江戸川乱歩と横溝正史 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087441901

作品紹介・あらすじ

江戸川乱歩「君、こんど『犬神家の一族』というのを書くだろう。ぼく犬神だの蛇神だの大嫌いだ」
横溝正史「復活以後の江戸川乱歩こそ悲劇のほかの何者でもない」

日本の探偵小説を牽引した二大巨頭、江戸川乱歩と横溝正史。
盟友として、ライバルとして、お互い認め合い、時に対立しつつ、
一方が作家として執筆するとき、他方は編集者として支えた。
太陽と月にも喩えられる日本文学史上稀な関係は、どのように生まれ育まれたのか。
二人の大作家の歩みを辿りながら、日本のミステリ史のみならず、
日本の出版史をも描き出す、空前の対比評伝!

「江戸川乱歩と横溝正史――二人を太陽と月に喩えることができるかもしれない。
乱歩が旺盛に書いている間、横溝は書かない。横溝が旺盛に書いていると、乱歩は沈黙する。
天に太陽と月の両方が見える時間が短いのと同様に、
二人がともに旺盛に探偵小説を書いている時期は、ごくごく短いのだ」〈本文より〉

「おそらくは、親友でもありライバルでもあった。
だが、何よりも面白い探偵小説を求める同志だった。
二人がなぜ探偵小説を書いていたのかと言えば、
面白い作品がないので自分で書いていたに過ぎない。
乱歩は誰よりも横溝に読んでほしかったし、
横溝もまた乱歩に読んでもらおうと書いていた」〈「青春と読書」2017年11月号より〉

●目次
第一章 登場――「新青年」~一九二四年
第二章 飛躍――『心理試験』『広告人形』 一九二五年~二六年
第三章 盟友――『江戸川乱歩全集』 一九二六~三一年
第四章 危機 『怪人二十面相』『真珠郎』 一九三二~四五年
幕間 一九四〇年~四五年
第五章 再起――『黄金虫』『ロック』『宝石』 一九四五~四六年
第六章 奇跡――『本陣殺人事件』 一九四六~四八年
第七章 復活――『青銅の魔人』 一九四八~五四年
第八章 新星――『悪熊の手毬唄』 一九五四~五九年
第九章 落陽――乱歩死す 一九五九~六五年
第十章 不滅――横溝ブーム 一九六五年~八二年

【著者略歴】
中川 右介(ナカガワ ユウスケ)
作家、編集者。1960年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。出版社勤務の後、アルファベータを設立し、代表取締役編集長として雑誌『クラシック・ジャーナル』、音楽家や文学者の評伝や写真集の編集・出版を手掛ける(2014年まで)。その一方で作家としても活躍。クラシック音楽への造詣の深さはもとより、歌舞伎、映画、歌謡曲、漫画などにも精通。膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、歴史に新しい光を当てる執筆スタイルで人気を博している。主な著書に『カラヤンとフルトヴェングラー』『歌舞伎 家と血と藝』『角川映画1976-1986』など。

感想・レビュー・書評

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  • 読むのに時間が掛かったけど面白かった。

    乱歩と横溝正史の仲が良かったとは知らなかった。探偵小説と出版社の歴史が分かるので、NHK辺りでテレビドラマ化したら面白いものになりそうだ。(もうあるのかな?)

  •  江戸川乱歩と横溝正史。ある程度以上のミステリー(この場合は探偵小説と言った方がふさわしいか)ファンならば、この名前に、ドキドキやワクワク感、あるいは畏敬の念といったものを感じるのではないだろうか、

     と言いつつ自分は、角川文庫ブームのときに横溝作品に触れたものの、乱歩についてはミステリーの紹介者、啓蒙者の立場からの評論から読み始まり、「孤島の鬼」や「陰獣」にハマり、少年探偵団シリーズは比較的最近読んだという読書遍歴である。

     本書は、作家としても編集者としても活躍した、友人でありライバルでもあった両者が時に交わり、時に離れた、その関係性に焦点を当てて描いた、二人の評伝である。  

     これまで断片的には知識のあった両者の作家人生をまとめた形で知ることができて新たな発見があったし、作品に対しても新たな見方ができそうだ。

     補助線として両者の作品を発行、発売した出版社の栄枯盛衰の歴史が語られ、これもまた興味深かった。

  • ※登録漏れ

  • 日本推理小説史に必ず載るであろう2人の関係がよく分かった。活躍時期がズレているのが面白い。特に『陰獣』に編集者として横溝が関わっているのは興味深かった。
    友情嫉妬など紆余曲折あっても2人とも面白い探偵小説を読んでもらいたいし読みたいという軸がブレないところは凄い。
    2人だけで無く他の作家も取り上げているので大正から戦後までのミステリーの歴史が何となく分かる。松本清張との関係も頷けた。

  • 江戸川乱歩の作品を初めて読んだのは、福岡の母の実家だったと思う。
    僕は小学校四年生で、伯父の葬儀に帰省して、従兄弟たちと一つ部屋でゴロ寝をするのに、そこにあった少年探偵団シリーズの「影男」を読んだのが最初だ。
    この本によれば、大人向けの乱歩の小説を他の作家が子供用に書き直したものらしいが、夢中で読んだ覚えがある。
    中学になって、一年の担任が、各自本を持ち寄って学級文庫を作ることを提案し、僕は「ルパン対ホームズ」「海底5万マイル」の二冊を出した。
    ポプラ社の少年探偵団シリーズを数冊出している友人がいて、それを全部借りて読んだが、買ってもらうまでには至らなかった。
    中1の秋頃から、自分で文庫本を買うことを覚え、読書が好きになった。
    中2の夏休みに、静岡の伯父の家に行き、既に働いていた従兄弟に沼津まで遊びに連れて行ってもらい、そこで初めて横溝正史の「悪魔の設計図」を買ったのだ。
    それは、由利先生ものだったが、ルパンや少年探偵団とは全く違ったものに思えて、その後、「犬神家の一族」を読んで、横溝正史中毒になった。
    僕は解説まで読む方なので、海外の推理作家などにも、名前だけは詳しくなった。
    乱歩の作品も角川文庫で出ていて、全部読みたいと思ったが、半分も読まないうちに、他の作家に興味が移っていった。
    横溝正史も読んでいる時は、全部読みたいと思い、大抵読んだが、それでも八割くらいしか読めなかったろう。
    少年時代から、青春前期まで、本当に横溝正史には夢中になった。
    映画は全部見たし、テレビシリーズも全部見たと思う。
    江戸川乱歩の講談社文庫の全集が出た時は、全巻揃えたいと思ったが、それも果たせなかった。
    今はまだ、光文社文庫で全集が手に入るので、揃えたいと思っている。
    横溝正史も一昨年だかに、コロナ禍だったが由利先生のシリーズがテレビドラマになって一部の作品が昔のカバーで復刊した。
    文庫も週刊誌化している現在、未だに残っているのは実は凄いことかもしれない。
    少年探偵団シリーズはポプラ文庫で読むことが出来る。

  • 【所蔵館】
    総合図書館中百舌鳥

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000951843

  • 中学生の自分には怪奇的すぎる表紙だった
    あまりの恐ろしさに目が離せず買い始めた
    角川文庫横溝正史シリーズ
    アタクシの推理小説への一歩である
    毎年20冊は出るので買う…小遣い全滅w
    本書は二人の推理小説の産みの親を軸に出
    版業界の歴史をも描く興味深い一冊
    40年昔なので記憶力乏しい身にはアレです
    が小栗虫太郎・坂口安吾・甲賀三郎・海野
    十三・大下宇陀児・都築道夫・高木彬光・
    鮎川哲也・二木悦子・・・甘酸っぱく懐か
    しい思い出です(内容の記憶は全滅ww)
    時代背景から殺人事件が書けず捕り物帳に
    逃げたり、GHQの制約で推理小説復権の場
    ができたり
    読むべし(´・ω・`)

  • 文庫でここまでの質量を備えた評伝を読む事が出来て大満足。乱歩と正史の「正史」の一つとも言えるのではないか。

    巻末解説で松山巌の「乱歩と東京ー1920 都市の貌」や久世光彦の「一九三四年冬ー乱歩」が挙げられているが、これらに勝るとも劣らない、相互補完する名著・快作だと思う。

    カバーが市川崑のオープニングを彷彿とさせ、ビジュアル的にも好ましい。

    乱歩の少年探偵シリーズやテレビドラマ、正史の角川が仕掛けたメディアコンプレックスを懐かしいと感じる全ての人々にオススメ。

    年跨ぎの読了となったが、新年一発目として幸先のいい一冊となった。

    田村書店天下茶屋店にて購入。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。「カメラジャーナル」「クラシックジャーナル」を創刊し、同誌のほか、ドイツ、アメリカ等の出版社と提携して音楽家や文学者の評伝や写真集などを編集・出版。クラシック音楽、歌舞伎、映画、漫画などの分野で執筆活動を行っている。

「2019年 『阪神タイガース1985-2003』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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