平安京の下級官人 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065270318

作品紹介・あらすじ

長年昇進を望みながら叶わなかった下級官人。宮廷を襲った疫病。闘乱に明け暮れる人々……。古記録から平安京の息吹を伝える一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 平安時代の摂関期での、平安京での下級官人について、
    古記録から拾い上げ、その仕事や生活等を紐解く。
    ・初めに
    序章 摂関期の平安京
    第一章 下級官人の仕事 第二章 生活のあれこれ
    第三章 恐怖の対象   第四章 平安京の人びと
    ・おわりに 平安京の日々
    略年譜、関係地図(平安京内)、関係地図(平安京外)、
    平安宮大内裏地図、平安宮内裏地図、参考文献有り。

    『本朝文粋』『池亭記』『権記』『小右記』等の古記録に、
    僅かながら残る摂関期、平安京での下級官人の姿。
    五位以上の貴族と、六位以下の下級官位や無位の人々との
    大きな格差。更に、下級官人の家に生まれたら、
    ほぼ下級官人にしか任じられない現実がある。
    上司と人事との駆け引き、先例が重い儀式や儀礼、
    それらの中での縁の下の力持ちとしての存在にとっては、
    途轍もなくしんどい仕事だと思われます。
    だからこその捺印漏れやミス、儀式での失儀はあるし、
    やってられないよ~と怠勤したり、ずる休みしたり。
    でも、怠状・過状(始末書)を提出して謹慎してれば、
    赦免されることが多かったそうな。
    学者や相撲人、競馬の騎手や射儀の射手、大工等の悲喜こもごも、
    遊興や博奕、男女の関係、信仰などをも紹介しています。
    更に、貴族のストレスが下人にも広がり起こる事件有り。
    貴族の権力闘争が及ぼす合戦。
    下衆、学生、女性、僧の闘乱。うわなり打ちも。
    殺人事件、様々な形態の盗賊たち、下人や雑人たちの闖入。
    朝廷に寄せられる下級官人や百姓の愁訴。
    そして庶民の貧窮と「貴人の義務」。
    政府を壊滅状態にした疫病、数々の災害と人命。
    平安?と感じるほど大変な平安京ですが、
    多分、庶民はしぶとく生き抜いたと思いたいなぁ。
    穢を忌み儀式をどうするかに重点を置くことは、
    「現代語訳吾妻鏡」を読んでいると、鎌倉時代は平安時代の
    延長線なのだなぁとも、しみじみ感じました。

  • 生まれ変わっても平安時代には行きたくないなと思うくらいには理解出来ました。大学受験の日本史レベルの知識とよくわからない単語(固有名詞)をスルーする能力さえあればなかなか面白く読めると思います。

  • 学校で習う平安時代の作品は、大体が王朝を舞台にした文学なので、平安時代って雅ー!なイメージがどうしても、ある。

    でも、筆者の言うように、平安時代に生まれ変わったら、下衆•下人になると思うよ。という指摘は、誠にごもっともで、ちょっと笑ってしまった。

    ただし、そうは言っても資料を基にするわけだから、一般民衆の暮らしではなく、下級官僚が中心の話になってしまうんだよなー。

    有職故実、職業、事件、災害といったカテゴリーから見ていく一冊。ポイントで知りたい人にはオススメ。

  • 膨大な資料から「ジャーナル」を集積、とにかくその量が多い。

  •  平安時代の下級官人の置かれていた状況、人事への一喜一憂やその勤務振り、生活の実相を、「古記録」を用いて明らかにしようとするもの。

     摂関期になると下級官人が昇進できるのは限られたポストまでとなってしまっていたが、役人にとって人事は何よりも重要。悲喜こもごもが語られる。また、この時代何よりも求められていたのは、儀礼という政務を「先例」、次第通りに行うことで、ここでも失敗の例が残されている。
     その他、闘乱、殺人、勤務の懈怠など様々な出来事が紹介される。もちろんこうした古記録に書かれる出来事は、珍しいと思われるからこそ記録に残されたのであろうが、それにしても驚かされるようなことが次から次へと出てくる。特に内裏への闖入が結構あったというのはどうなのだろうか。警備の懈怠ということのようで、本来厳罰ものだと思うのだが、どうだったのだろう。

     いろいろな事例により当時の様子も分かり興味深かったのだが、どうしてそのようなことが起こったのか、それにはどういう背景なり意味があるのかが良く分からないままに多くのエピソードが紹介されるので、ちょっと消化不良になってしまったのが残念。

  • 下級官人の業務・日常・取り巻く社会を御堂関白記・権記・小右記などの記録から導き出している
    そこかしこに実資(大河ドラマではロバート秋山)の名前がでてくる、日記にマメな貴族さん
    興味深かったのは、触穢に対するこだわり(本朝独特の忌む風習)は疫病と関係あるのではないか、天然痘等の最悪の死を前提に考えると忌引き等で出仕を一定期間憚る事が自然に思える
    当時は天然痘は大部分の人がり患していて、顔にアバタがある事がデフォであり、鉱物性の化粧品で白く厚塗りをしていた理由もうなづける
    【疫病の流行】疱瘡・麻疹など
    989、993、994、995、998、999、1000、1001、1005、1008、1014、1015、1017、1018、1020、1021・・・延々と続く疫病の流行

  • <目次>
    序章   摂関期の平安京
    第1章  下級官人の仕事
    第2章  生活のあれこれ
    第3章  恐怖の対象
    第4章  平安京の人びと
    おわりに 平安京の日々

    <内容>
    平安期の貴族の日記をベースに、当時の教科書レベルよりも下の人びと=下級官人を主人公に、彼らの生き方を見ていく本。ちょっと単調で飽きるところも。まあ、記録上、登場人物が連続で出てこないので、しょうがないのかもしれない。 

  • 作り話が入らなそうな記録のみを参照している本で、時代としては摂関政治全盛期頃、となると権記や小右記からの記録が多い。(本当に、実資さんの記録てすごいんだな…)
    殿上人の記録なので、宮中の話題が多いけれど、その中でも五位あたりのギリギリ殿上人な皆さんや、殿上人の家人の皆さんが話題の中心。
    あと、まあ引用がそれなので、道長周辺の話題は多い。
    とりあえず、平安京治安悪い。本当に治安悪い。そういう話題が多いから、清涼殿の割とそばで事件とか、まー治安悪い。
    帯にあったけど、清少納言のお兄様は殺人事件の被害者なのね…

  • 2022/02/27 amazon 869円 p261

  • 摂関期の平安京に生きた下級官人や庶民の仕事や生活を巡る様々なエピソードを一次史料を基に紹介。
    平安時代の人々の生き様が知れて面白かったが、いろんな話を盛り込みすぎで、それぞれの記述が簡潔なので、エピソードの背景や詳細がよくわからないものが多かった。

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著者プロフィール

1958年、三重県津市生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学。主著に『平安朝 皇位継承の闇』『皇子たちの悲劇』(角川選書)、『一条天皇』(吉川弘文館)、『蘇我氏』『藤原氏』『公家源氏』(中公新書)、『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(講談社学術文庫)、『藤原道長の日常生活』(講談社現代新書)などがある。

「2023年 『小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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