(コアの形成)などを紹介しながら、他の惑星との相違、そして地球の生命の誕生も論じます。地球だけでなく、火星や金星の中身まで推理するスケールの大きな内容です。

    何度でも読み返したくなるようなブルーバックス。「できれば近い将来、地球の深部の姿から太陽系における地球の起源を明らかにして」続編を書きたいとあとがきにあります。これは期待してしまいます。私自身がボケる前に是非読みたいです。

  • 地球科学がどこまで進んでいるのかをまとめて教えてくれる流石ブルーバックスな一冊。プレートテクトニクス論について知りたくて読んだのだけど、他も色々面白かった。高圧高温実験によって、地球や他の惑星の成り立ちについてこれだけわかってきているのだなと新鮮な気持ちで読めた。

  • もりだくさん
    面白かった

  • 450-H
    閲覧新書

  • 請求記号 450/H 72/2192

  • 地球の中身は、地殻、マントル、外核、内核と分かっているつもりだったが、本書は大気や海を含め、プレートテクトニクスや熱対流・組成対流といった物質の動き、そして、地球誕生から現在までの歴史についても、最近の知見に基づいて解説されている。中でも、著者の専門分野である超高圧・高温下における物質の組成変化など詳しく記されていて面白い。それに、外核が液体金属であり、その動きによるダイナモ効果で地球磁場が存在することは知っていたが、外核内の液体金属の動き方など初めて知ることも多かった。
    本書によれば、現在のような生物が存在できる惑星の条件は限られているが、これも永続するものではなく、何らかの原因による地場の消失とか、それによる大気の消失とかを考えると、中々に貴重な環境にあることが実感される。

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著者プロフィール

1968年生まれ。東京大学理学部地学科卒。同大学博士課程修了。東京大学地球惑星物理学科教授。高圧地球科学者。2011年、日本学士院受賞。東京工業大学地球生命研究所所長・教授などを経て現職。

「2022年 『地球を掘りすすむと何があるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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