シリーズ<本と日本史> 3 中世の声と文字 親鸞の手紙と『平家物語』 (集英社新書)
- 集英社 (2017年1月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087208641
作品紹介・あらすじ
中世日本の思想は「声」によって形成・伝達された。親鸞や法然、日蓮の「生の声」が詰まった手紙や、琵琶法師の「語り」で広まった『平家物語』の読解などを通し、中世の新たな側面を描く画期的な一冊。
感想・レビュー・書評
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まえがき―中世を体現する本
第1章 親鸞の著述
第2章 中世の手紙
第3章 世の移り行きを書く
第4章 平家の物語
あとがき―中世の声と文字
著者:大隅和雄(1932-、福岡県、日本史)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
信仰における疑問を主題としてやり取りされた親鸞とその弟子や係累の手紙から、まとまった作品である著作には無い書き手の心情が映されている声を感じ取れるということ。歴史をテーマにした文学作品で、『保元物語』あたりまでは閉じた貴族社会内部にネタを取材していたが、さらなる武士の台頭をはじめとする中世社会の複雑化から『平家物語』においては書き手の貴族の知りえない広範囲の情報をも外部から取り入れられるようになったということ。
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特に楽しみにしていた『平家物語』の章は、あらすじ紹介がメインで少し残念。
「鎌倉時代になって盛んになる京都と東国の文通は、簡単に行き来の叶わないところにいる相手への思いの中で書かれるために、内容も対象化されていることを見落とすわけにはいかない。」
こういう所は、意外と見落としがちな視点で、例えば自分の送った日付を入れることや時候の挨拶にも意味が浮かんできて面白い。
「『これこそ平家の悪行のはじめなれ』と記しているが、この一文は重要な意味を持っている。清盛の悪行が次々に起って、やがて平家を滅ぼすことになるのを暗示することばで、語りを聞く人には強く印象に残る。物語の作者と語り手は、人間世界を超えた高いところにいて、物語の結末を知悉している。」 -
17/01/26。