- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065270707
作品紹介・あらすじ
本書が掲げる「クリティック」は、ふつう「批評」や「批判」という日本語に訳されます。しかし、それらの語では十分に表されない意味が「クリティック」には含まれていることを日本の知的世界は気づかずにきました。その状況を憂える碩学が、これまでの仕事を総括するとともに、将来の知の土台を提供するべく、本書を書き上げました。
「クリティック」とは「物事を判断する場合に何か前提的な吟味を行う」という考え方です。その系譜をたどる道程はホメーロスから開始されます。そこからヘーロドトスとトゥーキュディデースを経てソークラテース、プラトーンに至る古代ギリシャの流れは、キケローやウァッローの古代ローマを経由する形で、一四世紀イタリアのペトラルカ、ヴァッラに至って「人文主義」として開花しました。この流れの根幹にある態度――それは、あるテクストを読み、解釈する前に、それは「正しいテクスト」なのか、そして自分がしているのは「正しい解釈」なのかを問う、というものです。こうした知的態度は古代ギリシャ以来のものであり、のちの者たちはその古代ギリシャ以来の態度に基づいて古代ギリシャのテクストを読み、解釈してきました。そして、それこそがヨーロッパの知的伝統を形作ってきた営みにほかなりません。
この系譜は、近代と呼ばれる時代にデカルトとスピノザによって変奏され、ついには実証主義とロマン主義の分岐を生み出します。その分岐を抱えたまま、現代に至って構造主義と現象学という末裔を出現させました。こうして、古代ギリシャから現代にまで至る流れを「クリティック」を軸にして全面的に書き換えること――そこに浮かび上がる思想史は、まさにその知的伝統から日本が外れているという事実を否応なく突きつけてくるでしょう。この欠如がいかなる現実をもたらしているのか。本書は、現代の危機のありかを暴き、そこから脱出するための道を示して閉じられます。
ここにあるのは、三部作『政治の成立』、『デモクラシーの古典的基礎』、『法存立の歴史的基盤』、日本国憲法を扱う『憲法9条へのカタバシス』、そして話題作『誰のために法は生まれた』など、数々の著作で圧倒的な存在感を示してきた著者からの渾身のメッセージです。
[本書の内容]
第I章 クリティックの起源
1 基礎部分の形成/2 出現/3 混線/4 アンティクアリアニズムのヘゲモニー
第II章 クリティックの展開
1 人文主義/2 ポスト人文主義──クリティックの分裂/3 近代的クリティックの始動/4 近代的クリティックの展開/5 実証主義
第III章 現代の問題状況からクリティック再建へ
1 リチュアリスト/2 社会構造/3 言語/4 現象学/5 パラデイクマの分節/6 構造主義/7 現状の再確認/8 クリティック再建のために
感想・レビュー・書評
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東2法経図・6F開架:130.2A/Ko11k//K
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この本の読み方:人名、地名以外の横文字=専門用語が本文からの文意だけでは、明晰で無いので、辞書で押さえながら、読むとスムーズです。
また、複数の方が指摘し、本文でも定義しているように、「クリティック」=いわゆる現代における批判でありません。カントの『純粋理性批判』でいうところの「批判」概念です。
以上のことを押さえれば、得ることの多い著書です。
文献解釈、政治、国家、民主主義。それらの健全な起動に「クリティック」が必要なのです。
それにしても、実証主義の文脈ででてきた、、様々な資料を説明できる、仮想のxに関する記述は本書の白眉です。 -
【書誌情報】
『クリティック再建のために』
著者:木庭 顕
発売日:2022年02月10日
定価:1,815円(本体1,650円)
ISBN:978-4-06-527070-7
通巻番号:759
判型:四六
ページ数:240ページ
シリーズ:講談社選書メチエ
本書が掲げる「クリティック」は、ふつう「批評」や「批判」という日本語に訳されます。しかし、それらの語では十分に表されない意味が「クリティック」には含まれていることを日本の知的世界は気づかずにきました。その状況を憂える碩学が、これまでの仕事を総括するとともに、将来の知の土台を提供するべく、本書を書き上げました。
「クリティック」とは「物事を判断する場合に何か前提的な吟味を行う」という考え方です。その系譜をたどる道程はホメーロスから開始されます。そこからヘーロドトスとトゥーキュディデースを経てソークラテース、プラトーンに至る古代ギリシャの流れは、キケローやウァッローの古代ローマを経由する形で、一四世紀イタリアのペトラルカ、ヴァッラに至って「人文主義」として開花しました。この流れの根幹にある態度――それは、あるテクストを読み、解釈する前に、それは「正しいテクスト」なのか、そして自分がしているのは「正しい解釈」なのかを問う、というものです。こうした知的態度は古代ギリシャ以来のものであり、のちの者たちはその古代ギリシャ以来の態度に基づいて古代ギリシャのテクストを読み、解釈してきました。そして、それこそがヨーロッパの知的伝統を形作ってきた営みにほかなりません。
この系譜は、近代と呼ばれる時代にデカルトとスピノザによって変奏され、ついには実証主義とロマン主義の分岐を生み出します。その分岐を抱えたまま、現代に至って構造主義と現象学という末裔を出現させました。こうして、古代ギリシャから現代にまで至る流れを「クリティック」を軸にして全面的に書き換えること――そこに浮かび上がる思想史は、まさにその知的伝統から日本が外れているという事実を否応なく突きつけてくるでしょう。この欠如がいかなる現実をもたらしているのか。本書は、現代の危機のありかを暴き、そこから脱出するための道を示して閉じられます。
ここにあるのは、三部作『政治の成立』、『デモクラシーの古典的基礎』、『法存立の歴史的基盤』、日本国憲法を扱う『憲法9条へのカタバシス』、そして話題作『誰のために法は生まれた』など、数々の著作で圧倒的な存在感を示してきた著者からの渾身のメッセージです。
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【簡易目次】
まえがき
第I章 クリティックの起源
1 基礎部分の形成
2 出 現
3 混 線
4 アンティクアリアニズムのヘゲモニー
第II章 クリティックの展開
1 人文主義
2 ポスト人文主義──クリティックの分裂
3 近代的クリティックの始動
4 近代的クリティックの展開
5 実証主義
第III章 現代の問題状況からクリティック再建へ
1 リチュアリスト
2 社会構造
3 言 語
4 現象学
5 パラデイクマの分節
6 構造主義
7 現状の再確認
8 クリティック再建のために
文献案内
あとがき