深海の使者 (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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  • 太平洋戦争時、日本は同盟国ドイツとの物資や人材の移動手段は潜水艦だった。日本を出発した潜水艦は南下し、インド洋、喜望峰、大西洋を経由して、ドイツへ。

    敵への攻撃を控え、隠密行動に徹底。航海中の乗員は長時間の潜水時は酸素不足に悩まされ、長期間上陸できなければ、水不足で入浴どころか、洗顔もできない。わずかな接触による被害が即、沈没につながり、乗員の脱出はほぼ不可能。深海で攻撃を受けた潜水艦はひっそりと海底に沈み、記録にさえ残らない。

    出発からすでに悲運を背負った潜水艦たちの行動を、著者は残された記録、生存者のインタビュー、さらには敵国側の資料をもとに、本作品で明らかにする。いわば、戦時中の日本潜水艦を主人公にした短編小説集。

    よく映画で描かれるドイツのUボートの華々しさとあまりにも違いすぎる日本潜水艦の暗い運命。この違いが特攻隊のような戦術を考える日本人らしい。

  • 実話だなんて信じられない系

  • 吉村昭最後の戦争小説。
    連合国軍に比べて、独伊日3国間の連携のもろさ、
    ドイツの敗北、ソ連軍の侵攻、そして日本の敗戦、
    潜水艦による喜望峰まわりのフランスの港への大航路、
    その綿密な取材力に脱帽する。
    やっぱり吉村昭は、スゴイ。
    半藤一利が巻末解説を寄せている。

  • めっちゃ面白かった。潜水艦で日本とドイツが連絡を取ろうとしていたとは知らなかった。日本の5隻のうち1隻しか往復できなかったという悲惨なお話だけれど、ハラハラドキドキして読むのが止まらなかった。ドイツからもらった2隻も1隻は日本に到達できず。優秀な人たちが亡くなっていった。吉村さんはそれを淡々と書くので、かえって読み手の悲しさが深くなる。チャンドラボースの存在を初めて知った。
    飛行機でドイツに行こうとした人たちはどこで何があったのか。個人レベルでオンラインでつながる現在の姿は想像を絶することなんだろうな。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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