- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087445718
作品紹介・あらすじ
スピリチュアルと科学が逆転した、架空の日本で繰り広げられる不条理劇。平熱は38度で、病気の原因はクスリを飲むこと――お祈りやおまじないですべての病気を治す世界を描いたディストピア小説。『皆勤の徒』『宿借りの星』で日本SF大賞を2度受賞した著者の新境地!結婚式場に勤める土屋は、38度の熱が続いていた。解熱剤を飲もうとすると妻の真弓に「免疫力の気持ち、なぜ考えてあげない」と責められる。……「三十八度通り」真弓の母は、全身が末期の「蟠り」で病院のベッドに横になっていた。すぐに退院させられ、今後はその病気を「るん(笑)」と呼ぶ治療法を始めることになる。……「千羽びらき」真弓の甥の真は、近くの山が昔の地図にはないと知り、登りはじめた。山頂付近で、かわいい新生物を発見する。それは、いまは存在しないネコかもしれなかった。……「猫の舌と宇宙耳」【著者略歴】酉島伝法(とりしま・でんぽう)1970年、大阪府生まれ。作家、イラストレーター。2011年、「皆勤の徒」で第2回創元SF短編賞を受賞し、13年刊行の作品集『皆勤の徒』で第34回日本SF大賞を受賞。19年刊行の第一長編『宿借りの星』で第40回日本SF大賞を受賞。他の著書に『オクトローグ 酉島伝法作品集成』がある。
感想・レビュー・書評
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タイトルの るん(笑) が何を示しているのかがわかった時は複雑な気持ちになった。
世界観と文章が独特で読みづらさは多少ある。
設定がわかった上で読み直すのがいいかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
終始「なんじゃこら」という疑問と戸惑いと共に読み終えた、幻覚のような小説。はっきり言ってまともではない。
這々の体で本編を読み終えて久坂部羊先生の解説に至り、ここでようやく味方を得た心地になった。久坂部先生も「いったい何を描いているのかと、必死に考えながらページをめくるが、あまりの飛躍と難解さに、作者はまじめに書いているのかとさえ思えてくる(もちろん真剣にはちがいない)。疑問符だらけになりながら読み進めると、次第に脳が熱くなり、体温が三十八度くらいになったが、本質が見えないのは私の読み方がまちがっているからではないかと、そこはかとない不安に駆られた。」(p265)と振り返っておられ、私もまさにこの通りの思いであった。
続く解説で、医療小説の書き手である久坂部先生が医学目線からの分析を加えておられる。「現在、病院で行われている治療は、すべて信じるに足ると思っている人が多いだろうが、実はそうでないものも少なくない。」「見方を変えればおかしなこと、危ないことは枚挙にいとまがない。」(いずれもp269)という指摘は意外な盲点ではないか。
単純に反科学や反医学主義者に対するハードパンチなのではないかと理解をした気になっていたが、目線を変えれば現在主流とされている医学も、民間療法と呼ばれるような手法も紙一重の所はあり、いわゆる権威的なものとか胡散臭さみたいなものに巻き取られている無知なわれわれ一般的患者は、それらの間で踊らされている儚く剽軽な道化的存在であるというアイロニカルなメタファーなのではないだろうか。
いやー、難し過ぎますって。再読も厳しいなあ。
解説でこんなにほっと一息出来る作品もなかなか珍しいですね。
1刷
2024.2.24 -
解熱剤を使用すると「どうして自分の体を信じてあげないの!」と怒鳴られる、スピリチュアルが常識となった世界の話です。
電波防止シールはもちろん、盗聴防止かぶせ付ランドセルも当たり前。病気という言葉は波長が悪いので、やまいだれを取って丙気と呼ぶという表現は上手いなあと唸りました。
序盤は世界観を楽しみ、民間療法の極めっぷりに薄ら笑う流れでしたが、3話目終盤、差別が当たり前の時代があったように、いつ普通が変わってもおかしくなく、常識は脆いと感じ急に深い話に思えてきました。 -
なんじゃ!?この小説は!?
私には難解すぎて… -
思考の基盤が違うと話通じない感じを小説で体感できる。