国家戦略特区の正体 外資に売られる日本 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208207

作品紹介・あらすじ

安倍政権が成長戦略として進める「国家戦略特区」。その実態は、得られた利益を外資が持ち去る「植民地」に他ならない。日本のGDPの約半分を売り渡さんとする亡国の経済政策。その危険性を暴く。

感想・レビュー・書評

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  • 特区が大反対の人の本

  • ●国家戦略特区構想は、アベノミクス第三の矢の具体策。
    ●外国投資ね誘致が目的である
    ●かつて沖縄にあったが日本に成功例はない。
    ●新自由主義が招いた現状。一企業が国家のGDPを上回る事態。80年代から世界の富豪の資産を80倍に増やした。
    ●しまなみ地域。

  • 2018.3.4読了。

    経済学者が書いた、国家戦略特区に関して批判的に論じた本。
    勉強の合間にちょっとずつ読んでたから、時間がものすごくかかり、それ故に内容が頭に入っていない点も多いが、
    内容としては、すでに先進工業国である日本が経済特区の性格が強い国家戦略特区を導入することが果たして意味があるのか、国家戦略特区がどのような不利益をもたらすか、また国家戦略特区の導入がどういう意思の下に行われたのかについて論じていた。

    国家戦略特区反対派の著者の著作かつ新書であるので、内容については多少偏りがあると思われるが、国家戦略特区について知る良い本であったと個人的には思う。

  • 経済学者として主にアジアにおける「経済開発」をテーマに研究活動を行う著者の立場から、安倍政権の進める国家戦略特区構想に対し論評を行っている。国家戦略特区制度に批判的なスタイルで一貫している。
    国家戦略特区もその範疇に入る「特別経済区(SEZ)」は、本来、工業化を目指す途上国において効果を発揮する経済政策であり、経済的に成熟の域に達している現在の日本で、国家戦略特区が国家あるいは国民に対し、経済的利益をもたらす形で機能することは期待できないと指摘。また、国家戦略特区構想は、その効果が期待できないだけでなく、格差の拡大、人権の侵害、違憲性などの問題を持つものであることも指摘。さらに、韓国・中国を中心としたアジア各国における特区の現状にも触れ、いずれもあまりうまくいっていないとしている。そして、政権の民間頼みの無責任体質、経済政策の誤りを述べ、国家戦略特区は国民にも国家にもメリットがないと主張している。
    著者の国家戦略特区制度への批判は一理ある部分もあると思うが、新自由主義に対する反感が強すぎて、評価にバイアスがかかっていると思われる部分も少なくなかった。例えば、混合診療、公設民営学校、農業の大規模化、カジノなどについては、批判が一面的であると感じた。格差が生じることが常に悪ではないだろう。健康で文化的な最低限度の生活を保障した上で、個々人の経済状況に応じて、選択肢を拡大することは社会の活力を生む点でも有意義なことではないだろうか。

  • 経済特区の現状とデメリットについて解説した良書。SEZは基本ボトムアップ方式で決めていくものであり、トップダウンの形では地域の実情に合わず弊害が生まれる。また、先進国でSEZを設けても賃金が安い途上国のSEZに人材が流れてしまい外資系企業が参入するインセンティブを得られない。さらに、先んじて先進国でSEZを導入している韓国ではSEZはうまく機能していない。安倍政権が進める経済政策を見つめ直す良い機会となった。

  • 堤未果「政府はもう嘘をつけない」の中で紹介され、その存在を知った本。〈安倍政権が成長戦略の一つとして進める「国家戦略特区」、日本のGDPの半分以上を外資に売り渡さんとする亡国の経済政策の危険性を暴く〉ために書かれた本です。

    規制があるのをさも悪いかのように描く「岩盤規制」という言葉を使い、国民生活に必要な分野(医療・農業・教育・雇用等)を解体させていく政策は、貧困と格差を生み出すという結果しか生みません。

    憲法95条には、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」と規定されていることを知りました。そうすると、「国家戦略特区」を地方自治体で進める際には住民投票が必要ですが、そのようなことは一度もないとのこと。安倍政権が立憲主義に基づいていないことが、安保法制のみならずこの分野でもそうであることが確認できました。

    政治の方向、その背景にあることを丁寧に解き明かし、多くの人に伝えていかないと大変なことになります。堤さんの著書同様、読み終えて怖ろしさと憤りが強く湧いてきました。このまま黙ってはいられません。

    お勧めの一冊です。

  • 国家前略特区に象徴される利益のみを追求しうる新自由主義社会に進むか、調和を重んじた脱成長型社会に向かうのか。国民的議論を置き去りにして進む国家戦略特区の問題点について書かれてある。

  • 経済特区やTPPを批判した本。

    めも
    カジノ特区作っても、カジノに来る外国人は他の観光目的の外国人より金は使わない。

    国家戦略特区の正体 目次
    はじめに
    第一章「国家戦略特区」とはなにか
    アベノミクスと国家戦略特区/特別経済区とはなにか/特別経済区の歴史/日本の特区に成功例はない/新自由主義の台頭/冷戦籍がもたらしたもの/ニクソン・ショックとグローバル経済の関係/新自由主義が招いた現状/国家戦略特区構想の現状/構造改革特区、総合特区との最大の違い/「岩盤規制」への攻撃/国家が向かう先/日本のGDPの五割以上を占める国家戦略特区
    第二章「国家戦略特区」が生む理不尽
    日本に外資は必要か?/誰が「縮小する市場」に投資するのか/TPPと国家戦略特区/特区で拡大する地域格差/特区内にも格差が生まれる/途上国並みの労働環境に逆戻り/国民皆保険制度の形骸化/保険診療の適用範囲が縮小される可能性/教育格差が拡大する/解雇特区の恐怖/法治国家を歪める「一国二制度」/国家戦略特区の違憲性/企業の論理と農業/「農業の大規模化」という歴史への挑戦/国家戦略特区・TPP・特定秘密保護法の三位一体
    第三章 アジアの「特区」でなにが起きたか
    米韓FTAに見る「経済植民地化」への道/TPPと米韓FTAの類似/ISDS条項がポイズン(毒素)と呼ばれる理由/韓国「経済自由区域」の失敗/過激すぎる規制緩和/韓国で拡がる医療格差/教育の現場でISDS条項に基づき訴訟が起こる可能性/カジノ解禁と観光収入/金融の自由化を掲げた上海「自由貿易試験区」/期待を込めた「ネガティブリスト削減」の効果/なぜ、カンボジアでは成功したのか/ベトナム、タイからカンボジアに移転した外資/日本が共同開発したミャンマーのSEZ
    第四章「国家戦略特区」は日本の破滅を招く
    どこまで本気なのか/誰が責任を取るのか/
    「有識者等からの『集中ヒアリング』」の怪/日本経済全体の方向性の誤り/日本の農業に迫る、もうひとつの危険/「農業特区」で外国人観光客が激減する/遺伝子組み換え食品の脅威/生態系の破壊/国境を越えた投資か、企業内の財の移動か/多国籍企業と労働力の移動/多国籍企業による法人税逃れの手口/国にも国民にも、利益はない/特区は米国の圧力から始まった/
    日米貿易摩擦といわれなくなった真の理由/経済政策なのか、単なる政争の具か
    あとがき 国家戦略特区への提言に代えて

  • 郭洋春『国家戦略特区の正体』読了。

    開発経済学者が先進国を分析する珍しい書籍。
    それ以上に怪奇なのは、先進国が「開発政策」を実施しようとしていること。
    特に、米韓のFTAの韓国社会の変貌が驚愕。
    中学生や高校生にも分かるような入門書です。

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著者プロフィール

1959年生まれ。立教大学経済学部教授。
主著=『TPPすぐそこに迫る亡国の罠』(三交社、2013年)、『開発リスクの政治経済学』(編著、文眞堂、2013年)。

「2014年 『徹底解剖国家戦略特区』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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