- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087440843
感想・レビュー・書評
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どちらを先に読むのが正しかったのか分からないのですが、パラテニスプレイヤーの宝良の側から読みました。非常に感動的でティーン用の読み物にしておくのはとてももったいない傑作だと思いmした。
そして今回、宝良の親友百花の側から見た物語を読みました。こちらもまたプレイヤーを支える車椅子メーカー、そして親友を支えたいと思いながら、技術が追い付かず懊悩する百花の姿に胸の熱くなる名作と言って差し支えありません。
百花焦り過ぎだろうという声も聞かれそうなくらい、宝良の成長に追いつきたいという思いが空回りしています。それを受け止める先輩もいい存在感を出しています。
順番的には百花side⇒宝良sideかなという気がしましたが、どちらから読んでもばっちり感動出来る事間違いないです。 -
車いすテニス。思わずネットで動画を探して見まくりましたよ。
すごいとかすごくないとか、もう、言葉がないくらいすごすぎますわ、この競技。
車いすを操作してボールに追いつき、あるいはボールの行方を予想して先に動き、そして止まり、打つ。
全身で、打つ。身体が車いすに固定されているのだから通常のあの文字通り全身を使って打ち返すのとは違うのだけど、それでも「全身で打つ」としか言いようのない動き。これはもう言葉にできないほどのすごさだ。
そんな車いすテニスを余儀なくされた同級生のために、車いす製造会社へ就職した一人の少女の物語。
読む前から、モノづくり系でありスポーツ小説であり青春ものであり、と自分の好きな要素だけでできているのはわかっていたのでちょっと気合が入っていた。
だがしかし、読み始めてすぐに、この主人公にイライラし始める。おいおい、ちょっと甘いんじゃないの、と。
モノづくりってそんなに簡単なものじゃないでしょ、たかが一年やそこら働いたくらいでなに焦ってまえのめりになっちゃってるの、甘いよ甘い甘い、と。
自力で歩けない人のための「足」である車いす。しかもスポーツのためのものとなればどれだけ繊細な作業と熟練の技が必要か。なぜそんなに焦る。もっとじっくり修行すりゃいいじゃん。
その焦りの意味、そしてなぜ友達のためにそこまで熱くなるのか、その理由が語られてからイライラがおさまっていく。二人がめざすもの。その理由。そうかそうか、と見守る目が優しくなる。
でも、私はたぶん今月出る『宝良side』のほうが好きだろうな、という予感。早く読みたい。 -
若いうちから、やりたいこと、夢を見つけることができた百花が羨ましく思った。
最高の競技用車椅子を作るという目標に向かって一心に突き進む百花に胸が熱くなった。
いじめられっ子だった百花が宝良との出会いにより、自分を変えようと頑張ってる姿、夢を見つけた途端に強くなり邁進する姿が眩しい。
これから百花がどう成長していくのか楽しみなので、続きが読みたい。 -
競技用車椅子を製造したいと言う夢を持つ主人公。
無事に憧れの車椅子製造会社に就職する。
中学からの親友がパラテニス選手として活躍しており、
刺激しあい成長していく2人。
とにかく真っ直ぐで素直に応援したくなる百花と宝良。
序盤から涙、涙。
電車内で読んでいたのだけれど、これは危険だと判断し
自宅で一気読み。
下巻を読んでしまうのが勿体ないような、すぐにでも読んでしまいたいような。 -
車いすテニスの物語、というだけで即、手に取った一冊。実在する日本のスーパースターをモデルにしたと思われる選手たちも登場し、この人たちは本当にいるんだよ!と読んだ人に言いたい。競技をテレビで見られることはほとんどないが、車いすそのもののことなどもやさしく伝えてくれていて、イメージがわきやすいかなと思う。
ハンデを背負ってスポーツをする人の中には、宝良のようにある日突然それまであった体を失ってしまったという人も少なくないのだと思うと、再び立ち上がるまでの意思の強さは並々ならぬものがあるんだろうなぁ・・・。
それにしても百花は焦り過ぎというか気が早すぎて、そこはちょっとついていけなかった。技術職の2年目なんて、どう考えてもまだ初心者じゃないだろうか。 -
先日読んだ「金環日食」が素晴らしかったので。手にとった3年前の作品。
車椅子メーカーに勤める百花と言う女性の、友情と仕事に向き合う成長の物語。設定や百花の描き方はありふれた感がある。真面目一直線でもドジで泣き虫で、と言う設定。がスポーツ車椅子と言う未知の分野を垣間見せてくださったのは有難い。折しも国枝氏が車椅子テニスで感動を下さったばかり。読んで良かったと思えた。 -
車いすテニスプレーヤーの友人・宝良が乗る競技用車いすを作るために車いすメーカーに就職した百花。
友だちは世界を舞台に駆け上がっているのに、自分は思うように仕事が出来ず焦るばかりだ。
〇アスリートをサポートするのが車いすや義足なんだなと。ものすごい技術や創意工夫やバージョンアップの繰り返しをしていることが分かった。
〇百花ちゃんは気持ちが先行しすぎて、途中空回ってしまった感じ。ひとつずつ頑張れ~ -
まず、車いすのこと、競技用車いすのことをほとんど知らなくて全てが新鮮でした。
エンジニアの百花が未熟な自分に焦って悩んで自己嫌悪に陥ったりしながらも、一生懸命夢に向かって突き進む姿が眩しい。
ユーザーに真摯に向き合い、とことん寄り添って車いすを作りあげる先輩エンジニアの小田切さんも本当にすごい。
小田切さんの言葉には何度も胸がいっぱいになり目頭が熱くなりました。
全編を通してすごく気持ちを揺さぶられる作品。それに心に響く言葉もたくさん!
温かくて清々しい読後感でした。
『テニスをしても、しなくても、自分の足で走っても、車いすで走っても、宝良は宝良だ。宝良が宝良であってくれればそれでいい。それだけでいい。けれど、願わくば、見つけてほしい。これからの人生を照らす、光を』
『めざす背中は遠く、歩もうとする道はどこまでも果てしない。けれど胸の中に小さくかがやく道しるべを頼りに、ただ懸命に進もう。わたしだからこそ見えるものも、わたしだからこそできることも、きっとある』 -
この本、北上次郎氏が推しているのを見て、新刊で出た少し後に中古本屋で見かけた時に買おうと思ったのだが、表紙を見て手を出すのをちょっと躊躇った。
「おすすめ文庫王国2021」の第1位だったので、改めて探し直して、今度は購入。普通なら絶対買わないな。
第1位の推しコメントの中に『途中から涙が止まらない』とあったが、まあ確かにウルウルするところは多かった。
歳を取って涙腺が弱くなるのは如何ともしがたいが、そういうところを刺激する場面が次々と配された、ツボを押さえた作りではある。
生きている間ずっと付き合い続けなければならない身体のハンデを負いながら、それを受け止めて生きる決意をした人々、本人だけでなく家族や友人や近しい人たち、に対する描き方も良い。
テニスに限らず車いすで競技する人って確かに凄いなと思う。車いすを動かすだけでも大変だろうに、それをしながら球を打ったり走ったりぶつかり合ったり。
そういう車いすスポーツの世界と、それを支える競技用車いすの製作の現場についても勉強になった。
親友の宝良と約束し最高の車いすを作ることを目指して老舗の車イスメーカー・藤沢製作所に入社した百花、のストーリーはまあそれなり。
社長や上司や先輩が全て良い人で良かったけれど、実社会ではなかなかそうはいかないぞ。
小田切が何度もくり返す『その人の本当の気持ちに向き合う』『その人のために何が最善かを考える』というのは、仕事をする上ではとても大事なことだな。
一度大きな失敗をしながらそれを糧にして変化成長し、そして今、後輩を指導する小田切の姿は、お仕事小説として良いところあり。