日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451382

作品紹介・あらすじ

女を追いかけてフィリピンに渡り、果ては無一文になった5人の「困窮邦人」。そのすさまじい生き様を通して、図らずも見えてくる現代日本の姿とは。第9回開高健ノンフィクション賞受賞作。(解説/橘玲)

感想・レビュー・書評

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  • 日本を自ら離れフィリピンに向い、そこでお金を使い果たし、ビザの更新もできずに不法滞在し、ほぼホームレス状態の日本人達を「困窮邦人」と言う。
    彼らの実態を追ったルポ。
    2011年の開高健ノンフィクション賞受賞作。

    そんな人達が、そんなに沢山いるのか!
    と、驚いた。
    個人的には自業自得なのではないかとは、思う。
    彼らの不法滞在の罰金と帰国の渡航費用を大使館が出せないのは、当然だ。
    日本で真面目に働いている人たちの税金を、そこには使えない。

    フィリピン人は貧乏でも、そんな困窮邦人を見捨てない。なんやかんや食事を与えたり、寝床を貸したり、世話をする。
    それが困窮邦人を増やす原因にもなっている。 
    彼らは日本に帰ろうとしない。
    お金がなくても日本にいるよりは、何のしがらみも無く気持ちが楽に過ごせるからだ。

    日本に帰る場所もなければ、頼る人もいない、そんな祖国に帰るよりは、フィリピンで近所の人たちに世話になりながら、最終的には骨を埋めたいのだ。

    うーん。。。
    理解に苦しむ。
    でも、彼らの話を読むと、人は何がきっかけで「タガ」が外れてしまうか分からない。
    窮屈だったのか、不満があったのか、借金があったのか、、、
    人の奥底にあるちょっとしたネガティヴな物が積み重なった結果、吸い寄せられるようにフィリピン女性にどハマりし、何も考えず渡航してしまう。
    人は弱い生き物だけど、あまりに弱すぎないか?

    決して気分の良い話ではないけど、奥の深い問題を掘り下げてまとめた話は、興味深く勉強にもなった。
    読んで良かったと思う。

  • 第9回開高健ノンフィクション賞受賞作。なかなか面白いテーマであり、様々な角度からの取材で浮き彫りになる現代日本の問題は非常に興味深い。

    日本での生活の全てを捨てて、フィリピン社会の底辺で生き永らえる男たち。様々な理由でフィリピンに渡った日本の男たちを待っていたのは究極の困窮生活。そんな日本人男性が何百人も居るというのだから驚かされる。

    日本で生活する外国人を見ていて思うのだが、基本的に現代の日本人には世界に出て行く逞しさが無いのかも知れない。

  • いままで全く知らなかった世界で衝撃だった。
    テレビでもフィリピンパブがよく出てくるが、なぜ日本にフィリピン人が多くきているのか少し理解できた。
    フィリピン人女性に魅了されてフィリピンに旅立ち、そこで全財産が尽きてもなお困窮邦人として生活する男たちへの詳細なインタビューがリアルだった。

  • 読む前から何となくこの本の存在は知っていたが、女性を追って常夏のフィリピンで自堕落奔放に過ごす中高年男たちのルポだと思っていた。(副題は知らずに)本書で取り上げている困窮例もなかには混じるだろうけど、おおむねが「日本を捨てて」フィリピンで第二の人生を謳歌している人たちの話だと思っていた。
    ところが取り上げているのは、なけなしで後先見ずに渡航したり現地で金を失い帰国もままならない男たちの話。本当に、フィリピンパブの女の子を追ってだったり、借金を抱えて突発的に逃げてきたり、妻子を捨てて退職金を全部持ってきたりと本当にしょうもない男たちばかり。大使館もその過程から帰国費用を貸すのを渋るし、日本の身内も匙を投げるような輩で、「日本を捨てた」のでなく日本に捨てられたような男たちに思えてくる。
    だがしかし、彼らはその日暮らしの乞食のような生活をしていながらも、あまり日本にい帰りたがらない。情と信仰に厚いフィリピン人の好意によって生きていけるし、そうしたフィリピン人と生きていくほうが、窮屈な日本よりもいいという。
    そうなんだ、と思ったし、そうかも、と思った。日本に捨てられたかもと思い直した彼らはやはり日本を捨てた男たちなのかもしれない。
    ただ一方、彼らの勝手さ、向こう見ずさに男として生きる大変さも感じたりする。男って、誰かのためや組織のためとかでないとしっかり生きないんだよね。自分のために生きることができない生きものなんだという思いを強くした。

  • 海外で無一文になる。そんなこと、想像したこともなかったけれど…
    フィリピンで「困窮邦人」として生きる人の多さ、その人たちが高齢であること、そして、その生活の実態に驚かされた。
    海外で暮らす身としては、理解できないながらも、まったく無関心でいられるわけもなく・・・
    著者同様、「自己責任」という言葉が頭にありつつも、切ない気持ちになってしまう。

  • フィリピンで困窮生活を送る日本人を取材した、開高健ノンフィクション賞受賞作。
    フィリピン人の温かさ、日本の国民性など
    色々な意見があると思うが、やはり自業自得という考えになってしまう。

  • 海外で所持金を使い果たし、帰国もできず、路上生活を強いられる困窮状態の日本人を「困窮邦人」と呼ぶ。本書はフィリピンの男性困窮邦人5人を中心とするルポ。

    5人はいずれもフィリピンパブにハマり、日本で稼いだ金をフィリピン女性に貢ぎ、フィリピンまで追いかけ、持ち金がなくなり放り出される。いくらひいき目に見たところで「自己責任」という言葉しか思いつかない。これだけ同情されない貧困者を取り上げて、評価されるノンフィクションを作り上げた著者の取材力、姿勢がすばらしい。

    本書で登場する困窮邦人がフィリピンを選んだ理由はフィリピン人の優しい国民性と温暖な気候。これからもフィリピンで困窮邦人は増え続けるだろう。作者には次作でフィリピン在住の「裕福邦人」を取材してほしい。

  • 著者の水谷竹秀(1975年~)は、上智大学外国語学部卒の、フィリピンを拠点に活動するノンフィクション・ライター。本書は、2011年開高健ノンフィクション賞受賞作で、2013年に文庫化。発表直後には、本書を基にしたドキュメンタリー番組も複数制作され、かなりの反響を巻き起こした。
    本書は、現地在住の著者が、現在フィリピンに数百人いると云われる、所持金を現地で使い果たし、日本への帰国費用どころか日々の食費もなく、路上生活やホームレス状態の「困窮邦人」を取材したルポルタージュである。登場する困窮邦人は、日本のフィリピンクラブで出会った女性を追い掛けて渡航した人々のほか、偽装結婚に利用された人、暴力団関係者から借金をして国外逃亡した人など。
    それにしても非常に奇妙な読後感の作品である。通常のルポルタージュ作品は、あるテーマを、作り手が取材し、表現し、受け手が見、読んだ場合、そのテーマについて何らかの(社会)問題が感じ取られるものであるが、私は本書を読んで、ただ、こうした「困窮邦人」が少なからず存在して、そうした邦人を助けるフィリピンの人々がいる(もちろん、金を搾り取ることだけが目的のフィリピン人もいるが)という“事実”に少しばかり驚いたものの、問題意識を持つには至らなかった。(端的に言えば、本人の自己責任でしかあり得ない)
    なお、著者は、取材当初は、「彼らが逃げ出した日本社会を見つめ直すことで、その澱のような何かが見えてくると思い込んでいた。「日本は生きづらい」と語ってもらい、その理由を具体化させることで現代日本を告発したかった」と考えていたものの、取材の最後には、「いつの間にか、社会問題として追求する自分との間で葛藤が始まっていた。彼らの親や知人に話を聞き、その人生や暮らしを追っていくと、「(困窮は)自己責任ではない」という仮説はあらかた崩れ去った」と語っているが、一方で、読者の大きく二分された感想(自己責任であり同情できないor明日は我が身かも知れず他人事は思えない)について、「未だにいずれかに割り切れない優柔不断な自分がいる」とも吐露している。
    世の中にはこうした“事実”が存在するということを知る上で、面白い一冊といえようか。
    (2018年1月了)

  • 「日本を捨てた男たち」、まさにその通り。自ら日本を離れた男たちの話である。
    この題名だけ見たらカッコイイ男たちの物語かのように思われるが中身はダメダメ男だらけ。
    ほんと「なんだろうなぁ~」って思う人ばかり。
    女を追っかけて移住したり、借金に追われて逃亡してきたりと。でもみんな共通してることは「日本に帰りたくない」ってこと。経済的に無理な部分も多々ありますがほとんどが「日本に帰っても・・・」感じ。
    それほど日本がダメなのか?それとも異国が良いのか?
    登場人物の言動などに呆れる部分もありますが、それでも何か考えさせられる内容でした。
    個人的には巻末の「解説」から読まれる方が良いかなっと解説を読んで思いました

  • 著者の新作を読んで興味を持ったのでこちらも読破。
    似たような内容だったので、話も被っているのだろうと思っていたがそれでも面白かった。深夜特急を始めて読んだ時の感触だろうか、脳内で妄想や理想、ユートピアへの憧れといったものがエンドルフィンに変わり、幸せな気分を味わうようなアレである。
    ただその憧れを現実化させようと行動に移した中年男性たちがフィリピンで破滅していく過程をマジマジと見せつけられるのが本書である。
    結局のところ、全てにおいてユートピアなんていうものは存在しなくて、人間という愚かな生物は他人、他の生物の命を犠牲にして生き延びているだけの存在であることを見失うからこそこういう転落人生があるのだろうなと考えさせられた。
    結局どこにいっても極楽浄土なんてもんは存在しないってことだが、それでも地に足をつけて異国の地で上手に生き抜いている人もいる。結局、「どこかにいけば何かがある」という考えが間違っているのでしょうね。
    年金などで月々の収入が安定していて、寒冷地での老後が辛いなど特段の事情があり、現地で死を迎える覚悟があるのであれば行っても良いかもしれませんね。

    そしてここのレビュワーも著者の指摘するように、一様に「自己責任」論に終止しているのには笑った。どこまでいっても日本人の固定観念は捨てられないのでしょう。

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