- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087440911
感想・レビュー・書評
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車いすテニスを舞台にしたスポーツ小説です。
今までパラスポーツを題材にした小説って読んだことありませんでした。車いすでテニスってどういうものなのだろうかとyoutube見てみましたが、想像以上にスピーディーで驚きました。
テニスで上を目指していた少女宝良が事故によって車いす生活になり、絶望の中でやはりテニスに活路を見出し、がむしゃらに進んでいく姿と、彼女の親友であり一番のファンでもある車いす制作に燃える百花の真っすぐな友情にぐっと来ざるを得ない名作です。
感動させようと思って書いているわけではないシーンで、不意に胸が熱くなって間が霞んでしまいます。
この本は車いすプレイヤー「宝良」サイドの一冊で、もう一冊は車いす制作側の「百花」の物語のようです。そちらもめっちゃ楽しみです。
超攻撃的で勝気な宝良のキャラクターがお涙頂戴を拒否していて清々しい一冊です。 -
百花編も良かったが、こちらもいい。
もがいて苦しんで、それでも前へ進もうとしている登場人物たちがとても愛おしい。
頑張れ、よく頑張ったね、と思わず声をかけたくなる。
解説にも書いたあったが、泣ける箇所が何個かあるわけではなく、
何かもう常に涙がじんわりとしているのだ。
とてもいい本だった。 -
どこまでもクールビューティな宝良がカッコ良すぎる!
世界一の車いすテニスプレイヤー玲との死闘は圧巻!
百花と好対照。
百花と宝良の関係がほんと泣ける。
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いやぁ、宝良最高だ。熱い熱い熱い、クールなのに熱い。
Side百花で感じたもやもやはひとかけらも残らないくらい吹っ飛ばされましたよ。素晴らしかった。
百花が前のめりになって自分の実力以上のものを求める姿にちょっとイラついていたのだけど、宝良の側の物語を読むことで百花の高望みや焦り、そして無駄に大きな期待、そのすべてを飲み込めた。宝良に吹っ飛ばされた。
百花編と同じような時系列で語られるのかと思っていたのだけど、宝良編は百花編の流れのまま続いている。
とある事情で精神的に崩れ結果も出せなくなった宝良の復活の物語。
二人が目指すその頂に君臨する七條選手との決死の戦い。そのすべてがすさまじい。まるで目の前で試合を見ているような臨場感。サーブを打つ時の彼女たちの声や、流れる汗、ふり抜かれるラケットが空を切る音まで感じられるようだ。
決勝戦前の眠れない二人の邂逅。語れれる思い。美談だけで終わらせない現実も描かれる。
死闘、としか表現できない戦いを終えた二人の姿、そしてそれを見守っていた百花たちの言葉に、そして七條に救われた宝良と同じく宝良に救われたみちるの手紙に涙が止まらない。
感動の涙?いやそんなわかりやすいものじゃない。障がいを持つ人も持たない人も同じように、一緒に当たり前に暮らす、ということ。パラ・スターが特別じゃなくなる日、そんな日がきっと来る。 -
side百花に続き熱くなりました
面白くて一気読みしました -
車いすを作る百花と車いすテニスでパラリンピックを目指す宝良。二人の友人としての関係性や車いすや車いすテニスを通して感じるそれぞれのこと。人に寄り添うことや、その人の気持ちを想像すること。一歩踏み出して欲しいという願いと、わかってても踏み出せない一歩。その時間の二人のやりとりがとてもいいしそれを乗り越えた後の展開やラストの50ページほどの試合のシーンは圧倒されてしまう。〈Side百花〉〈Side宝良〉どちらも本当にいい小説。
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読み始め 2021.8.7
読み終わり 2021.8.21
パラ•スター(Side 百花)の続きで読んだ。宝良の視点メインで描かれている。高2の時に事故で下半身不随となった宝良が東京五輪に出場するまでの、軌跡を書いたスポーツ小説。テニスの試合の描写が事細かに書かれていて、リアルだったし、幼馴染2人の会話や宝良とコーチとのやり取りは感動する場面もあった。お気に入りのシーンは、雪代コーチと宝良がコンビを解消する場面。雪代コーチの病気をきっかけに雪代から志摩コーチに代わるところ。宝良は幼い頃から雪代の元で教わってきたから、すごく辛い別れだったのだと思う。しかし、雪代とは別の視点から教えてくれる志摩を信頼して、練習して、物語終盤のジャパンカップでは七條との熱戦を繰り広げており、すごかった。
とにかくたくさんの感動をもらった1冊だった。
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最強の車いすテニス選手になると決めた君島宝良。
最高の競技用車いすを作ると決めた山路百花。
<side百花>が文字通り百花から見た日々に対し、
<side宝良>では宝良から見た日々が描かれる。
交通事故に遭って下半身不随となって数年で、
車いすテニス日本ランキングの2位まで
宝良は駆け上る。
傍から見ると”順調”に見えても、
当人にとっては輝きばかりではない。
苦しくて挫けてしまいそうな日々だ。
敗北の恐怖に苛まれ逃げ出したくもなる。
車いすの生活の大変さも描かれる。
ただでさえその日々は困難なのだ。
その上に世界中を転々として、
テニスのトーナメントを戦い続ける過酷な日々。
ライバルたちの姿が実像以上に大きく見える。
観客や取材者の何気ない言葉が心を悩ませる。
すっかり自信を無くし、
コートに立つ意味を見失いそうにもなる。
そんな彼女を救うのはコーチや仲間・関係者。
ライバルたちも何かと刺激をしてくれる。
そして何と言っても親友の百花の
必死さ懸命さが宝良の心を目覚めさせる。
互いに自分の道で頑張りながら、
支え合う二人の姿がいい。 -
続いて宝良の話に入る。
宝良はSCCトレーディングという企業に所属するプロのテニスプレーヤーとなっているが、障がい者雇用率が来る3月に2.3%に上がる中、世の中の障がい者雇用の状況はまだまだ雇わなければならないから雇うという側面が多い現状。
ここに書かれている宝良の環境はかなり特殊な部類に入るが、とは言え、こういうところにもきちんと言及されているところは良いと思う。
みちるの話を通じて、障がい者もまた障がいがあるだけで同じ人間だということが分かる仕掛けだが、それぞれの人がそれぞれの特性に応じて活躍できる社会にしていこうという、この本のスタンスも好ましい。
物語は、スランプに陥った宝良が不調のどん底から這い上がりジャパンオープンに挑む姿を描く。
相変わらずウルウルする場面も多いが、それなりに人物やエピソードはしっかり描かれている。
何より『勝つことよりも、自分に恥じない自分を育てていくことが大事』という雪代の言葉が重い。
ラストの七條玲との戦いの描写には結構ドキドキ。
何より戦う相手が、玲にせよギーベルにせよ、宝良のことを認めて互いに高みを目指そうとしている人だと分からせてくれる件りがあるのが良い。
また、宝良とみちる、それぞれの母娘の関係を見れば、前巻にもあったように大変なのは本人だけでなく周りも含めてそうなのだと思わされる。
二人とも家の中にエレベーターをつけたり自分用に車いすをカスタマイズ出来たりする家庭の子だったが、そうでない場合はどうなるのだろうと考えさせられた。
作中『歯を食いしばりながら散らばった破片を拾い集め、つなぎ直し、長い時間をかけてやっと平穏をとり戻す。それでもまた隕石は降ってくるのだ、必ず』とあるが、人生の試練は、健常者にも障がい者にも、金持ちにも貧乏人にも、等しく降りかかってくるからな。
宝良が車いすを変える経過や試合会場でのリペアの仕事振りを通じて、今回もまた競技用車いすのことについて更に良く分かった。
どの競技にせよ道具の大事さというのはあると思うが、それにしても数ミリの違いが戦いに影響を与えるというのは想像を超える。メーカーやリペアの人も一緒に戦っているという感じだろうか。
また、車いすテニスができる環境は全国どこにでもあるわけではないということも良く知れた。
私が見たネット記事では『車椅子テニスの日本での競技人口は1,000人位で、その中で大会に出場するのは100人前後と言われている』とあったが、その中で国枝選手とか上地選手のような、私でも名前を知っている人が出て来るのは凄いな。
本の中では開催された2020年のジャパンオープンは、実際にはコロナ禍により中止され、今年の大会も既に中止が決まっている。
延期された五輪の行方も不透明なままだが、多くの人にとって良い形で開催を迎えられる日が来るれば良いと思う。そして、その時には車いすテニスも是非中継して欲しい。