大槻教授の最終抗議 (集英社新書 467B)

著者 :
  • 集英社
3.45
  • (4)
  • (10)
  • (14)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 81
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087204674

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 火の玉研究家大槻教授の心意気が分かる本。なぜ火の玉を研究しているのか、なぜオカルトをたたいているのか?この本を読むことでよく分かる。単なるオカルト嫌いだと思っていたが、違った。その底にはカルト教団に牛耳られる日本を心配する心があった。自分自身まだ、霊的なものは存在しているとは思うが、少なくともTVや新興宗教物は全く信じていないので、大槻教授の言うことは大いにうなずける。



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】
    ・新書がベスト

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:404||O
    資料ID:95090014

  •  大槻教授の人生を振り返りながら自分がどのようにオカルトと対峙してきたかを振り返り、そして今なお力を持つオカルトの一つである血液型占いや占星術を例として最後のオカルト批判を行っている。
     大槻教授のそもそもの人生の原体験は、自分自身が子供の頃に見た火の玉なわけであるが、これの正体を見極めたいというのが本人のライフワークであったこと、そのために海外まで飛び立ったこと、それにもかかわらず、キワモノ扱いを恐れて長い間このことを隠してきたことが書かれている。

     もちろん本人は真っ当な科学者で、物理の教科書も参考書も何冊となく書いている。したがって、本人は火の玉もあくまで科学として取り扱いたいのだろうが、オカルトが跋扈するこの国でうかつに火の玉の研究をやっているなどと公言すると、その手のオカルトと同列視され、本人だけでなく、研究室の学生などの弟子に対しても色眼鏡で見られてしまうであろうことを恐れたというあたり、本人は決してテレビのお笑い担当モドキや、ましてキワモノなどでは決してなく、科学者としても一社会人としても極めて真っ当な人物であると考えられる。

     火の玉を実験的に作り出したくだりはこの本の中盤の要になるが、恐らくは大槻教授本人の人生の要とも言えるだろう。この火の玉の研究の成果はふとした偶然から公表されるようになったのだが、本人がオカルトバスターとしてオカルトを徹底的に叩く、一つの転機となった出来事ともいえる。
     テレビに露出するというのはある意味、自分自身がキワモノになる道を歩むことになったわけだが、これがある意味、科学者としての真っ当な社会的責任であったことは、オウム真理教の事件が示している。
     オウム真理教の事件については終章でもう一度取り上げられているが、大槻教授はこの事件を機に科学者の社会的な責任について痛感したと述べている。つまり、火の玉研究がオカルト批判への機会を作り、オウム真理教の事件がオカルト批判に対しての社会的責任を自覚させ、以後は自覚したオカルトバスターとして活躍していくのは、皆さんの知ってのとおりである。

     米国では天文学者のカール・セーガンがオカルトバスターとして活躍していた。我が国においても大槻教授のような物理学者がいたことは喜ぶべきだが同時に、大槻教授の後を継ぐものが実質的にいない今、どうなるのだろう。最近になっても水からの伝言がどうとか、スピリチュアルなんとかなどの胡散臭い言葉が氾濫するようになる一方で、大槻教授のようにテレビで堂々とそれを正す者が現れない。
     私たちは「大槻教授の最終抗議」を本当に最終抗議としてオカルトを撲滅しなければならないはずだが、その道のりは依然として多難どころか、オカルトがどんな形で噴出してもおかしくないような状況である。

  • 著者は言わずと知れた大槻教授。

    利己的な理由で迷信・オカルトと否定してきた彼が、オウム事件を起こしたのは科学者の責任と感じ、世の科学者たちにきちんと科学とは何なのかを世間に発信していくことの重要性を熱く訴える。

  •  小学生の頃,心霊写真とか超能力がもてはやされていて,友達の間でその種の本を回し読みしたような記憶がある。テレビでもよく超常現象をとりあげる番組が放送されていたようだが,親の方針からかそちらはあまり見た憶えはない。その後科学少年になった私は,そういうオカルトめいたものに疑問を感じるようになっていた。そんなとき,科学者の立場から,オカルト批判を展開する人物が登場する。この本の著者である。子供心にその姿はとてもかっこよく見えたものだ。
     それから二十年ほど,すっかり忘れていたその大槻義彦が,最近の占い・スピリチュアルブームに対して書いたというので,ふと手にとった。読んでみて,ひどく衝撃を受けた。
     何がショックだったって,この本自体が結構トンデモ本だったのだ。「オカルトなんて,科学的に考えれば明らかにインチキだ。そんなもので人心を惑わすとは怪しからん。」という主張の一点張りなのである。オカルトに対する敵対,嫌悪の感情があちこちで噴出し,文章はあまり論理的とはいえない。占星術がついに科学的に証明されたとのたまう占星術師と,そんなのは嘘である,科学こそ実際に証明されているという彼と,両者の違いは一体何だろうか?ミイラ取りがミイラになってしまっている。とにかく,非常に底の浅い内容であった。
     もう読み返す気も失せたが,彼が昔に書いた啓蒙書も,同様の論調だったのだろうか。子供のころに見た,彼のテレビでの発言内容もこの程度だったのだろうか。そうだとしたら,疑問に感じるどころか,むしろ英雄視してしまった自分が悔やまれる。子供だったから仕方がないのだが。
     アマゾンで,本書についての書評を見た。好意的なものが多いことに,愕然とした。それ自体オカルトめいているオカルトバスターの主張に,なぜいい大人が「我が意を得たり」とばかりに納得してしまうのだろう。こういう人々は今たまたま科学を支持しているだけで,一歩間違えばオカルトに傾斜していてもおかしくない。何かのきっかけで科学不信に陥れば,簡単に離れていくのではないか。
     考えてみればこれは当然なのだ。大衆受けするのはいつだって,正論ではなくて分かりやすい主張だ。テレビや新聞でとりあげられるのは決まって,底が浅くて歯切れのいい論調,緻密ではなく威勢のいい文章である。いや,主張が分かりやすいだけでは足りない。その内容が,多くの人にとって聞いて心地のよいものであることも重要だ。今は科学が社会に広く認められているから,多くの人は科学を支持しており,大槻教授に賛同する。結論として賛成なので,論理構成はともかく納得してしまう。権威づけされた気がして心地よいから,それでも別に構わないのだ。少年時代の私もまさにそうであった。つくづく子供は未熟である。
     これをそのまま裏返すと,大槻教授が批判するなんとかカウンセラーとか占星術師は,すなわち信奉者にとっての大槻教授であるということだ。いやこちら側の方がもっと魅力的である。テレビや雑誌で活躍する彼らは,「あるがままのあなたがいい」とか「お金に執着するのは悪じゃない」とかいう聞いて心地のよい結論を,ドラマチックな演出をまじえて提供する。視聴者の多くはこのような結論に賛成であろう。それを「論理構成はともかく」で納得してよいとしたら,分があるのはどうみてもオカルト側だ。本書をうのみにすることは,オカルトをうのみにすることとほとんど等しい,と私は思う。
     だから,彼の論理でオカルト信奉者を科学側へ奪還することはおぼつかない。それどころか,彼の論理によれば逆に科学からオカルトへの転向がますます促進されてしまう。なにしろこの本にはオカルトとは何で,科学とは何であるかの考察が皆無なのだ。怪しいかそうでないかという多分に主観的な区別だけでは,科学の衣をまとった誇大広告の類はもちろん見抜けないし,古今東西,オカルトでなく科学の方を怪しむ人々だってわんさかいるのだ。大槻教授は科学者にオカルト打倒を呼びかけるが,もう少し論法ややり方を考える必要があるのではないだろうか。
     このあたり科学哲学という学問がかなり貢献できるのではないだろうか。もっと一般的なところでは,池田清彦が科学についてなかなかいいことを書いていると思う。
     問題は,オカルトにはまるような人はこの種の本はまず読まないということだ。やはり社会(主にマスコミ)を変えていかなきゃならんのだろう。オウムの教訓がたちまち忘れられたという歴史にあるように,マスコミの自浄作用に多くを期待するのは難しい。外からマスコミを変えるとなると冷静な論理の話でなく,声の大きさがものをいう政治的な話になってくる。――おや?そうすると,大槻教授も案外いい仕事をしているのかもしれないなぁ。

  • 火の玉研究の大槻教授が、科学の刃で世間に渦巻くオカルト知識を一刀両断!
    オカルトは否定しながらも、占いや血液型分類は信じてしまう、昨今の日本人全員に読んで頂きたい本です。

    とても面白い内容だったけど、幽霊についての記述が無かったのが残念だった。これについても、分かりやすく科学の力で説明して欲しかった。

  • ・占星術も血液型占いも科学的根拠はない
    ・科学者は社会的責任を果たす必要がある

  • [ 内容 ]
    大槻教授にも、科学と非科学との間で苦悶した時期があった。
    それは「火の玉」との遭遇であり、父の死と「虫の知らせ」などであった。
    そうしたものを解明することが科学である。
    こうした信念の半生が、初めて語られる。
    理性で思考することで、自分の「解」を出すことの大切さを説く。
    物理学者・大槻教授の、いまだに怪しいスピリチャリズムが跋扈する日本への最終抗議である。

    [ 目次 ]
    第1章 私が「迷信」から脱却した道(祈祷師を生んだ家系 福島から来たゴゼ ほか)
    第2章 火の玉研究者への道(「日本に火の玉研究者はいますか?」 著名な物理学者に先を越された!? ほか)
    第3章 占星術を打破する科学の根拠(双子座の私の星はズレている 占星術を「科学」と偽るオカルト ほか)
    第4章 日本に同じ血液型の人間は二人としていない(私の血液型は「C型」である 血液型性格判断は「差別」につながる ほか)
    終章 「迷信」と闘う科学者は、だから必要(研究室に警官が来た日 科学者は社会的な責任を果たせ ほか)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 大槻教授の火の玉についての執念が伺えた。
    最後は使命感にあふれる文章でおもしろかった。
    星座はいつの星の配列が基準やねん?と
    血液占いは抗体での分け方は数限りなくあるっちゅうねん!
    がおもろかった。

全17件中 1 - 10件を表示

大槻義彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×