ナポレオン 2 野望篇 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087444100

作品紹介・あらすじ

【祝!第24回司馬遼太郎賞(2020年度)受賞】

たった一人の男の野望が、ヨーロッパ全土を震撼させる。
フランスの英雄から、ヨーロッパの覇者へ。
歴史巨編、激動の第2巻!

イタリア遠征でオーストリア軍との戦いに歴史的な勝利を収めたナポレオン。次に向かったのは、古代文明の地・エジプト。イギリスと、その植民地インドとの連絡を断つために、大軍を差し向けた。
灼熱の砂漠を行軍し、華々しい勝利と手痛い敗北を繰り返す中で、彼は知る。イギリスやロシアをはじめとする諸外国が対フランス大同盟を結成し、フランス本国が危機に瀕していることを。
――フランスを救えるのは、俺しかいない。
急遽帰国したナポレオンはクー・デタで国を動かす権力を手に入れ、ついに1804年、34歳で初代フランス皇帝の地位に就く。そして、ヨーロッパ諸国との全面戦争に突入してゆくのだった。


【著者略歴】
佐藤賢一(さとう・けんいち)
1968年山形県鶴岡市生まれ。山形大学教育学部卒業後、東北大学大学院文学研究科で西洋史学を専攻。93年『ジャガーになった男』で第6回小説すばる新人賞を受賞。99年『王妃の離婚』で第121回直木賞を受賞。2014年『小説フランス革命』で第68回毎日出版文化賞特別賞を受賞。『ハンニバル戦争』『遺訓』『テンプル騎士団』など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • ナポレオンがフランス皇帝に上り詰める過程を描いた本巻。
    フランスの拡大を阻止すべく、最大のライバルとなるイギリス。それを牽制するためにナポレオンはエジプトに遠征。ある時は敗戦しながらも要所では勝利を収めるなか、フランス本国が政治的危機に。
    エジプトから帰還したナポレオンは、執政を経て皇帝に。その後も戦争を続けるなか、本巻の最後は有名なアウステルリッツの戦いでの勝利で終わる。
    イギリスがフランスに戦いを挑み続ける理由が、資本主義の発展をいち早く経験したから、という理由には非常に納得がいった。
    古典的名著の戦争と平和やレミゼラブルで語られる時代が展開されていく。フーシェは、彼が組織した警察機構が明治期の警察を作る際に参考にされたことで名前だけは知っていたが、想像以上の怪人物に描かれており、ナポレオンとの戦いは引き込まれる。
    あとがきで非常に納得したのはナポレオンが、海外の人物なのに他の偉人と比べて日本でよく名前を聞くことについて。幕末、維新に奔走した人々がナポレオンを一つの典型として活動していたことにある、という内容。歴史上、偉大な人物ではあると思うが、その中でも日本人により親しまれている理由が自分なりに整理されて、腹落ちした。

  •  ナポレオンを主人公にした3巻の小説の第2巻目。日本を舞台にした歴史小説ではないので地名などが登場してもややわかりにくいし、ナポレオン戦争の概要をあまり知らないままに読むと、歴史の流れはわかりにくい。ただナポレオン一人に焦点を当て続けているので、小説フランス革命よりはわかりやすい気はする。

  • 「できることなら、私は世界を征服したいと考えている。シャルルマーニュのように大帝国を築きたいと思っています。」(本文抜粋)
    ナポレオンがこうも自身の野望に突き動かされたのは、故郷コルシカから拒絶されたことにありました。(1 台頭篇参照)
    故郷の為に一身を捧げた結果、彼は憎きフランスへの逃亡を余儀なくされます。

    帰るべき故郷がないならば、ナポレオン・ボナパルトによる覇権国家をひとつ創ってしまえば良い。
    フランスにて常勝将軍の地位を確立するうち、彼はいつしか意識するようになります。
    今の地位は、そのための道具に他ならないのだ、と。

    第1章 冒険
     ナポレオンは国家の重鎮タレイランに野望を打ち明ける。
    「そのためには、戦場に出られてはいかがです」
    エジプトへ進路を決めるが、地中海に敷かれたイギリス艦隊の網をどう切り抜けるか。

    第2章 エジプト
     上陸、そして征服を果たすフランス軍だったが、イギリス艦隊提督ネルソンに帰路を閉ざされてしまう。イギリス艦隊の補給元シリアへ向かうも、そこではペストが猛威を振るう。

    第3章 権力
     エジプト遠征中、フランスは窮乏に喘いでいた。五総裁の無能を確認したナポレオンは、シェイエスと共にクー・デタの決行を決意する。

    第4章 戴冠
     今や第一執政と地位を確立させたナポレオンを、不意の爆弾が襲う。暗殺を企て、混沌たる革命の時代への逆行を望むのは誰なのか。

    第5章 覇業
     仇敵イギリスへの侵攻は失敗に終わった。それでもナポレオンは、自身の野望の為に未使用の軍隊を東のドイツへと向ける。

    見どころ
    1.フランスを常勝国に成らしめた戦術
    ナポレオンが率いる軍隊は、急行軍が当たり前でした。並み居る大軍に対し、一瞬でも数的に上回ることで勝利をもたらしたのです。移動手段が徒歩のみだった時代において、軍隊をいかに自由に出現させるかは勝敗を分ける要因だったと思われます。

    2.問題の尽きることがなかった女性との関係
    ナポレオンには妻がいましたが、醜聞の尽きることがない女性だったそうです。自身も常勝将軍の栄光を手に入れていたナポレオン、妻への仕返しか他国で女性との関係を作っています。そのような夫婦仲は軍隊内外問わず有名で、なんと仇敵イギリスでは戦争のプロパガンダとして利用されました。

  • この巻は、ナポレオンが権力者に。冒頭、まずはエジプト遠征。せっかく学者を連れていくことを書いているなら、ロゼッタストーンの発見も書いて欲しかった
    。その後はいろいろあってそれなりに面白いのですが、あまりエピソード的なものがなく、上辺をさあっーとなぞっているだけで、メリハリがないような気がしました。もっと戴冠の場面とか、しっかり書いて欲しかったなあと思いました。藤本ひとみさんのナポレオンの方がここまでは上かと思いますが、最後の転落篇でどうなるか、楽しみです。

  • フランス革命の違った側面が生き生きと感じられる。生きたナポレオンと、現代に繋がるヨーロッパ諸国。この時期なのか、なぜ戦争でしか解決できないと思うのか。
    思うようにならないながら、目の前を冷静に、時には激しく乗り越えていく。時代も味方したのだろうが、天性の戦略家であり戦術家でもあったのだろう。

  • いいじゃないか、イケイケな感じのナポレオン。なのに何か浮ついたというか地に足がついてないたたずまいを感じるのはなぜなんだろう。本当のところ、何を目指しているのかがよくわからないが、本人ももしかするとわからなかったということなのか。

  • ワクワク ぞくぞく

  • エジプト遠征、ブリュメール18日のクーデター、皇帝戴冠、アウステルリッツの戦い(三帝会戦)を描く。ナポレオンのイタリア遠征はハンニバルにならってアルプスを越えた。著者はハンニバルの小説も書いている。

    ナポレオンの睡眠時間は3時間という話は有名である。本書はナポレオンがいつでもどのような場所でも短時間で熟睡できたから3時間で済むと説明する。精神論根性論で頑張るという昭和の感覚ではない。

    ナポレオンは拷問による自白の真実性に疑問を抱く。「待て、待て。拷問といったな。拷問で吐かせたものが真実だといえるのか。警察が用意した名前を質して、ただ頷かせただけなのではないか」(371頁)。人質司法の現代日本よりも先進的である。

    『ナポレオン 2 野望篇』ではタレイランやフーシェというナポレオン没後も生き延びた政治家を存在感のあるキャラクターとして描いている。これは池田理代子『栄光のナポレオン エロイカ』と重なる。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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