あらゆる堀を埋められた大阪城での夏の陣。勝敗はすでに決し、その中で見どころはやはり真田幸村の活躍。華々しく死んで名を残すことだけを目指す武将がほとんどの大阪方の中で、彼だけは勝つことを決してあきらめない。綿密な作戦を練り、それがうまく行かなければ、次の策を練る。疲れることのない彼の精神と徳川方を蹴散らして突進する行動力は痛快だ。

こうした滅びに向かう美を描くことこそが司馬文学の真骨頂。そして、幸村の思考は戦闘のことだけではない。戦闘の合間に自身の娘を今日戦ったばかりの敵将、伊達政宗に託そうとする。そんな大胆な行為を見せる幸村に対して、それに応じる政宗。敵味方の関係を越えた2人の武将のやりとりは本巻の最高のエピソードだ。

幸村をはじめとする大阪方の武将たちの気迫に圧倒される徳川方。大阪の陣で徳川が勝てたのは、圧倒的な兵力差と家康の石橋を叩いて渡る知謀、そして淀殿を中心とする豊臣家の不甲斐なさが原因。

こうして燃え落ちる大阪城とともに、戦国時代は幕を閉じる。

2017年12月13日

読書状況 読み終わった [2017年12月13日]
カテゴリ 歴史モノ

犯罪による被害者とその家族は報道などによって二次被害を受ける。それは加害者家族も同じだ。とはいえ、被害者側を保護するのは当然という世論に比べ、加害者側を保護すべきかと言うことに対して、賛否ある。

著者は殺人事件を犯した者の妻へ取材する。妻は「夫の犯した罪なのだから、私や子どもには関係がない」という気持ちを持ち続け、被害者へ謝罪をしていない。しかし、事件のことを考える日々で自分が夫の気持ちに気づかなかったことに反省するようになる。果たして、こうした形で加害者家族が責任を感じるのが被害者にとって、良いことなんだろうか。

また、宮崎勤の父親は自殺し、仕事を辞めた家族もいれば、婚約を破棄した家族もいた。

加害者家族を加害者本人と別々に考えるというのは難しいが、彼らを不幸にすることに意味があるのかと考えさせられる。ただ、こうした論議において「被害者の気持ちを考えると・・・」という考えというのは排除すべきだと思う。

2017年12月4日

読書状況 読み終わった [2017年12月4日]
カテゴリ 教養

市議会議長の殺害。ベテラン警察官、本宮はパートナーの若手女性警官、優子と事件を追う。警察官を主人公とするよくある殺人捜査ミステリーかと思いきや、ストーリーの軸となるのは推理ミステリーではなく、登場人物たちの人間ドラマ。

捜査の進展とともに明らかになる本宮、優子、容疑者、被害者の家庭環境。そんな4人の過去が微妙に絡み合い、最後にピタッとはまり合う。彼らの人生には経済力や男女関係、家族の死など「崩壊」のターニングポイントがあった。それを乗り越えた者と乗り越えられなかった者の差が殺人につながった。

2017年11月30日

読書状況 読み終わった [2017年11月30日]
カテゴリ ミステリー

主演はマーク・ウォルバーグ。今ではアクションもこなす大ベテラン俳優となってしまったが、この頃のウォルバーグはB級アクション映画のスターだった。そんな若き彼の魅力全開のアクション作品。

ウォルバーグ演じる主人公は一匹狼のすご腕スナイパー。罠にはまり大統領暗殺容疑をかけられた彼は、逃亡しながら、身の潔白を晴らそうとする。お笑い系の相棒、巨乳美女、FBI、悪徳政治家などのありがちなキャスティングと「悪いヤツなら主人公は何人でも殺してヨシ」ルールにもとづいて、ズバッと事件解決。「これぞB級」という爽快感がある。ツッコミどころ満載のストーリーなんぞは気にならない。

当時のマーク・ウォルバーグは、こうしたわかりやすい娯楽系アクション作品での存在感はハンパなかったっけ。

唯一、わかりにくかったのがラスト。まさか、こんな強引な決着になるとは。

2017年11月29日

読書状況 観終わった [2017年11月29日]
カテゴリ アクション

いよいよ大坂冬の陣。真田幸村、後藤又兵衛ら大阪方の武将が揃い、いざ決戦。のはずだが、本書で語られるストーリーの多くは、家康による謀略中心。家康にとって一応、主人である豊臣家を潰すことは、後世の汚名につながる恐れがある。単純な軍事力で勝敗を決めるわけにはいかないのだ。家康が見ているものは、目の前の大阪城ではなく、終戦後の徳川統一のビジョンだ。

はるか先を見ている家康に対し、豊臣家は現実すらまともに見ようとしない。淀殿、大野修理、浪人たちが都合のいい状況を選択して、意見がまとまらない。

真田幸村など、やる気のある優れた武将たちが揃っている大阪方は局地戦では勝利するも、その小さな勝利を全体に波及させることができず、結局は家康の謀略に押し切られる。力のある兵士がいても、それを使いこなすリーダーがいなければ、敗北してしまうという当たり前の組織論だ。

かくして、家康は休戦と城堀の埋立てを勝ち取る。ようやくわかったのだが、この作品は徳川家康というダークヒーローが主人公だった。

2017年11月24日

読書状況 読み終わった [2017年11月24日]
カテゴリ 歴史モノ

トム・クルーズ主演のアクションミステリー。スマートで知的なアクションの「ミッション・インポッシブル」とは違って、軍人っぽいマッチョアクション。トム・クルーズも肉体をゴリラ系に改造し、素手でガラスをたたき割り、敵の骨を折りまくる。

たいして可愛くもない隠し子を無理やり登場させ、ストーリーも展開が読めまくり。主演がスティーブン・セガールだったら、ハマっただろう。

2017年11月21日

読書状況 観終わった [2017年11月21日]
カテゴリ アクション

世界中の未知、未踏のものを知りたい、見てみたい。そんな純粋な気持ちで洞窟にのめり込んでしまった「洞窟ばか」の自伝。

まずは本書を開いて最初のカラーページに圧倒される。著者が探検した数々の洞窟写真。その広大な風景にぽつんと著者が1人写っている。広大な場所を独り占めしている支配者のようだ。この光景を見ると洞窟に見せられてしまった著者の心情はわからなくもない。

自伝は著者のヤンチャな青春時代にはじまり、洞窟にハマったきっかけの紹介。そして、多くの洞窟仲間に支えられ、ついには洞窟探検を社会的な組織として運営するまでになった。

どんな分野でも「ばか」と言われるほど極めることができるものに出会えた人は幸せだ。

2017年11月21日

読書状況 読み終わった [2017年11月21日]
カテゴリ 新感覚

現代の様々な分野でのスターたちが大学生たちを前に講演する若き頃の話。登場するのはノーベル化学賞の山中伸弥、棋士の羽生善治、映画監督の是枝裕和、京大総長の‎山極壽一。

彼らは学生たちにとってあこがれの偉人だが、手の届かない別世界の住人ではない。彼らにも「何者でもなかった」無名の時代があった。そのとき、彼らは何を目指し、何に恐れていたのか。

こうした偉人たちの挫折談を聞くと、「ヨシ、オレもまだまだイケるゼ」と思い込み、しばらくすると偉人との才能の違いに愕然とする。若い頃はそんな繰り返しで成長するのだ。コレぞ現実。

山極氏のゴリラ話にインパクトあり。

2017年11月15日

読書状況 読み終わった [2017年11月15日]
カテゴリ 教養

世の中の人はあまりにも孤独を恐れている。ネットで常につながっていたい。1人でメシを食うところを見られたくない。・・・何を言っているのだ、人は孤独なのだ。

著者は高校卒業から10数年の引きこもりを続け、小説家としてデビューし、芥川賞を受賞。孤独な引きこもり時代があったからこそ、今がある。そんな著者が過去を振り返りながら語る孤独の肯定論。

ブラック企業に勤め、自分を見失いそうな人へ、著者は「逃げろ」とアドバイスする。プライドや意地を捨て、親や友人でも頼り、引きこもる。引きこもりだって生きるための立派な術なのだ。そこで初めて孤独のありがたさを知るのだろう。

2017年11月15日

読書状況 読み終わった [2017年11月15日]
カテゴリ 新感覚

野党は無策で、自民党内にもポスト安倍はいない。もはや国内では敵無しとなった安倍長期政権の次の目標は外交だ。

本書は外務省に頼らない、総理自らが直接指示する安倍外交の分析に多くのページを費やしている。そして、安倍外交の最重要ターゲットがトランプ大統領だ。

トランプの大統領就任前にいち早く面会し、良好な関係を築き上げた安倍総理は在日米軍問題や対北朝鮮問題の解決を狙う。これぞ、安倍総理が保守政治家として期待されていることだが、その結果、親安倍派はますます安倍総理を応援し、反安倍派はますます攻撃を強める。

安倍総理としては、自身の評価が2極化することを覚悟の上で、政権の総決算に挑んでいる。その最終目標が憲法改正だ。

2017年11月14日

読書状況 読み終わった [2017年11月14日]

一匹狼のカメラマン、都城静(ミヤコノジョウ シズカ)は芸能下品ネタ専門。そんな彼にかつての勤務先は新人女性記者をパートナーとして特訓してほしいと依頼する。反発していた中年パパラッチと処女記者コンビだが、しだいに互いを補いながら成長、スクープを連発する。

よくあるベテラン&ルーキーコンビ作品だが、いろいろと説明不足が目立つ。都城と女編集者、チャラ源との過去、なぜ都城はフリーになったのか、なぜ都城と女記者が組まされるのか、などなど。当然、それらの説明をはさみながらのドラマだと思っていたのだが。

それから前半と後半で都城が別人のようにキャラが変わってしまうのにも違和感ありまくり。全編、チャラいキャラで通してほしかった。

と、不満だらけだったが、この作品の目的は「下品なフクヤマ」を描くことの一点だから、コレでいいのだ。

2017年11月10日

読書状況 観終わった [2017年11月10日]
カテゴリ 新感覚

新宿にて爆破テロ発生。たまたま現場にいて助かったアル中のバーテンと被害者はかつての学生運動仲間であった。

乱歩賞と直木賞を同時受賞したハードボイルドミステリーの名作。その評判通り、伏線貼りまくり、どんでん返しまくりのストーリー展開と一人たりとも無駄にしない登場人物設定はお見事。あまりにも見事すぎてご都合主義的なファンタジーのような気がするのが欠点か。

愛想の悪いバーテン、世間に背を向けたホームレス、知を売りにするヤクザと、あまりにもベタなハードボイルド作品に必要な人物を並べつつ、ベタではない予想できない結末。

2017年11月7日

読書状況 読み終わった [2017年11月7日]
カテゴリ ミステリー

関ヶ原の戦いは終わったが、大阪城には未だ豊臣家の威光は健在。自身の寿命ある内に徳川による治世を完成させたい家康を、類のない陰謀に走らせる。

本書で描かれる家康はなんとも鼻につくイヤな奴。こんな奴が天下を取るなんて許せない、大阪ガンバレと思ってしまうが、その大阪方の人材の乏しいこと。なんせトップが現実を直視せず感情だけで思考する淀殿に、寝たきり老人のように影の薄い豊臣秀頼。そんな幻想家が支配する大阪城内の空気は乱れきっていた。

歴史を知らず、次巻を読むまでもなく、勝敗はすでに決しているのだが、その勝敗外でうごめく人間模様が見どころ。この巻の主役は片桐且元。家康、淀殿からのパワハラを受けまくり板挟み、そして爆発。サラリーマンの中間管理職ならではの悲哀。

2017年11月2日

読書状況 読み終わった [2017年11月2日]
カテゴリ 歴史モノ

突然の事故で妻を失った男2人の再生のドラマ。1人は芸能活動もこなす小説家。もう1人は子持ちのトラックドライバー。全くタイプの違う2人だが、亡くなった妻同士が友人だったという縁で共同生活を送ることになる。

2人はわかり合うこともあれば、ぶつかることもある。そんなやり取りを経て、彼らはハッピーエンドを迎える。・・・が、彼らの「永い」人生はまだ終わりじゃない。

「なんで死んだのが、アイツで、オレじゃなかったんだろう」、人生の岐路に立つたびに彼らはそう考えるんだろう。

2017年10月31日

読書状況 観終わった [2017年10月31日]
カテゴリ 感動モノ

死刑を執行された父は絶対に冤罪だった。自分は父のアリバイを知っている。父の無罪を証明するために、人生のすべてを注いできた娘。彼女の執念が報われるのは、別の事件で当時のDNA鑑定の拙さが証明され、無罪が言い渡されたからだった。

初期のDNA鑑定の不完全さが証明され、冤罪が作られた実在の足利事件だが、もしも容疑者がすでに死刑を執行されていたら。そんな想像を発展させた推理ミステリー。

足利事件でもそうだが、本作品でも警察、検察、裁判所のつまないプライドと保身で、名もなき1市民の人生が壊される。裁判とは事実を追求する場ではないらしい。足利事件では事件を追求するジャーナリスト、本作品では普通の正義と常識を持った検察官がいたから事件は解決に向かったが、彼らがいなければ。と、思うと権力社会がイヤになる。

主人公が冤罪を証明するまでのストーリーはスピード感がありすぎるが、ハイテンションで読める。が、真犯人への到達はちょっと偶然すぎるというか、蛇足な気がしないでもない。

2017年10月28日

読書状況 読み終わった [2017年10月28日]
カテゴリ ミステリー

朝日新聞社のソウル支局長が語る韓国の「今そこにある危機」ルポ。韓国と相性が良さそうなアサヒの記者ですら「絶望」と名付けてしまうほどの国らしい。

トランプ大統領をはじめ、世界では自国第1主義を主張する主導者が登場しているが、韓国は昔から国ぐるみでそんな傾向がある。他国の批判をものともせず、自国の主張を通そうとする。

そんな強気な国民性だが、政治力や経済力、軍事力などの国力は世界と渡り合えるレベルではない。北朝鮮の核は怖いが、米軍とは協力したくない。日本の経済協力はほしいが、慰安婦問題では叩きたい。中国の言いなりも嫌だ。そんなどっち付かずで中途半端な態度が韓国流の自国第1主義だ。さらに社会では自分第1主義。過度な学歴社会、財閥支配、現職大統領の罷免など引き起こす。

そして、セウォル号沈没事故。指示を聞かずに勝手に逃げ出した者が助かり、指示通り船中にとどまった者は亡くなった。いかにも韓国らしい事件であった。

2017年10月26日

読書状況 読み終わった [2017年10月26日]
カテゴリ 雑学

幕末、池田屋にて倒幕計画を企む志士たちを新撰組が襲撃。長州藩などはこの事件によって貴重な人材を失うが、逆に日本中の志士たちが立ち上がり、皮肉にも倒幕運動は加速する。

その池田屋で集まり、命を失った若き志士たちを主人公にした連作短編集。彼らは土方歳三や坂本龍馬、吉田松陰などの英雄たちと出会い、オーラを浴びて、名を残すことなく国のために堂々と命を捨てた。

そんな無名な彼らの死が積み上げられた末、最後に登場するのは、明治維新の英雄、桂小五郎。数少ない池田屋事件での生き残りであった彼は木戸孝允と名を変え、その死の直前に当時のことを語る。

武士であらば国のために、友のために死ぬことは当たり前。桂のように国や故郷を思っているからこそ、生きるという考え方は恥だった。が、そんな生き残った者たちがいたから日本は生き残った、と思いたい。

史実では池田屋事件時、桂小五郎がどこにいたのかはっきりしていないらしい。

2017年10月25日

読書状況 読み終わった [2017年10月25日]
カテゴリ 歴史モノ

ロバート・ゼメキス監督、ブラッド・ピット主演で、舞台は第2次世界大戦のロンドン。CG使いまくりのミステリーっぽい戦争映画と思っていたら、意外にストレートな恋愛ドラマ。オチにも意外性はない。

が、ありきたりな戦争メロドラマではなく、男女2人の主演が圧巻の演技力シーンを連発する見せ場だらけの好作品だった。スパイ同士としての出会いから、共同作戦、カーセックス、出産、子供とのピクニックなど2人だけのシーンがほとんどなのに決して飽きない。どれも見応え充分。

マリアンヌを演じるマリオン・コティヤールが強引にブラピを引っ張るコンビネーションがハマっている。考えると、ブラピって「セブン」や「スパイゲーム」、「ベンジャミン・バトン」など受身で操られる演技が印象に残る。本作品でのブラッド・ピットの存在感は最高だ。

2017年10月19日

読書状況 観終わった [2017年10月19日]
カテゴリ 恋愛モノ

50歳までプロ野球で現役を続けた山本昌氏の語る人生現役論。

数々のタイトルに、最年長の勝利とノーヒットノーラン。記録にも記憶にも残る名選手だが、彼ですらも引退時「悔いはある」と語った。彼ほどの実績がありながら、まだまだやり残したことがあった。若い頃よりも体は動かなくなったが、やればできると言い続け、思い込んでいた。こうした気持ちを常に持ち続けたことが、長く現役を続けられた理由なんだろう。

そんな山本氏の現役論を引き出す対談相手は、60歳を超えても投資ファンドを運営し、新事業へ次々と乗り出す現役経営者、佐山展生。「人生は自作自演のドラマ」と語り、自分の人生は自分が決めてきた。30代で転職し、40代でMBA取得など、風変わりな経歴を持つ。

山本氏も佐山氏も常に順調な現役時代を送れたわけではない。ただし、どん底でもがき続けて今がある。長い人生ではしぶとくもがくことが、現役を続ける秘訣だ。

2017年10月17日

読書状況 読み終わった [2017年10月17日]
カテゴリ ビジネス

太平洋戦争中、日本海軍は大将クラスが搭乗した航空機が不時着するという2つの重大事件を起こしていた。海軍の恥とも言えるその事件は甲事件、乙事件と呼ばれ、戦時中はずっと秘密にされていた。

ノンフィクション歴史小説家、吉村昭は日本軍、米軍資料から2事件を明らかにする。資料分析からの完全なドキュメンタリーなので、ストーリー的な面白さはなく、筆者の視点は事件そのものより、その事件に関わり、海軍大将を死なせてしまったという自責の念にかられる生き残った者たちに向けられる。短編「海軍乙事件」では海軍大将の搭乗機に併走し、セブ島沖に不時着した2番機の搭乗員たちの生還とその後の運命がメインテーマ。

事件名さえも明らかにされない厳重な情報管理の中、部隊内では事件で生き残った者たちへ、周囲の視線は冷たい。そんな扱いに反論もできず、苦悩する彼らはあえて厳しい戦局へ身を置き、自発的な戦死を求めようとする。こうした死を望む心情を淡々と描くのが吉村作品らしい。

2017年10月17日

読書状況 読み終わった [2017年10月17日]
カテゴリ 歴史モノ

そう遠くない近未来の日本。高齢化により、福利厚生費、医療費で国家財政はパンク寸前。政府はこの問題を一気に解決するために「七十歳死亡法案」を可決する。日本国民は誰もが70歳にして安楽死させられることになった。

そんな過激な法案施行まであと2年。日本社会は若者と老人が対立し、険悪なムードに・・・ということにはならず、意外に冷静。財政は健全化、若者は老人介護や税負担減少に喜び、老人は寿命が決まったことで先を考えずに日々を楽しく過ごせる。

そんなうまくいくはずないだろう、とは思う。しかし、今の日本の高齢化問題を解決するには、これくらい強引で非現実的な手段が必要なのかもしれない。

作品に登場するのは、わがままな高齢者、家庭のことには一切興味のない夫、介護疲れの妻、派遣社員でワークプアの長女にひきこもりニートの長男が住まう宝田家。未来の見えない彼らだったが、この法案をきっかけに家族の団結を果たす。

2017年10月6日

読書状況 読み終わった [2017年10月6日]
カテゴリ 新感覚

誘拐された少女は無事、救出された。が、中央新聞社は「不明女児、遺体発見か」と、誤報した。誤報の責任で地方局へ飛ばされた記者、関口豪太郎は7年後、再び少女誘拐事件と向かい合う。

7年前のトラウマを引きずりながら、関口ら新聞記者たちが事件解決へ到達する道のりはドラマチックだ。こうした現場を経て、彼らジャーナリストは「ジャーナル」を作り出し、その重みを父から子へ、先輩から後輩へ受け継いでいく。

2017年10月6日

読書状況 読み終わった [2017年10月6日]
カテゴリ ミステリー

日本のサラリーマンのほとんどは60歳で定年を迎える。それは通勤して、仕事をして、社内外の人間との交流をするという規則正しい生活から切り離されるということだ。60歳になって、全く新しい生活がはじまる。しかも、余命を考えると約20年は続く。

そんな「チェンジ」に多くの人は対応できるのか。保険会社の社員として定年を迎えた著者は、自らの体験と他の定年者への取材をもとに「定年後」の生活を輝かせるためのノウハウを探す。

定年後に変わるのは生活スタイルだけじゃない。名刺のない自分、24時間接することとなった家族の対応など、様々な違和感を乗り越えなければならない。大事なことは本書の副題通り、準備を50歳からはじめることだ。定年を迎えてから余生のことを考えるのでは遅すぎる。もはや定年は、のんびりとした隠居ではなく、新たな人生のはじまりなのだ。

2017年10月10日

読書状況 読み終わった [2017年10月10日]
カテゴリ 雑学

1990年代、著者率いる村上ファンドの悪名は有名だった。株式を大量に買い取り、経営陣に難題をふっかけて混乱を巻き起こし、その果実をむしり取っていた。と、誰もがそう思っていた。インサイダーでの逮捕もやっぱりね、という印象。

が、世界標準の投資や株式、経営視点から見ながら、本書を読んでみると、当時の著者の行動、発言は投資家として当然だったことに気づく。当時の日本は「投資」をあまりにうさんくさいと、考えすぎていた。

企業が上場することは誰もがその株式を購入できることであり、経営に誰もが介入できることだ。その覚悟がなければ上場するな、投資家である著者が言いたいことはこれに尽きる。

そんな覚悟のない経営者が運営する企業は淘汰されてもやむを得ない。そうした企業の代表が本書で登場する、東京スタイル、阪神タイガース、ニッポン放送などなど。彼らは大株主である著者のコーポレート・ガバナンスにもとづいた要求を無視し、対立した。が、こうした企業は生き残り、著者は逮捕された。これが日本投資社会の限界なのだろう。

2017年9月20日

読書状況 読み終わった [2017年9月20日]

20世紀後半、蒋介石率いる国民党は共産党により中国から追い出され、台湾に逃れてきた。その結果、台湾では原住民と国民党との対立が起こる。

そんな社会で台湾の青年、葉秋生は今で言う「自分探し」に悩みながら喧嘩、恋愛、退学、入隊と青春時代を送っていた。しかし、彼が常に考えていたことはただ一つ、「誰が祖父を殺したか」だった。

祖父殺しの犯人探しというミステリー要素を含んだ台湾人の青春小説。台湾の歴史に流されながら、主人公は成長し、真実にたどり着く。

テンポの良い展開と意外な犯人の登場に楽しめる小説だが、台湾の歴史をよく知り、中華風の人物名に慣れればもっと楽しめるだろう。

2017年12月10日

読書状況 読み終わった [2017年12月10日]
カテゴリ 新感覚
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