ロバート・ゼメキス監督、ブラッド・ピット主演で、舞台は第2次世界大戦のロンドン。CG使いまくりのミステリーっぽい戦争映画と思っていたら、意外にストレートな恋愛ドラマ。オチにも意外性はない。

が、ありきたりな戦争メロドラマではなく、男女2人の主演が圧巻の演技力シーンを連発する見せ場だらけの好作品だった。スパイ同士としての出会いから、共同作戦、カーセックス、出産、子供とのピクニックなど2人だけのシーンがほとんどなのに決して飽きない。どれも見応え充分。

マリアンヌを演じるマリオン・コティヤールが強引にブラピを引っ張るコンビネーションがハマっている。考えると、ブラピって「セブン」や「スパイゲーム」、「ベンジャミン・バトン」など受身で操られる演技が印象に残る。本作品でのブラッド・ピットの存在感は最高だ。

2017年10月19日

読書状況 観終わった [2017年10月19日]
カテゴリ 恋愛モノ

50歳までプロ野球で現役を続けた山本昌氏の語る人生現役論。

数々のタイトルに、最年長の勝利とノーヒットノーラン。記録にも記憶にも残る名選手だが、彼ですらも引退時「悔いはある」と語った。彼ほどの実績がありながら、まだまだやり残したことがあった。若い頃よりも体は動かなくなったが、やればできると言い続け、思い込んでいた。こうした気持ちを常に持ち続けたことが、長く現役を続けられた理由なんだろう。

そんな山本氏の現役論を引き出す対談相手は、60歳を超えても投資ファンドを運営し、新事業へ次々と乗り出す現役経営者、佐山展生。「人生は自作自演のドラマ」と語り、自分の人生は自分が決めてきた。30代で転職し、40代でMBA取得など、風変わりな経歴を持つ。

山本氏も佐山氏も常に順調な現役時代を送れたわけではない。ただし、どん底でもがき続けて今がある。長い人生ではしぶとくもがくことが、現役を続ける秘訣だ。

2017年10月17日

読書状況 読み終わった [2017年10月17日]
カテゴリ ビジネス

太平洋戦争中、日本海軍は大将クラスが搭乗した航空機が不時着するという2つの重大事件を起こしていた。海軍の恥とも言えるその事件は甲事件、乙事件と呼ばれ、戦時中はずっと秘密にされていた。

ノンフィクション歴史小説家、吉村昭は日本軍、米軍資料から2事件を明らかにする。資料分析からの完全なドキュメンタリーなので、ストーリー的な面白さはなく、筆者の視点は事件そのものより、その事件に関わり、海軍大将を死なせてしまったという自責の念にかられる生き残った者たちに向けられる。短編「海軍乙事件」では海軍大将の搭乗機に併走し、セブ島沖に不時着した2番機の搭乗員たちの生還とその後の運命がメインテーマ。

事件名さえも明らかにされない厳重な情報管理の中、部隊内では事件で生き残った者たちへ、周囲の視線は冷たい。そんな扱いに反論もできず、苦悩する彼らはあえて厳しい戦局へ身を置き、自発的な戦死を求めようとする。こうした死を望む心情を淡々と描くのが吉村作品らしい。

2017年10月17日

読書状況 読み終わった [2017年10月17日]
カテゴリ 歴史モノ

そう遠くない近未来の日本。高齢化により、福利厚生費、医療費で国家財政はパンク寸前。政府はこの問題を一気に解決するために「七十歳死亡法案」を可決する。日本国民は誰もが70歳にして安楽死させられることになった。

そんな過激な法案施行まであと2年。日本社会は若者と老人が対立し、険悪なムードに・・・ということにはならず、意外に冷静。財政は健全化、若者は老人介護や税負担減少に喜び、老人は寿命が決まったことで先を考えずに日々を楽しく過ごせる。

そんなうまくいくはずないだろう、とは思う。しかし、今の日本の高齢化問題を解決するには、これくらい強引で非現実的な手段が必要なのかもしれない。

作品に登場するのは、わがままな高齢者、家庭のことには一切興味のない夫、介護疲れの妻、派遣社員でワークプアの長女にひきこもりニートの長男が住まう宝田家。未来の見えない彼らだったが、この法案をきっかけに家族の団結を果たす。

2017年10月6日

読書状況 読み終わった [2017年10月6日]
カテゴリ 新感覚

誘拐された少女は無事、救出された。が、中央新聞社は「不明女児、遺体発見か」と、誤報した。それから7年、誤報の責任で地方局へ飛ばされた記者、関口豪太郎は再び少女誘拐事件と向かい合う。

7年前のトラウマを引きずりながら、関口ら新聞記者たちが事件解決へ達する道のりはドラマチックだ。こうした現場を経て、彼らジャーナリストは作り出す「ジャーナル」の重みを父から子へ、先輩から後輩へ受け継いでいく。

2017年10月6日

読書状況 読み終わった [2017年10月6日]
カテゴリ ミステリー

日本のサラリーマンのほとんどは60歳で定年を迎える。それは通勤して、仕事をして、社内外の人間との交流をするという規則正しい生活から切り離されるということだ。60歳になって、全く新しい生活がはじまる。しかも、余命を考えると約20年は続く。

そんな「チェンジ」に多くの人は対応できるのか。保険会社の社員として定年を迎えた著者は、自らの体験と他の定年者への取材をもとに「定年後」の生活を輝かせるためのノウハウを探す。

定年後に変わるのは生活スタイルだけじゃない。名刺のない自分、24時間接することとなった家族の対応など、様々な違和感を乗り越えなければならない。大事なことは本書の副題通り、準備を50歳からはじめることだ。定年を迎えてから余生のことを考えるのでは遅すぎる。もはや定年は、のんびりとした隠居ではなく、新たな人生のはじまりなのだ。

2017年10月10日

読書状況 読み終わった [2017年10月10日]
カテゴリ 雑学

1990年代、著者率いる村上ファンドの悪名は有名だった。株式を大量に買い取り、経営陣に難題をふっかけて混乱を巻き起こし、その果実をむしり取っていた。と、誰もがそう思っていた。インサイダーでの逮捕もやっぱりね、という印象。

が、世界標準の投資や株式、経営視点から見ながら、本書を読んでみると、当時の著者の行動、発言は投資家として当然だったことに気づく。当時の日本は「投資」をあまりにうさんくさいと、考えすぎていた。

企業が上場することは誰もがその株式を購入できることであり、経営に誰もが介入できることだ。その覚悟がなければ上場するな、投資家である著者が言いたいことはこれに尽きる。

そんな覚悟のない経営者が運営する企業は淘汰されてもやむを得ない。そうした企業の代表が本書で登場する、東京スタイル、阪神タイガース、ニッポン放送などなど。彼らは大株主である著者のコーポレート・ガバナンスにもとづいた要求を無視し、対立した。が、こうした企業は生き残り、著者は逮捕された。これが日本投資社会の限界なのだろう。

2017年9月20日

読書状況 読み終わった [2017年9月20日]

20世紀後半、蒋介石率いる国民党は共産党により中国から追い出され、台湾に逃れてきた。その結果、台湾では原住民と国民党との対立が起こる。

そんな社会で台湾の青年、葉秋生は今で言う「自分探し」に悩みながら喧嘩、恋愛、退学、入隊と青春時代を送っていた。しかし、彼が常に考えていたことはただ一つ、「誰が祖父を殺したか」だった。

祖父殺しの犯人探しというミステリー要素を含んだ台湾人の青春小説。台湾の歴史に流されながら、主人公は成長し、真実にたどり着く。

テンポの良い展開と意外な犯人の登場に楽しめる小説だが、台湾の歴史をよく知り、中華風の人物名に慣れればもっと楽しめるだろう。

カテゴリ 新感覚

山小屋管理人たちから語られる茶飲み話を収集した短編集。彼らは1年の多くを下界とは切り離された山で過ごし、荷物を担ぎ上げ、登山者をもてなす。24時間ワンオペのサービス業だ。

だからこそ、彼らは山小屋で一生懸命に暮らし、山や登山者へ優しく接することで、魅力ある語り部になる。また、親から子へ受け継がれることが多い職業なので、何世代にも語り継がれる山の話もある。

なぜ山小屋経営者となったのか、山小屋を訪れる変わり者たちのこと、野生動物との交流、災害への対策などなど。開放的な山の空気を感じる語りの中に、時々、山小屋生活ならではの孤独や苦労が現れる。

2017年9月5日

読書状況 読み終わった [2017年9月5日]
カテゴリ エッセイ

退職後の人生、自分はどうするんだろう。と、考えてみるが、なんにも思いつかない。カネを求めるのか、ユメを追うのか、家族との距離はどうするのか。

この短編集に登場する男たちは長い銀行員生活を終え、その後の人生についてそれぞれの結論を出す。紙芝居屋や豆腐屋、海外協力など。が、その結論が正しいのかは判明せず。

それにしても、人生は長いと改めて感じる。まだまだ彼らの人生は終わらない。もはや「余生」という言葉は、「定年後」とは異なるのだ。

そして、大事なのは家族の理解と協力だ。どの男たちも家族に助けられて、これからの人生を生きていく。

2017年9月1日

読書状況 読み終わった [2017年9月1日]
カテゴリ リーマン小説

南京事件はあったのか。30万人もの市民が日本人兵士によって虐殺されたのか。日中間で多くの議論を巻き起こし、どんな結果が出ようとも、左右どちらかから必ず批判されるであろう歴史問題だ。

著名なジャーナリストであれば、深入りしても得にはならないことはわかっている。そんな事件を現代犯罪報道で数々の実績をあげた著者が挑む。なんともリスキーな行動だが、警察も裁判所も信じず、殺人事件の冤罪を証明した著者にすれば、あやふやな事実は許せないのだろう。

そして、著者の取材方法は南京事件でも現代犯罪でも変わらない。一つの事象を様々な方向から検証して、裏を取り、「事実」と認定する。そこにあるのは「だまされない」という著者の決意だ。

南京事件について書かれている市民の日記があれば、原本を確認して、その内容に矛盾がないか他の文献で裏を取る。こうして積み上げた事実による著者の結論は「南京事件はあった」。

さらに彼の疑問は続く。南京事件を見ていない人に取材して、「南京事件はなかった」という報道に意味はあるのか、と。結局、南京事件報道とはイデオロギーや国益、ナショナリズム、ジャーナリズムがごちゃ混ぜになって生み出された「踏み絵」なんだろう。

2017年8月29日

読書状況 読み終わった [2017年8月29日]

ペルーのシウラ・グランデ峰で親友、樋口を遭難で亡くしてしまった真山道弘。その10年後、真山は再び山に登り、氷の中に閉ざされた友の遺体と再会する。が、樋口の風貌は10年前よりも明らかに年を取っていた。

衝撃的なプロローグからはじまる山岳ミステリー小説。遭難後の樋口の足取りを追う真山の前に現れるのは謎の登山家谷本、アイドル登山家榊などなど。次々と起こる疑惑を乗り越え、到達した結論に真山は樋口との友情を再確認する。

それにしても、遭難者が実は生きていて、再び同じ場所で死ぬなんてありえない展開を、どうにかこうにか着地させてしまった作者の筆力はすばらしい。

本書のミステリー性もさることながら、様々なタイプの登山家が登場し、彼らの孤独、苦労などがストーリーを盛り上げる。改めて思うのは、登山家という職業がハイリスク・ローリターンだということ。

2017年8月29日

読書状況 読み終わった [2017年8月29日]
カテゴリ ミステリー

著者得意の山岳ミステリー小説。主人公は亡くなった父の跡を継いで山岳写真家を目指す30代独身男性、風間。風間は冬山登山中、絶滅したはずのエゾオオカミを単独で探す世捨て人、田沢と出会う。

その田沢は過去、風間の父親と交流があり、その後、殺人を犯して服役、出所したばかりだった。さらに、その殺人を冤罪と信じる訳ありな老刑事も登場。

過去の殺人事件が冤罪であったのか。そんな謎解きを軸に、人間の身勝手な行いによって絶滅したエゾオオカミの歴史を辿り、人間と自然との調和を作者は訴える。

正直言って、作者の社会性メッセージが強すぎて、ミステリーとしての面白さは薄い。主人公が登山ばかりに夢中なのはいいけど、その行動が事件解決に直接結びつかない。主人公が長電話をするたびに事件の真相が明らかになるという他力本願捜査。最後の締めは予期せぬ感動動物ドラマ。

2017年8月22日

読書状況 読み終わった [2017年8月22日]
カテゴリ ミステリー

「なぜ、残業はなくならないのか」という問いに著者は答える。残業は企業にとって合理的で、労働者にとって働き方の1つで、マスコミにとって美談だからだ。

たしかにその通りだ。企業にとって繁忙期に人を増やすよりも、現状の人間に残業してもらい、その手当を払う方が雇用面や教育面の効率は良い。労働者にとっても手取りが増えることは悪くないだろう。そして、NHKのプロジェクトXや偉人伝出版社がその苦労話を感動に仕立てあげる。

だから、残業とは、すばらしい制度なのだ。政府は「働き方改革」の名のもと、残業を減らそうと試みるが、本当にそれは正義で誰もが望んでいるのか。しかも政府の容認する残業時間は過労死ラインを越えている。そして、容認残業量を超える場合、サービス残業の強制につながらないのか。

残業にまつわる様々な考え方を並べ、大事なことは残業を減らすのではなく、正しい働き方を模索しようという本書。ズバリの結論は出ていないが、残業で死人が出ちゃいけないってことは間違いないだろう。

2017年8月17日

読書状況 読み終わった [2017年8月17日]
カテゴリ 教養

2006年、原子力発電事業を強化したい東芝が飛びついた米国の原発メーカー、ウェスティングハウス。東電原発事故よりも5年前にその会社を手にしたときから、東芝の没落は始まっていた。と、経済雑誌「FACTA」は説く。

そして、近年の東芝。利益操作、子会社買収失敗の隠蔽、決算発表の遅延、社長と会長の冷戦などなど、企業が崩壊する原因となりそうなイベントのオンパレード。雑誌社としては次から次へと記事ネタをふるまってくれる、ありがたい大企業だ。これだけの事件を抱えても、生き続ける東芝という企業の底力は何なのだろうか。というより、東芝はゾンビ化しているのだろう。

東芝を延命させることに、社会的意義はあるのか。先日、東芝は東証一部から二部落ちしたが、これは終わりの始まりにすぎない。次なるターニングポイントは来年3月の上場廃止、7月の日米原子力協定見直しだ。

2017年8月9日

読書状況 読み終わった [2017年8月9日]
カテゴリ ビジネス

フランス革命と比べて、イマイチ影の薄いロシア革命。本書を読んでみて、その原因がなんとくなくわかった。

原因その1は登場キャラの薄さだ。全然知らない人ばかり。有名どころのレーニン、トロツキー、ニコライ王などもあまり活躍しない。彼らの活躍は革命のもうちょっと後だ。

原因その2は革命がドゥーマと呼ばれる国会と労働者団体ボルシェビキとの1対1の対決だけに終始していること。この2つに国王側や他国が絡むともっと劇的なストーリーになっただろう。

原因その3は、王政から民主主義じゃなく、社会主義国家になってしまったこと。現代では馴染みのないシステムだけに、なぜ採用されたのが社会主義だったのか。今となってはわかりにくい。

と、改めて地味なロシア革命であり、本当の歴史の面白さは革命後のゴタゴタなのだ。

2017年7月28日

読書状況 読み終わった [2017年7月28日]
カテゴリ 歴史モノ

証券会社は顧客に株取引をさせて手数料を得るだけじゃなく、自己資金で株取引して収益を稼ぐ、ディーラー部門がある。そこで働くディーラーたちは会社に正社員として雇用され、会社の資金を投資して、損失も会社持ち。

そんな環境なら、リラックスして投資に打ち込めるのかと思いきや、現実はそうじゃない。仕事である以上、勤務時間中はパソコン画面を睨み、常に取引をしていなくちゃいけない。短期で利益を確定するのが義務。そして、いくら自分のカネじゃなくても、喜怒哀楽は表れるが、そんな感情をはっきりと出すわけにはいかない。感情を抑えることに疲れてしまうのだ。

と、個人投資家とは異なる悩みを抱え、様々なディーラーが登場しては消えていく。著者はそんなディーラー部門で7年勤務。こんな異常な世界で生き残り、他者を冷静に観察する。こんな冷めた感覚も、ディーラーとして生き残る条件だ。本文に登場する採用試験の延長をお願いする土下座男とは対照的。

2017年7月26日

読書状況 読み終わった [2017年7月26日]
カテゴリ 新感覚

映画に重要なのは俳優の演技力だ。

本作品はそんな常識を覆す。登場する俳優たちは皆、無表情な棒読みセリフ。派手なアクションも感情表現もない。それなのに、見ているコチラは飽きないし、「老い」という重いテーマの中でユーモアもキマっている。

ラストシーンで娘を嫁に出して、孤独に打ちひしがれる主人公に声をかける息子のセリフも棒読み。ゴルフクラブ購入をめぐっての夫婦の言い合い、主人公たち仲良し3人組の飲み会もほぼ棒読み。しかし、そんな朴訥で不自然なセリフが妙にいい味で、コミカルだ。

俳優の過剰な演技を排した結果、こんな名作が完成。とはいえ、俳優陣は演技のできない素人ではなく、笠智衆 や岩下志麻、佐田啓二などの一流どころ。監督・演出側から、ぶっきらぼうな演技を求められ、その期待に応えつつ、無言の存在感でアピールする名優たち。名監督小津安二郎への信頼感があってこそだ。

ちなみにタイトルの「秋刀魚」は登場しないが、全編に秋の季節っぽさが漂う。

2017年7月20日

読書状況 観終わった [2017年7月20日]
カテゴリ 古典的名作

カメラのない時代、記念写真代わりになるのは「絵」だが、誰でも描かれるものじゃない。相当な財力と描かれるのにふさわしい家柄が必要だ。

そんな条件を満たしていたのが、マリー・アントワネット。父親は神聖ローマ皇帝フランツ1世、夫はフランス国王ルイ16世。文句なしの家柄と財力を背景に、幼少から死の直前までのアントワネットには多くの絵画が残されている。

本書はアントワネットが描かれた絵画を歴史順に並べ、彼女の生涯を追いかける。彼女の偉人伝だ。ヴェルサイユ宮殿での絶頂期からフランス革命を支持する大衆による監禁、そしてギロチン処刑と、空前絶後な波乱の一生を送ったアントワネットだが、その行動は常に受け身だ。姉の急死によりフランス王妃となり、ルイ16世の優柔不断と親国王派の人材が次々と亡くなったことが彼女を追い詰める。自らの意思なく、運命に弄ばれた不幸な一生だった。それゆえにフランス革命を象徴するアイコンにふさわしい。

夫ルイ16世が処刑され、次の処刑に自分が選ばれることは間違いのない状況で、喪服を着た彼女の肖像画が一番印象的だ。まだ30代なのに、苦労と恐怖で白髪になったマリー・アントワネットにかつての威厳も気品もない。そんな自信のない表情こそが本当の彼女だったのだろう。

2017年7月19日

読書状況 読み終わった [2017年7月19日]
カテゴリ 歴史モノ

新撰組といえば、武士よりも武士らしく生きた集団。滅びの美学に殉じたことでも有名。しかし、組織としての新撰組は内部粛清を繰り返した。芹沢鴨、山南敬助、伊東甲子太郎などの幹部クラスを含めて約40人もの組織員が死罪や暗殺などに処されている。その数は戦闘で命を落とした者よりも多い。

オウム真理教やあさま山荘事件のように過激な無法組織が信賞必罰と規律維持を極めると、「死」をもって償うという結論に達するのは必然だろう。しかも、新撰組隊士にとって担保となるのは自らの身体だけ。守るべき財産も家も名誉もない彼らに罰を与えるには「死」という選択肢しか残らない。その結果、新撰組が規律を守るためには粛清しかなかった。

とはいえ、そんなことを繰り返していたら貴重な人材は殺されるか、逃亡するか。そして、凡人だけが残った新撰組は自然淘汰されただろう。現在のシャープや東芝で優秀な社員ほど先に辞めていくことと同じ。しかし、新撰組は人材難で崩壊する前に親会社の幕府が崩壊し、トップの近藤勇も斬首して、やむを得ずに解散。

幸か不幸か、新撰組は「粛清好きな過激集団」という悪名を残す前に滅びることができた。

2017年7月14日

読書状況 読み終わった [2017年7月14日]
カテゴリ 歴史モノ

戦争の恐怖、狂気、無益を鑑賞する者に訴える傑作絵画「ゲルニカ」。スペインの都市ゲルニカへの無差別爆撃を抗議する孤高の画家ピカソの強烈な一撃だ。しかし、ピカソの怒りは届くことなく、戦争は拡大。やむを得ず、戦火を避けるためピカソはゲルニカをパリからアメリカへ「亡命」させる。

そして、21世紀。ゲルニカを守ったアメリカは9・11テロ報復のため、イラクへの空爆を決定する。その発表の場、国連ビルのロビーに飾られているはずのゲルニカのレプリカには暗幕がかけられていた。

戦争に翻弄され、祖国スペインに戻されたゲルニカだが、再び戦争に翻弄されることになった。しかも、ゲルニカを守ってくれた国が起こした戦争で。皮肉な運命を背負ったゲルニカと、それを守ろうとした人々を描く美術ミステリー。

で、結局、暗幕をかけたのは誰だったの?

2017年7月7日

読書状況 読み終わった [2017年7月7日]
カテゴリ ミステリー

愛知県豊臣市に本社を置く、世界ナンバーワンの自動車メーカー「トヨトミ自動車」。歴代の社長は創業家の豊臣家出身、または豊臣家の信頼を得た者のみ。言うまでもなく、そのモデルは日本の誇るグルーバル企業「トヨタ自動車」。そうした匿名でトヨタの内幕を描いた企業小説。ちなみに作者は城山三郎ならぬ「梶山三郎」という覆面作家。

非創業家で途上国への左遷を経るも、その実力と創業家会長の信頼を得て社長にのし上がったトヨトミ社長武田に、創業家の御曹司豊臣統一が挑む。この2人のモデルは奥田碩と現トヨタ社長の豊田章男。さらにヒット商品、ハイブリッド車「プリウス」ならぬ「プロメテウス」も登場。どこまでが実話で信じていいのか、違う意味での緊張感があるストーリー。

経営者としての実力は明らかに武田が上だが、統一にはトヨトミ一族というブランド力がある。さすがの武田もこのブランド力には勝てず。意外な裏切りもあり、ついには豊臣統一社長が誕生する。が、そこからがトヨトミの苦難のはじまりだった。こうした時代の流れはトヨタの歴史でもあり、日本の経済史でもある。

ところで冒頭、豊臣統一が美人局に引っかかるエピソードは何かの実話を脚色しているんだろうか。

2017年7月4日

読書状況 読み終わった [2017年7月4日]
カテゴリ ビジネス

人生90年のこの時代、60歳で定年退職した後、何を残し、どう生きるかは人生の大きなテーマだ。

官僚として、不器用ながら実直に生きてきた2人の男が60歳を前にして、天下り先を紹介される。そこは今までの給与が支給されたうえ、仕事らしき仕事は何もない。ただ出勤するだけの天下りパラダイス。そんな幸運を謳歌し、そんな職場を維持してくれるトップを天皇のごとく敬う周囲。しかし、2人は汗をかかない仕事になじめず、辣腕秘書の力を借りて、独自のやり方で売上をあげようとする。

奇想天外な現代のおとぎ話。非現実的すぎる売上の稼ぎ方にツッコミを入れたくなるが、要するに「天下り」のくだらなさと、無意味さを描いたブラックユーモア小説。おそらく、作者の中では天下りを思っきり笑いで批判しているんだろうが、ちょっとわかりにくい。

2017年7月3日

読書状況 読み終わった [2017年7月3日]

最近の出版業界で流行している「~の世界史」というタイトルに便乗した「世界史に学べ」。そこに池上彰の現代教養エッセンスをふりかけた現代ニュース評論本。著者は世界史の講師なので、ジャーナリストの池上氏や佐藤優氏ほどの毒はない。が、それはそれで純粋な教本として読みやすい。最近の国際ニュースでよく出るなんとなくわかった気になっている言葉の意味を、その背景となる歴史を含めて教えてくれる。

「クルド人」って誰?
ウクライナってどういう存在なの?
ユダヤ教とキリスト教とイスラム教は仲が悪いの?

こうしたモヤモヤを解決してくれる。

しかし、改めて思うけど、日本人にとって民族問題、宗教問題というのは実感がないから理解するのは難しい。まずは歴史をじっくりと学ぶことからはじめたい。

2017年6月27日

読書状況 読み終わった [2017年6月27日]
カテゴリ 雑学

市街でパトロール中、銃撃を受け、同僚は死亡、自らも重症を負った警察官スコット。一方、戦場で戦闘中に飼主が銃殺され、自らも重症を負った軍用犬マギー。ともに相棒を失い、自分だけが生き残った彼らが出会い、パートナーとして警察捜査に携わる。

水谷豊ドラマの「相棒」の片方を犬にした感じの警察小説。ただし、「相棒」ほど主人公に個性はない。純粋な推理ミステリー。人情とか、感動とか、恋愛とか要素は一切ない。タイトルももうひと工夫ほしい。

犬を飼ったことがある人や犬好きな人は楽しめる・・・のか?

2017年6月21日

読書状況 読み終わった [2017年6月21日]
カテゴリ ミステリー
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