- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087451559
作品紹介・あらすじ
エチオピア、ネパール、メキシコetc…世界中の国を旅するなかで、著者は様々な食文化に出会う。“食"から見えてくる、土地と人びとのかたち。開高賞作家による珠玉のノンフィクション!(解説/森枝卓士)
感想・レビュー・書評
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本書の筆者である中村安希を最初に読んだのは、3年ほど前のことであり、それは、開高健ノンフィクション賞を受賞した「インパラの朝」という本だった。「インパラの朝」は旅行記だった。アジア・中東・アフリカ・ヨーロッパの47か国をを684日間まわる、とても過酷な旅の記録だった。私はこの本がとても気に入り、その後も中村安希の本を何冊か読んでいる。
本書「食べる。」も久しぶりに中村安希の本を読んでみようと思って手にとったものだ。「食べる。」という題名から考えて、当然、何か「食」「食文化」等に関するノンフィクションだと思っていたが、実際には、この本も旅行記だった。「食べる。」ことは、収載されている16話に必ず出てくるが、それがメインのテーマではなく、旅先での出来事の一つとして位置づけられている。「インパラの朝」のような旅行記をまた読んでみたいな、と思っていたので、そういう内容であったことは、嬉しい勘違いでもあった。
最後の16話目、ルーマニアでの話の中で、彼女は「旅」についての自分自身の考えを書いている。それは、彼女の旅のブログを読んでメールをくれた、ルーマニア人の女性に対しての返信のメールとして書かれている。
【引用】
私は、旅を全くしない人生は、意味や特徴が少ないと考えています。旅をする以外の方法で、どうやって世界のことを知ればいいのかが私にはよく分からないし、さらに言うと、この世界のことを何も知らないままでは、自分が何をすればよいのかを正確に知ることはできないと思うからです。だから旅をしています。
【引用おわり】
このような考えを持つ人の旅行記として、「インパラの朝」に続き、本書も楽しく読んだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
海外旅行に行けない今、空想旅行するのに良かった!私も著者みたいな安宿を泊まり歩く旅がしたい。
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最初は結構淡々と話すし、そこまで一喜一憂せず、感情をそこまでださないのかなと思って染み込まなかったけど、中盤からノリに乗ってきた。面白い。
でもちょっと残念だったのが解説。なにかを薦めるときに何かを下げる必要は無いと思う。
「臭かった。けれど臭みが顔中に広がると、不思議な気持ちよさがあることに気がついた。それは、臭みにはまったついでに、どうせなら、もう一かけ迎え撃ちたいと思わせるような、意欲を掻き立てる味だった。」
「それは私が愛したグリーンティーで、それ以上でも、またそれ以外でもない。」 -
"この世界のことを何も知らないままでは、自分が何をすればよいかを正確に知ることはできないと思うからです"
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食べるというのは生きることそのもの。
中村さんのようにのびのびと真っ直ぐよく食べてありのままに感じて生きたい。 -
彼女の行動力に驚愕。
未知の世界に足を踏み入れていく様は逞しくもあるが、同時に心配しながら読んだ。
本書には書かれていなかったが、きっと危険な目に幾度となくあっているのだろう。
世界には色々な環境で色々な食べ物を食べている人々がいることを、本書を通じて改めて知った。
友人から旅の土産話を聞いているような、それでいて私自身も旅に出たような、日常とは違う世界に連れて行ってくれた。
食べるという人間の根源である行為を中心に書かれていることが、生きること、生命力を想起させ、より一層印象に残る内容になっているのではないだろうか。 -
食べるということは生きるということ。
旅先でえげついモノでも食べる勇気、すごいな。 -
『インパラの朝』(集英社)で描かれていた、旅をする著者の姿がかっこよかったので本書も読んでみました。
食べる、というタイトルですが、いわゆる食レポではありません。
食べ物の周囲には、それを食べる人がいて、彼らの暮らしがある。
著者が各国で出会った人や出来事を綴る中に、印象的に、ときに象徴的に食べ物が登場する16の文章が収められています。
著者のきっぱりとした文章からは、彼女の体験したことをリアルに伝えようとする冷静さが感じられます。
乾杯の口上とともに次々に空になるショットグラス。
気のおけない仲間と楽しく喋りながら頬張るタコス。
半ば無理矢理連れてこられた山の村祭りで口にした解体したてのヤギの内蔵。
ページの向こう側から立ち上る"その場"の気配が、より濃密に感じられました。