金の角持つ子どもたち (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442526

感想・レビュー・書評

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  • 中学受験をする男の子と、それを取り巻く人たちの物語。

    感じたことをいくつか。

    一つ目は子どもにやりたいことをさせたいと奮闘する親の姿。やりたいことをさせてあげようとするのも凄いけど、学齢期にそんな気持ちが芽生えて、強い意志が持てて、更にそれを発信できるという家庭環境が子どもにとってどれだけ大切か。
    スクリーンタイムが増えたこの時代にも、家族との対話は必要。

    二つ目は塾講師である加治先生の人間味のある生き方・生徒への眼差し・個々の性格に合わせ、それぞれの将来を見据えた指導や関わり。これこそが「教育」だと考えさせられた。子どもの将来は関わる大人によって良くも悪くも変わる。とても簡単に。

    三つ目は受験というのは通過点だということ。
    結果に限らず、頑張った後には確かな努力が残る。目標に向かってひたむきに何かに打ち込んだ経験は、その先で必ず自分を支えてくれる。努力は成功の礎となる。

    勉強(学び)は社会に出るための「武器」。
    一生懸命取り組むと生えてくる「金の角」は可能性。未来の可能性は人それぞれで、必ずしも勉強とは限らない。そんな風に、子ども達の未来を育てていける大人でありたいと思う。
    個人的には、受験に奮闘する姿もそうだけど、受験後の子ども達やその周りの人たちの人生を、もっともっと読みたかったです。

  • 若干12歳で目標を持って、喘ぎながらもがきながら、がむしゃらに努力する子ども達の姿に強く心を打たれました。中学受験の大変さを知らなかったので、それが知れたのもとても良かった。
    また、我が子を応援するお母さんと全力でサポートする塾の加地先生が、子どもとの向き合い方に惜しみない愛があって、何度も涙腺崩壊。

    これは、今年中に読むぞ!!と宣言して、早速読んで本当に良かった本でした^_^

    “努力したことが無駄になることは1つもない!!”

  • 藤岡陽子さんの本は3冊目。
    初めて読んだのが『手のひらの音符』だった。
    この本がとっても良くて!
    その後が『陽だまりの人』
    そして、この『金の角持つ子どもたち』は
    久々の一気読み!
    いやぁ~、いい本だった!!!


    サッカー日本代表になることを夢見ていた小6の戸田俊介が
    突然、「中学受験したい」と言い出した。
    目指したのは日本最難関と言われる偏差値70越えの中学。
    無謀ともいえる挑戦に挑む俊介を支えるものは…

    『金の角』とは
    文庫の帯には「金の角。それは、未来を指し示す希望の光」とあるが
    本を読んでいくと
    あぁ~、金の角ってそういうこと!
    と、驚きと感動が押し寄せてくる。
    そして、確かに「希望の光」だと実感する。

    この小説は
    小6の俊介、その母親、塾講師、3人の視点から語られている。
    読み始めたら、途中で本を閉じられなくなって
    どんどん感動の渦の中に巻き込まれ
    ラストでは胸がいっぱいで、涙を流していた。
    いい本だった。

  • 読書備忘録731号。
    ★★★☆。

    努力。そこに向き合う姿勢と行動は絶対に報われる。
    ということを老若男女区別なく伝える物語です。

    主人公は戸田俊介。小学6年生。サッカー日本代表の夢に向かって打ち込んできた。しかし、地区のトレセンの選抜に漏れた。ただ、失意に打ちひしがれていたのはちょっとだけ。
    俊介は日本最難関の中高一貫校、東駒(筑駒やろ!と突っ込み笑)へ進学することを新たな目標とする。
    将来やりたいことがあると・・・。

    俊介の家族は母の葉月、父の浩一、耳が聞こえない妹の美音。物語は3部構成。

    「もう一度、ヨーイドン」俊介が受験を決意し難関校合格請け負う塾Pアカデミーに入塾するまでの葉月視点の物語。
    「自分史上最高の夏」夏期合宿を含め、最も実力を伸なさないといけないシーズンにおける俊介視点の物語。
    「金の角を持つ子どもたち」受験まで残り2ヶ月、俊介を試験に送り出すまでのPアカ講師加地視点の物語。

    毒母の命令で高校中退し働き出した過去を持つ葉月。高卒で自動車販売店の営業一筋の浩一。
    戸田家はトンビだ。トンビは鷹を産まない。トンビはトンビだと受験するだけ無駄と言う浩一。しかも塾に掛かる莫大なお金はどこにもないと。
    葉月は自分が働くという。美音もお母さんが仕事終わるまで学童で頑張ると。お兄ちゃんがんばれと。
    中学受験なんて意味がないという義母の執拗な干渉をばっさり断ち切り、俊介をPアカに送り出す!
    そして葉月自身も新たなチャレンジを!俊介と葉月の、もう一度、ヨーイドン!

    俊介。夏合宿は最下位ながら好成績組の合宿に滑り込めた。しかしそこには過酷な現実が。寝る間も惜しんで問題に取り組む。しかし思うように成績が伸びない。
    学校の友達や周囲が中学受験なんてやめて人生で1回しかない小学6年を伸び伸び楽しもうと誘惑する。
    折れる心。支える加地・・・。俊介の努力は誰よりも凄いと。成果は出ていると。努力は報われると。

    加地。弟の直也は社会不適応でうまく働けない。原因となった親の直也に対する仕打ちを止められなかった自分にも責任がある。子供のころ、直也は努力していた。その努力を認めようとしなかった親を止められなかった。
    努力は絶対に報われる!という武器を子供たちに与えるために塾講師になった。
    努力している子供たちの頭からは金の角が生えている!
    そして俊介。東駒をめざす生徒は3年生、4年生から塾に通う。俊介は6年から。わずか1年では正直厳しい。でも誰よりも努力している。合格できるかどうかは正直怪しい。しかし俊介の人生においてこの努力は絶対に武器になる。どんなに厳しかろうが第一志望は変えない俊介を送り出す!俊介の合否は如何に!

    感動ですよ。感動。
    でも、努力するってほんとに難しい。ヒトはすぐにサボる。わたしは毎日サボる。明日もサボる。明後日もサボる。
    こんなに努力できる小学6年生たち!
    リスペクトしかない物語でした。
    そして、俊介。そんな十字架を背負うなよ!と言いたい。誰のせいでもない。

    出来すぎの物語にちょっと冷めて読んでしまった★3.5でした。笑

  • 「2月の勝者」をドラマで観ていたので、中学受験の流れはあらかた知っていたので、特に真新しいことはなく、内容も前者の方が激しくドラマチックだった。我が家の子供達には金の角が生えてくるかなー

  • 努力の大切さ。
    そのことを、改めてこの本を通して知ることができた。俊介の幼いながらに抱えた苦労、その俊介を支える家族、俊介の考えを優先させ、必死に同じ気持ちでサポートした加地先生。
    それぞれの人物がそれぞれの思いをもって、挑んだ中学受験。結末はまさかだった。
    読み終わった今、涙が止まりません。
    金の角をもつ子どもたちを増やしていきたい!私もそう思いました!

  • 最初から最後まで、なんか無性に涙が出て、泣きながら読みました。私が小学生の親で、教職に就いていて、塾講師の経験もあるからなのか、そうじゃなくてもこんなに泣けるものなのか、分からないけど。
    俊介は小学校5年生。サッカー少年だった。一生懸命、サッカーに打ち込んできた。が、選抜メンバーに選ばれなかったことで、サッカー日本代表になる、という夢に限界があることに気づき、勉強を頑張って、別の生き方を見つけよう、と心に決める。
    子どもがそう言い出したとき・・・。親は、悩むよね。一回、メンバーから外されたくらいで諦めるのか?サッカーをやめて勉強を頑張る、なんて、どこまで本気なのか?逃げてるだけじゃないのか?だけど、俊介がそう思った背景にはいろんなことがあって、一緒に勉強を頑張ろうとする友達もいる。母親は、彼の気持ち、全部を理解しているわけではないけど、彼が本気だと言うことは感じるし、理解しようと努力する。あぁ、私も、息子にとって一番の理解者でありたいと思う。(なぜか娘より、息子にとって、と強く思う。娘、ごめん。娘はなんとなく、自分と似ていて、けっこういろいろ、”大丈夫”と思うからかな)。
    俊介の母は、家庭の事情で高校も卒業できなかった。父親の方も、教育熱心な家庭ではなかったので、中学受験なんて思いもよらなかった。俺の子がそんなに優秀なはずがない、どうせ無理だろう、くらいに思っている。
    この夫婦の、ごく日常のやりとりも、なんだか泣ける。2人とも生活水準が低い家の出身で、自分たちの生活も、世間一般より恵まれていないと自覚しているが、一生懸命、支え合って、思いやり合って暮らしている。下の子(娘)は先天性の難聴で、いろいろな制約もあるが、家庭は決して暗くない。逆に、子どもに障害があるけど前向きに生きていこう!みたいな極端な描き方もされていなくて、ナチュラルで、でも時々、末っ子に障害があるからこそ生まれる思いやりや、些細な喜びが描かれていて、それもなんだかじんわりと心に刺さる。
    とにかく俊介の頑張りが、すごくて、泣ける。
    そして理解しようと、苦しみながらも努力して、その先に光を見つけるお母さん、お父さん、塾の先生。全員の姿が泣ける。
    俊介の小学校の担任の先生だけ、中学受験に否定的で、余計なことを言うんだけど(笑)、それも良いスパイスで、俊介はそれすらバネにして進んでいく。親も、担任も、子どもの姿を表面的に見ないで、子どもの行動には必ず何か、理由があるんだって、考えるのが基本よね、と思いました。私も心にとめておかなくては。
    余談ですけど、うちの息子は妹にめっちゃ意地悪で、いつも夫にガミガミ怒られているけど、私は彼が妹に意地悪する理由がなんとなく分かるのよね(笑)。だから怒れない。下の子には悪いけど。彼も、なぜ自分が妹に意地悪してしまうのか、うまく説明はできないと思うのよね。私も言葉で説明はできないんだけど。夫は私が息子をちゃんと叱らないから、それも腹が立つみたいなんだけどね。
    子ども・児童生徒理解って難しい!でも、なんとなくわかるよ、とか、分かってるよ、分かろうと思っているよ、っていうメッセージを送ることこそが大事なのかな、と思います。
    私としては、最初っからお母さんに感情移入してしまったので、後半は塾の先生中心のお話になっちゃったけど、もうちょっとお母さんを描いて欲しかったです。

    ちなみに・・・
    私は20年教職に就いていて、金の角を見たことが一度だけ、あります。中学3年生はだいたいみんな、受験前に目の色が変わるけど、まぁ、それは普通。みんなが目の色が変わっている中、本当に角が生えているくらいすごかった子、1人いたな。あれが、金の角だったんだな。

  • 物語に夢中になりました。
    何に取り組むか、ひとりひとり違っても努力を続けることで日々成長できる。結果はどうであれその過程に目を向けると、また違う何かを見いだせる。
    やる気をもらえる本です。

  • 自分を変えるために、夢をかなえるために尽くした素直な力ほど強いものはないのかもしれない。
    主人公の男の子がかわいくて、いつのまにか心から応援。

  • 生き方を変えたいと中学受験に向けて奮闘する俊介。
    読みながら、心から応援しました。

    登場人物がみんな良かった。
    母の菜月が、中学受験に反対する義母に言う「応援してくれとは言いません。でも全力で頑張る俊介に、沿道から石を投げるようなことはしないでください」がとても響いた。

    塾の先生もまた、自分の生き方を変化させ新しい道で精一杯努力を続けている。
    その姿にも非常に引き込まれる。
    ただ自分の両親への思いは、読んでいて耳が痛い。
    私が親としてどうだったのか、反省させられる部分もある…。

    今まで読んだこの作者の作品の中で、今作は一番好きだなと思う。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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