岳飛伝 1 三霊の章 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087455113

作品紹介・あらすじ

幻王・楊令が斃(たお)れ、梁山泊は洪水によって壊滅状態となった。金国は南進を、軍閥・岳飛がいる南宋は梁山泊を狙う三つ巴。大水滸伝・最終章『岳飛伝』待望の文庫全17巻刊行開始。(解説/原 泰久)

感想・レビュー・書評

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  • 楊令伝の最後に楊令が死ぬ。

    その楊令に右腕を切り落とされた岳飛の物語が今始まる!


    とは言うものの読み初めは出涸らし感がたんまりとしてました。

    水滸伝の英雄達の生き残りもあと僅か、あの九紋龍でさえ文章から体力の限界に一歩一歩近づいているのだなぁ感じるところがあります。

    前作楊令伝の始まりでは色んなものに期待がありました。前々作の水滸伝で童貫に滅ぼされた梁山泊を呼延灼や公孫勝、武松達が支え楊令を統領に迎え建て直し打倒童貫という目標があった!

    しかし、本作には何がある?何が残っている?という思いがあり暫く時間を置いてしまいました。



    本作を読んでみての感想は『暁光がある』という事です。

    多くは語りません是非ご一読下さい!

  • 王貴の持っている腕に、手を突っ込みながら張朔は言った。
    「俺はこのところ、戦というものに、そんなに強い関心を持てないんだよ、王貴。父が童貫戦で討たれた。それを思うと、軍に入らなければならない、という気もするのだが」
    「俺の親父は、俺や王清に会うこともなく、死んだ」
    「御母堂は、やはり童貫戦で死なれた」
    「そうだな」
    「なあ、王貴。俺たちは、なにを受け継いでいるんだろうか?」
    「俺は、そんなことは考えない。その場所で、1番になる。俺は、ずっとそうだったよ」
    意地が悪いのか、性格が悪いのか、よくわからない時があった。いつも1番というのなら、なんとなくわかる。
    西域の旅でも、なにをやっても王貴は1番で、張朔はいつも駄目だった。顧大嫂に、しばしば張り倒されたものだ。強烈な平手だが、しかしどこか気持がすっきりした。
    「沙門島で、顧大嫂殿から手紙を受け取った。自分のことは、自分で考え、自分で決めろ、というようなことが、書いてあった」(349p)

    4年以上待った。長かった。しかし、秋(とき)は過ぎ去ってみれば一瞬である。前回「楊令伝」で、主人公楊令が突然の暗殺死でなくなってから半年後の物語。単行本完結で「大水滸伝シリーズ」が51巻で終わった。そして文庫本が、遂に刊行され始めたのである。文庫本でのみ、私はこのシリーズを「買って」読むことに決めているので、仕方ない。その代わり、4年間を17ヶ月という1/3に短縮して、このシリーズを一気に駆け上がりラストまでもってゆくことが出来る。

    一巻目は、登場人物の紹介でもあり過去の物語を各人物から解説するようなものだった。それは、それで新たな発見もあり、面白くないわけではなかった。岳飛伝、と言いながら、岳飛の比重は恐ろしいぐらいに低い。文章量だけでなくて、存在感もまだ低いのである。その代わり、南宋の宰相として確固とした地位を確保した秦檜と、以前は金国の太祖阿骨打の不肖の息子、ウジュが、何時の間にか物語を引っ張るような大きな漢(おとこ)として登場してきた。

    楊令がいなくなり、梁山泊を侵した洪水は楊令の国造りに壊滅的な打撃を与え、新頭領の呉用さえも、新たな展望は見出せずにいる。それらが全編を覆い、大きな物語はまだ動いていない。しかし、物語は王清の鉄笛から始まった。「水滸伝」の英雄たちの息子たちが、今、正真正銘その全面にでてきた。王清の異母兄の王貴や張平の息子張朔の会話は、だから、今後の岳飛伝の未来をも語っている気がしてならない。彼らたちは「なにを受け継いでいるんだろうか?」「自分のことは、自分で考え、自分で決めろ」戦争はあるだろう。しかし、歴史とは、戦争だけの物語ではない。のである。

    2016年12月18日読了

  • さぁ、全17巻のスタート。
    古い友人に再会する様な気持ちで読み始め、皆と同じ様に亡くしたものの大きさを再確認しています…

  • 北方謙三大水滸伝シリーズの最終章、『岳飛伝』。最初の巻は、前シリーズの主人公・楊令の残影を引きずりながら、それぞれ新たな時代へと向かおうとする群雄が描かれます。ここから、物語と歴史が結節するところまでワクワクしながら読んでいこうと思います。

  • 北方水滸伝の最終シリーズ
    壮大な実験国家の梁山泊は、巨大な自然災害と巨星の死により分解の危機に。梁山泊の実験はどうなる?
    そして、岳飛は揚令との戦いの傷を癒やし、どこに向かうのか?
    向かう方向が気になる。

  • また、水滸伝、楊令伝に続いた、岳飛伝が始まった。まあ、あんまり出た時は読む気にならなかったが、読み始めると面白そうですね。さあ、梁山泊はどの方向に向かってくかです。金、南宋、梁山泊の三つ巴、いかに生き残るか。 まだ序章です。

  • 待ち焦がれていた文庫化。大水滸伝シリーズの最終部「岳飛伝」の幕が開きました。

    頭領を喪った「梁山泊」、「南宋」、「金」、そして南宋の中の一軍という形にはなっていますが、岳飛率いる「岳家軍」それぞれの視点から、少しずつ楊令後の世界が描かれます。

    個人的に最も気になる梁山泊の様子は、頭領が不在の中、また未曾有の大洪水による被害も癒え切っていない中、よく堪えているものの、当然ながら様々な問題が出てきています。主要な人物たちも「どうすべきか、何をすべきか」と悩みながら、何とか日々自分にできることをしています。
    いまだ力はあるものの、先行きの不安をひしひしと感じさせ、読者である僕としても、お馴染みのキャラクターたちとの再会を手放しに喜べない雰囲気です。

    そんな中、本巻の最終章で王貴があるチャレンジの末に出会った新たな登場人物とのエピソードは、お気に入りの一つです。本シリーズ読者には垂涎ものの「李逵の香料」も出てくるんですよ。

    気づけば、タイトルロールの岳飛のことを何も話していませんが、彼が養生所で延圭という兵士と対話するエピソードも好きです。
    楊令に徹底的に負け、打ちのめされたまま、その楊令を喪くした彼にとって、もしかするとこの対話が何かのきっかけになっていくのかな。何れにせよ、まだ本巻ではそんなに目立っていません(笑)

    そんな岳飛や梁山泊が、そして水滸伝から続く「替天行道」の志はどうなっていくのか、これから16ヶ月かけて、しっかりと目に焼き付けていきたいと思います。

  • ようやく大水滸最終シリーズに取りかかりましたが時間空きすぎて誰が誰だよ案件がやばい…読んでる当時ですら一晩明けると誰おま読書だったが…って思ってたんですけど、やっぱり惹かれていく。この文の力は本当にさすがと思わせる北方謙三です。
    岳飛伝と銘打ちながら梁山泊が主人公そして贔屓は否めないね笑

  • 楊令ロス。

  • 水滸伝、楊令伝に続く第3章。
    続ければ続けるほど駄作になるものが多いですが、水滸伝から楊令伝。
    とても、楽しめました。
    そして、岳飛伝。
    今回の作品も楽しめそうです!!

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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