日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065283981

作品紹介・あらすじ

どうして日本の国力は
30年以上も低下し続けているのか?

低所得・低物価・低金利・低成長の
「4低」=「日本病」に喘ぐニッポンを、
気鋭のエコノミストが分析!

<本書の主な内容>
・「4低」現象は「日本化(Japanification)」と呼ばれ、世界で研究対象に
・今や日本の賃金は、アメリカの半分強、韓国の約9割
・失業率が高い国ほど、賃金上昇率も高い不思議
・「物価上昇率がマイナス」は、OECD諸国で日本だけ
・異次元の金融緩和でも、物価が上がらない理由
・日本は家計も企業も過剰貯蓄、はびこるデフレマインド
・アメリカはリーマン・ショック後、すごい勢いで量的緩和と利下げを行い、「日本化」回避に成功
・日本の政府債務の増加ペースはG7の中で最低、財政赤字を気にしすぎ
・ここ30年で、アメリカのGDPは2倍、日本は1.2倍
・日本では、年収200万円未満の世帯が増加、年収1500万円以上の世帯は減少⇒1億総貧困化へ
・「日本の年金・社会保障制度は危機的状況」の間違い
・大きな可能性を秘めている日本の第一次産業

感想・レビュー・書評

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  • この30年のニッポンの経済的な側面における凋落は目に余るものがある。その事実を本書は見事に可視化していると言える。日本の現状が豊富なデータに裏打ちされており改めて危機感を感じた。

    たまたま図書館の新刊コーナーで目につき借りたのだが読む価値はあった。

    低所得、低物価、低金利、低成長の四低のニッポン。
    ビジネスパーソンにおけるいわゆる課長レベルの賃金は韓国に抜かれた。部長レベルでは中国にも負け。競争するものではないかもしれないが我が国に勤めるビジネスパーソンとしてはなんとも歯がゆい。

    ビックマック指数では日本は世界で33位という。韓国は27位、1位に至ってはスイスの804円でニッポンのほぼ倍額。グアテマラが日本と同額とはビックリだ。
    経済大国と呼ばれたのは今は昔…。

    下り坂の日本経済を立て直す方途も最後にちょろっと提言されているがなんとも心もとない。

    まぁ私が心配してもしょうがないことだから目の前の課題に向き合いしっかり自分の人生を全うするしかないというのが結論。

    最後に。この作品は、新書大賞取れるかもしれんな。


  • 日本経済はバブル崩壊以降、30年間、成長を止めたままだ。それを、筆者は4低、「低所得・低物価・低金利・低成長」と呼び、本書の中でその実態と原因を探っている。
    バブル崩壊の後に大量の不良債権が取り残され、各経済主体が借金の返済等の対応に追われるうちに、すっかりとデフレマインドが定着し、そのままデフレから抜け出せない状態、デフレスパイラスの中にいる。企業や家計が金を使わないため、モノやサービスの値段が上げられず、そのために企業や店舗の売り上げが減り、働く人の給料も上がらない、あるいは減ってしまう。そうなると、ますます人は消費をしなくなるという悪循環に落ち込んでいるのだ。それは、「明日は今日よりも良いはずがない。だからお金は使わずに将来に備えるのだ」というデフレマインドが抜きがたく残っているから。こういった状態の中で、人は結婚をためらい、子どもを持つことをためらう。デフレは少子高齢化にも悪影響を与えている可能性があるのだ。
    30年にもわたるデフレ状態のことを、海外では「日本化、Japanification」と呼び、経済学での研究の対象にもなっているそうだ。その研究の成果が出たのが、欧米のリーマンショックの後の対応。金融を緩和し、マネーを市場に供給する。出来る限り、早いスピードで、かつ、限界までの大量に。それによって、欧米はデフレが続くことを避けることが出来た。コロナの対応も欧米は同じことを行っている。その対応がやや行き過ぎたので、金利を上げる等の調整局面に欧米はいる。
    バブル崩壊後、すぐにでもこの欧米のような対応を行っておけば、ここまでのデフレに陥らない可能性が日本にもあった、と筆者は主張する。しかし、アベノミックス、黒田日銀総裁による異次元金融緩和は2012年とか2013年のこと、バブル崩壊後、20年以上が経過し、なかなか人々のデフレマインドは解凍できず、今のところ、効果は限定的である。しかし、これを続けるしか手段はない、とも筆者は主張する。
    日本が不況を抜け出せない理由について、筆者の主張が正しいかどうかは分からないが、このようにデータを使って、その理由を説明しようとする本自体が少ない(私が読んでいないだけという可能性も高いが)中で、議論の材料になるという意味でも良い本だと思う。このような説明は、本来は政治家や官僚が行うべきと思うのだが、そのような説明を聞いたことはない。

  • 消費税を上げるタイミングが悪過ぎた。これに尽きる。

  • S図書館
    漠然とした不安の正体は何なのか考え、明日につなげる

    《要旨》
    シリコンバレーでは皆「今日より明日は良くなると思って生活しているんだ」と聞いて知人は驚いた
    「 明日は今日よりも生活が苦しくなるかもしれない」という不安から過剰に貯蓄をしている
    日本に根付いたデフレマインドは、デフレ脱却の大きな妨げになっている

    《感想》
    上記のように日本人は30年染み付いたデフレが抜けない
    将来不安で買わない→価格破壊→給料も上がらない
    デフレを30年放置した結果、自殺、結婚しない、少子化に結びついたと言える
    働き過ぎないという考え方もあるし、何でも手に入りやすいから欲しがらない場合もある
    いずれにしても需要が少ない
    こんな日本病を反面教師にしたのがアメリカで、こうなる前に過熱気味でもデフレ長期化よりいいと綿密に政策していた
    よってアメリカ国民は前向きの気持ちが持続している
    いろいろ政策をやりながらも、日本人の将来不安を払拭する「気持ち」次第のような気がする

    著者はオランダを見本として、1次産業に大きな可能性があり、日本でもグローバルに稼ぐ 産業が育つはずと締めくくっていた
    日本にはブランドとなる品種が多く、他所の国には負けないだろうし、担い手不足にも一役買うことができ一石二鳥だ
    農業 漁業は死守すべき存在だ

  • 読みやすい本です。
    すっかり高い日本から安い日本になってしまい、このまま大した対策もとらず、ただ手を拱いていたら日本の状況はもっともっと悪くなりえます。
    はじめに
    第1章 日本病ー低所得 低物価 低金利 低成長
    第2章「低所得」ニッポン
    第3章「低物価」ニッポン
    第4章「低金利」ニッポン
    第5章「低成長」ニッポン
    第6章 スクリューフレーションの脅威ー1億総貧困化
    第7章 下り坂ニッポンを上り坂に変えには?
    おわりに

  • 何ヶ月か前に、ビジネス本で読むべき本、として上がっていたので、借りて読んでみた。

    アベノミクス礼賛、黒田日銀の異次元緩和策礼賛、(消費税率増税のタイミングは最悪)というトーンでずっとマクロ経済について解説してした本。

    どこかで聞いたような話が多い。発刊後一年以上経っているので、逆に本書の内容が世の中に浸透済みだということだろうか。

  • 我が国の失われた30年について、とても平易に解説されている。

    処方箋としてはデフレスパイラルを抜けるまで金融緩和と財政支出を続けること。
    少子化、労働力現象は表面的に見えるほどの懸念は必要なく、世の中の元気を盛り上げることが必要。
    将来の注力領域は農業、漁業などの第1次産業。
    とか。

  • 『安い日本』の諸問題整理。あまり新しい見解はなし。

  • こちらで書評を書きました。

    https://www.rinen-mg.co.jp/web-rinentokeiei/entry-5116.html

    タイトルの「日本病」とは、バブル崩壊以来30年以上、日本で低所得・低物価・低金利・低成長の「4低」が続いている現状を指します。

    それがなぜなのかを、人気エコノミスト・ 永濱利廣さんがさまざまな角度から掘り下げる一冊。

    「日本病」が治る可能性と、著者なりの処方箋も示されています。

  •  日本経済が低迷し続け、平均賃金は韓国よりも低くなってしまったという事実に対して、日本人は耳を塞いでいる。
    ネットでは日本が素晴らしくて韓国がどうしようもないという人たちが大声をあげているのだが、このままではますます日本は二流国になってしまう。
     本書は日本経済の現状分析についてはとてもわかりやすく、類書も多い中で簡潔に原因を明らかにしている。その一方で、どうすればいいのかという点については抽象的でツッコミが足らない。
     韓国との比較で言えば、日本の労働慣行があまりにも硬直かしているため、転職が不利、起業が困難、など産業の新陳代謝が進まないことが問題である。この状況を打開するために何ができるのかという点について、第一次産業が有望で、オランダを例に挙げているのはガッカリだ。

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著者プロフィール

早稲田大学理工学部工業経営学科卒、 東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。
第一生命保険に入社後、 日本経済研究センターに出向。 現在、第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 内閣府経済財政諮問会議有識者、 総務省消費統計研究会委員、 景気循環学会常務理事、 跡見学園女子大学非常勤講師。 2015年に景気循環学会中原奨励賞受賞。 著書は『給料が上がらないのは、円安のせいですか?通貨で読み解く経済の仕組み』(PHP研究所)、『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)ほか多数。 趣味は車と体を鍛えること。 一男(大4)一女(大1)の父(書籍発売時)

「2023年 『エコノミストの父が、子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話 増補・改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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