中央銀行は持ちこたえられるか ――忍び寄る「経済敗戦」の足音 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208580

作品紹介・あらすじ

1000兆円を超え、増え続ける巨額債務を抱えながら、デフレ脱却を至上命題に異次元緩和を続ける政府・日銀。成果は一向に上がらず、もはや「出口」の見えない政策運営の先に待つ悲劇的シナリオとは!?

感想・レビュー・書評

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  • 17
    世界中が仰天した異次元緩和
    2013.04.~
    年間約50兆円という型破りの規模、前代未聞の規模で国債を買い入れてマネタリーベースを供給するという量的質的金融緩和Quantitative and Qualititative Easingを開始。
    質的というのは、ETF指数連動型上場投資信託やJ-REIT不動産投資信託の買い入れが雲拡大し、株や不動産といった資産価格への働きかけも行ったから。

    2014.10.~ 追加緩和で年間約80兆円に増額

    20
    結果
    QQEの開始から3年半あまりが経過した2016.10.
    消費者物価は、2015.04.以降は前年を僅かに上回る程度の水準に戻る
    2016.01.以降は、前年比マイナスの幅が、月を追うごとに拡大。

    22
    日銀による国債の買占め

    26
    この3年半余りを振り返れば、財政再建に向けての取り組みは棚上げ状態。

    27
    日銀がQQEという事実上の財政ファイナンスを続けられなくなった時、わが国の財政と経済にとっての危機が訪れる。

    32
    債務腸製の2つのパターン

    1.連続的な債務調整 10年20年といった長期にわたり国民生活に重い負担が及ぶ
    ex.
    ・毎年10%~30%も物価があがる高インフレーション
    ・金融抑圧 閉鎖経済の中で金融抑圧をやると、多くの国で高インフレが起きる

    32-45
    2.非連続的な債務調整 国民生活が切り捨てられる
    ex.
    ・対外債務調整 
    ・国内債務調整→金融危機 ギリシャ預金引き出し規制 敗戦後の預金封鎖

    57
    財政制約を意識する欧米主要国
    61
    リーマン・ショック後の2010年
    各国は2013年の財政収支赤字の半減を共通の財政再建目標として掲げた。
    ドイツやスペインでは、健全な財政運営を行うことを政府に義務付ける条文が憲法に盛り込まれた。
    イギリスは「財政責任憲章」立法レベル、政治的な合意レベルでルールを設けた。

    70
    日銀の量的緩和は世界初の試み
    世界各国の中央銀行にとってゼロ金利状態の下で非伝統的手段による金融政策運営を行ったのは、2001~2006年の日銀の量的緩和が初めての経験だった。
    72
    マネタリーベースを増やしてもマネタリーサプライは増えず

    92
    出口戦略を一切明らかにしない日銀

    100
    バーナンキ・ショックと資産買い入れの縮小

    116
    マイナス金利導入の結果、損失覚悟で国債を買い入れせざるをえなくなった日銀

    132
    ギリシャは財政指標を粉飾していた

    143
    ドラギ欧州中央銀行総裁が、SMPによる国債の買い入れを停止した。

    145
    ギリシャは、戦後初めての、先進国の、デフォルトの事例になった。

    157
    「日本は貯蓄率が高く、国債の殆どを国内で保有しているから、財政運営が危なくなるようなことはない」と言うバカもいるが、それはあくまでも日本政府が健全な財政運営に努め、市場がそれを評価し、低い金利で国債を発行し、財政運営を回すことができている限りにおいての話。

    放漫財政で借金を増やし続け、市場金利が上昇する、もしくは事実上の財政ファイナンスを行って巨額の国際を買い入れ続けている日銀の金融政策が行き詰まり、政府の財政運営が回らなくなった時、ギリシャがとった手は使えない。
    急激な債務調整の負担は、すべて日本国民に向かう。

    159
    ラインハートとロゴフは『国家は破綻する』2009で
    「公的国内債務のデータを探すのは、ほんの十数年前のデータでも、ほとんどの国で考古学の調査をするようなものだった」和訳p.172 と述べている。

    日本は第二次世界大戦時に財政破綻している。

    170
    1946.02.17. 預金封鎖および新円切り替えが断行された。

    最後の調整の痛みは日本国民に向けられる。

    176
    日銀に蓄積され続ける大きなリスク

    192
    日本がIMFの管理下に入る日

    209
    財政運営リスクの問題に一切触れない日銀

    213
    中央銀行の先行きの金融政策運営に一切言及しないリフレ派

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685700

  • 財政破綻を日銀の財務諸表の観点から解説。
    ①日銀券を大量発行してインフレになると、誰が損をするのか?(率で課税している税金は増えるが預金は実質目減りするから国民が損をする)、
    ②低利率の国債を大量に保有する中、その量がBS上日銀券発行高をゆうに超え、超過準備が大量になることが許されている日本で、金利をあげると逆鞘が生じ日銀の財務運営が死亡→誰が補填?
    ③無利子国債→政府には一瞬メリットがあるように見えるけど②の問題が残る。

    欧米は金融政策の面でもしっかりと縛りがありできる限度や条件がある。財政の面でも国債の償還ルールなどが日本ほどにはゆるくなく身の丈にあった長期国債の発行が行われてる(日本は短期債の借り換えで繋いでいるので低金利だが、綱渡りの財政運営。)。

    財政破綻した場合、国外調整として債務免除をして解決できない日本は国内調整するほかない。その時、無理やり国民の資産を目減りさせる財産権の侵害を行うか、増税で徴税を行なって債務を返すか、社会サービスを切るか、、といった選択肢を迫られる。

    日銀の財務運営の点は恥ずかしながらよく理解してなかったので勉強になった。新刊も出たので復習も兼ねて読みたい。

  • 中央銀行が出口もはっきりさせないで金融緩和に突き進んでいったのがよく分かる。目先だけよければいい、根本的な解決は後回し。原発政策と同じ構造だ。ちゃんと中長期の展望を持たないととんでもない事態が起こりそう。とんでもない事態が起こるまで見ないふり、リスクに備えて動かない。まさに福島の原発事故と同じ。

  • 良いことが書いてあるとは思うのだが、前提条件がわかっている人向けなのか、いきなりセンセーショナルなことを書き連ねてあるので、ほんまかいな。それはどう繋がるの?という素人の疑問が積み重なって、ちょっと私のレベルだと訴求してこなかった。

    同じ方向だけの本を読んでいても偏るばかりなので、もうちょっと違うアプローチで似たような主張の本を探したい。

  • 『アベノミクスによろしく』より、詳細な異次元の量的緩和政策への懸念と批判。著者のことは、しばらく前にマル激に出演したのを見て知った。抑制が効いた筆致と、著者の職業倫理に共感を持った。

  • 日銀の財政ファイナンスを問題視する経済の本。太平洋戦争直後の銀行封鎖・新円切り替えと財産税について細かく書いてあって役に立つ。本当に90%とか取られたんだ…。今まで河村小百合と白井さゆりをごっちゃにしていたけど、別人だった。主張が似ているので混乱してしまった。

  • 日本銀行の金融政策について書かれた本。
    我が国の量的質的金融緩和が、実質的な財政ファイナンスにあたると指摘して、財政法に反し、財政規律を歪めていると指摘しています。

    量的質的金融緩和が、結局日本銀行のバランスシートを膨張させ、出口戦略を困難にさせていること。また、出口戦略について日本銀行が正しく説明していないことも批判しています。

    確かに、このまま日本銀行が国債を買い続けたら、金利上昇時に日本銀行は債務超過に陥るでしょう。その際、政府はどうするつもりなのでしょうか。

    それにしても、コラムに付いていた、財務大臣と日銀総裁の国会答弁は酷いですね。未来に対して責任感ほないのでしょうか。

    どちらにしてと、インフレは避けられなさそうです。

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著者プロフィール

株式会社日本総合研究所調査部主席研究員。1988年京都大学法学部卒業、日本銀行入行。1991年株式会社日本総合研究所入社。2019年より現職。財務省財政制度等審議会財政制度分科会臨時委員、国税庁国税審議会委員、厚生労働省社会保障審議会委員、内閣官房行政改革推進会議民間議員等を歴任

「2023年 『日本銀行 我が国に迫る危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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