怖い話を集めたら 連鎖怪談 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087440942

感想・レビュー・書評

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  • またも思ってたのと違うパターン。「連作怪談」ではなくて「連鎖怪談」だった。読み進めるごとに怪異が強くなっていくやつね。
    恋愛小説家の齋藤いつきは旧知の編集者出水青葉からノベルアプリ開発のため体験者から怪談を聞いて形にする仕事を依頼される。体験者ごとの怪談が描かれていくだけなのかと思いきや、いつき自身も悪夢を見たり、奇妙な出来事が増えていき……
    最後まで怪談をそろえたら死んでしまうよと言われて、ようやく創作時の高揚感も仕事への執着も「何か」に操られていたといつきは気づくが、それでも言動がコントロール出来ない場面とかはたしかに恐ろしいかもしれない。……が、何だろう。このテの話を読み慣れてしまったからか、「ああ、またか」という感じだった。最後に出水が語る「憑くもの」の正体も然り。女を道具としか思わない一族には違う意味で恐ろしさを感じるけども。
    それよりも作者さんが官能小説も書いてるからなのか、性愛や嫉妬など女の情念が意外と多くて、そんなつもりで読んでなかったからか胸焼けがした(笑)。
    各(実体験と銘打った)怪談も、実話怪談というより怪奇小説に近いテイストを私は感じた。スルスル読めたから面白かったのだろうけど。

  • 本屋で表紙買い。なにかありそうな不気味な雰囲気が期待高まる表紙。
    同時期に同じような「女性作家が怪談を集める短編形式の物語」という内容の「かわうそ堀怪談見習い」を読んでいたが、最初の設定は似ていながら話自体がもつ雰囲気が全然ちがってそれぞれの怪談に対するアプローチの仕方が面白い。
    こちらはがっつりホラー。表紙からあらすじから、「怖いことが起こるよ!」と予告されているし、実際怖い(そりゃそうか) 著者の作品は初めて読むが、元々恋愛方面を書かれている作家さんだそうで、その類いの描写がじめっと良い感じに気味が悪くて良かった。
    また、怪談特有の「登場人物がどうなったか分からない結末」が好きなので、その要素もあって嬉しかった。

  • なかなか面白かった。連鎖怪談とあるように、アプリのシナリオ制作のために怪談を集めている設定なので短編の怖い話が5つ入っている。
    「御嫁様」は中々不気味だった。面そのものもえげつないけど、それを聞いてもなお魅入られている当主がやばい。
    「黒い顔」は死期の近い人間の顔に黒いもやがかかって見えるという話。こういうのはたまに聞くタイプ。それとある意味事故物件の話という感じか。露骨に幽霊が出てくるとかじゃない分質が悪い。
    「揺れる」はそれまで脇役かと思ってた担当編集者の話。結局あの男が何かしていたのか、彼に憑いた何かがやっていたのかはっきりとしなかったけど、普通に人としてあの男はやばいだろと思った。あとホラーの割にやけに性に生々しい描写あるなと思ったら、そもそも作者が本来そっち系だったみたい。知らなかった。と言う事はこの作品の主人公は作者自身をモデルにしてるのか。
    「空き家の話」これは普通に面白そうな話だったのでもう少しちゃんと読みかたかった。まぁ夜中に語りに来た従姉妹の子供自身がすでに死んでいたというオチはなかなか良かったけど。
    「憑くもの」最後の話はちょっと駆け足かつ強引な感じで終わっちゃった印象。出水自身は最低最悪だし、いつきが助かったのは良かったけど、ちょっと展開早かったな。出水の家の話も興味深くはあった。最低だけど。

  • 会社同僚と交換本第三弾、初読み作家の深志美由紀さん。呪いにまつわる怪談本。うーん普通、別に怖くない。もっと怖いのを期待していた。著者の得意分野は官能小説のようでその片鱗もちらほら。怖い方に特化して欲しかったかな。

  • 楽しく読めた。
    呪いはシステマティック。
    邪魔が入らなければ、ドミノ倒しの様にただただパタパタと進む。

  • 恋愛小説家であるいつきは、昔の知り合いである編集者の出泉からノベルアプリで使用する怪談の取材、編集を頼まれた。仕事に困っていたいつきは、快諾するがいざ仕事を始めると奇妙な事に「呪い」にまつわる話ばかりが集まり始めた。

    主人公であるいつきが仕事を通して5つの怪談話を収集していく。そのどれもが呪いに関する内容で、おどろおどろしい。また、家を繁栄させるため生贄としての嫁、捨てられた妻と赤ん坊、男に心酔する女など男女の痴情の果てから生まれた呪いばかりで嫌悪感が募り、非常に気持ちが悪い。怪談を読んでいる間はドキドキしたり、終始胸焼けに苦しんだりと忙しかったが、とても読みごたえがあった。怪談もさることながら、この小説の主軸である「呪い」の本質について言及している部分が興味深い。呪いは『効く』んです。信じていようと、いまいと。 このセリフを見て非常にしびれた。腑に落ちたというのが一番近い感情か。何故人々は呪われてしまうのか。 呪いはある種のシステムで、正しい順序を踏めば簡単に人間に効く。「リング」ならば呪いのビデオて、「呪怨」ならば呪いの家に踏み込んで。呪殺された彼らは、自ら正しい手順を踏んで呪われた。呪いは正しい手順を踏めば、誰にでも効く。 なるほど納得である。最後の不穏な感じもよく、久しぶりに読み切った!爽快!という感じ。それにしても出水気持ち悪すぎる。倫理も道徳のねじも何もかんも吹っ飛んでる。

  • 一つ一つの話はめちゃくちゃ怖かった。特に『黒い顔』。『揺れる』の語り手が無自覚に狂気にのまれていくのも恐ろしい。
    全体のオチとしては弱かったような。

  • 主人公である作家の視点から、怪談話を体験者に聞いていくという連作ホラー

    最終的に結末含め不気味な和風な怪談というより、呪いをシステマティックに捉えて物語は収束するが、抗う術を持たない人間が異世界を垣間見てしまう、深淵を覗く怖さに帰結するのは面白い

    個人的には、恋愛の時の不安感を吊り橋効果のように怪談の恐怖にすり替える「揺れる」が非常に良かった

  • 『呪い』ってたぶん本当にあるとワタシは思っているのでいちばん怖いのは生きている人間だなーという感じです。
    呪いは『効く』んです。たとえあなたがそれをしんじていようと、いまいと。
    さいごの出水のはなしが本物だと思いました。

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著者プロフィール

深志美由紀(みゆき みゆき)
神奈川県出身。2001年集英社コバルトノベル大賞佳作受賞。2010年『花鳥籠』で第一回団鬼六賞優秀作受賞。官能小説を中心にティーンズラブ、恋愛小説、エッセイ、漫画原作など幅広く活躍。人の暗部を抉る作品群に、多くの読者が魅了されている。

「2023年 『人妻堕姦の夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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