賞の柩 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451399

作品紹介・あらすじ

イギリス医学会の重鎮、アーサー・ヒルがノーベル賞を受賞した。日本の青年医師・津田は恩師の死因を探るうちに、アーサーの周囲の不審な死に気がつき……。本格医療サスペンス。(解説/陣野俊史)

感想・レビュー・書評

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  • 英国のアーサー・ヒル博士にノーベル医学・生理学賞授与がされるとの新聞を読んだ津田。彼の恩師、清原修平もアーサー・ヒルと同じ分野で筋肉の収縮についての研究をしていた。もしも生きていれば恩師もノーベル賞を狙えたのに...と早くに亡くなった恩師に思いを馳せる。

    津田自身は己の研究者としての限界を知り、臨床の世界に戻っていたのだが、このニュースをきっかけにふとその当時、筋肉についての研究でトップを走っていた他の研究者を調べてみることに。すると、ここ4、5年新しい論文を全く出していないことが判明する。不審に思いながらも、さらに恩師の記念誌をめくってみるとフランスの講演会で出会った無名の研究者の話が書かれており、驚くべき事実が書かれていた。

    その後、論文を出していなかった研究者が実はもう亡くなっている事実に突き当たる。しかも皆清原と同じ病気に罹っていた...。津田の中で悪い予感が持ち上がり、謎を解明するために無名の研究者、そしてノーベル賞受賞者のアーサー・ヒル博士を追う。果たして津田の予感は的中するのか。

    箒木さんの小説は安心して読める。非常にスキャンダラスな内容なんだけど、バックグラウンドをしっかり書いてくれてるおかげでこいつは悪いやつだ!と一言に切って捨てれない何かがある。立派に見える人も所詮は人なのか...と人間の業を見せてくれる。そんな中でも一途に研究を求める人や、教育者として弟子を引っ張って行く教授の描写もあったりでそういう部分には人間であることの救いも感じたり...。恩師の無念を晴らすために津田はフランス、スペイン、イギリスに行くのだが、その場所毎の風景描写も良かった。自分も旅したいなーと思いながらページを捲りました。

    さて、あなたは名誉の先に何を見るでしょうか?

  • ついこの間ノーベル賞が発表になり、日本人が受賞したことは喜ばしいニュースであるが、この作品はそのノーベル賞が背景の医療サスペンス。恩師の死因を探るため主人公は、疑惑の受賞者や関係者を訪ねて、ヨーロッパ各地を巡り歩く。疑惑追及の旅ではあるが、旅情豊かな景色の描写に、爽やかな読後感となっている。

  • 面白かった。読みやすかった。
    帚木蓬生さんの作品は本当にどれも読みやすい。
    こういう世界があるんだなぁ、と思いながら読んだ。医学、生理学などの研究に携わる人は、純粋に苦しむ人を助けたい、という志で励んで欲しいものだと思った。

  • イギリス医学会の重鎮アーサー・ヒルがノーベル医学・生理学賞を受賞したことを端緒に、青年医師・津田が自信の恩師である清原の随筆を読んだことから始まる医療サスペンス。

    津田の恩師に対する思い、その娘・紀子の父への思慕、無名の研究者の発見が搾取され狂わされた人生、そして研究者たちの不可解な死因、とグイグイ引き込まれた。

    章が変わるごとに目線が変わり、今回は誰?あれは誰が探り当てたんだっけ?と混乱する時も。
    権威あるものに逆らえない風潮はどの分野にもあるんだろうけど、殺人はともかくこんなことは現実にもありそうで、なんだかノーベル賞も手放しで賞賛できなくなりそう。

    それにしても死因が明らかになる終盤は背筋がゾクッとした。こんな殺し方、秘密裏にブツを持ち出せる人がいればある意味完全犯罪。怖いわ〜

  • 地元の誉である帚木蓬生さん。(うちの父の同級生であることを最近知りました)

    仏文科と医学部をご卒業されたという作者の経歴が生かされた、ヨーロッパを旅しながらの医療サスペンスがおもしろかったです。栄光の裏には、きっとこういう隠された事実がいくつもあるんだろうなと思います。

  •  ノーベル賞を巡る疑惑を追及したサスペンス。
     結論からすると、話の筋は非常に簡単なのだが、登場人物の多さと、日本・イギリス・フランス・スペインを舞台にした国際的なスケールが話を複雑化している。外国の情景は割と詳細に書かれているが、イメージがわかない人にはやや小難しい内容となってしまうかもしれない。
     人間は、名声と権威を得ると傲慢になってしまうのかなと思ってしまう(もちろんそうでない人も数多くいるが)。謙虚さが欠けるというか、真摯な姿勢ではなくなるというか…。そのようなことも考えさせられる作品。

  • 実際にありえるんじゃない??

  • ノーベル医学生理学賞のイギリス人受賞者の周りに隠れている不審死。多くの人の目線で語られるので始めは混乱したが、後半は盛り上がって面白かった。
    亡くなった日本人教授の弟子であった医師津田が主に謎を追うのだが、彼の性格が(特にデートしてるときの)ちょっと疑問…笑。

    エンディングはスカッとはしないし、盛り上がるとは言えやっぱ帚木さんの本は地味だなあ。あれもこれも無理に繋がったりどんでん返しがあるわけじゃない。そこがまた好き。
    アーサーヒルの内面はもう少し読みたかったかな。
    お手にとる方は、解説もぜひ。

  • イギリス人が受賞したノーベル賞の裏には、意外な過去があった。
    ノーベル賞を巡っていろんな人の死が関係していた。
    次々と真実を突き止める津田医師。
    医学ミステリーでは帚木氏の小説は面白いです。

  • ノーベル賞を受賞したイギリス医学界の重鎮
    彼の周りでは、ライバルたちの謎の死があった・・

    若い研究者の画期的な論文を
    潰したり、自分のものにしたり。
    こういうのって実際にあるのかもしれない

    サクサクと話が進んで読みやすい医療サスペンス

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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