岳飛伝 7 懸軍の章 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.92
  • (9)
  • (30)
  • (13)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 217
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087455816

作品紹介・あらすじ

南方の秦容は10万人を抱える町を企図し、小梁山と名付けた。岳飛も岳家軍を再興し、家族も呼び寄せる。青蓮寺の影が見え隠れする中、それぞれが戦いの気配を感じ始めていた。(解説/桜木紫乃)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 前巻で何とか南宋の魔手から何とか逃げ切った岳飛!
    本作では、新たな軍営を立ち上げる!

    秦容の開拓地は何と街を作ることに!?
    なんか、もうこれ一冊でやって欲しい感がメチャメチャあります。

    一方で梁山泊では宣凱の恋の予感!!?

    西では韓順が一仕事を付けるものの、夫婦関係と親子関係について・・・


    張朔は日本に行ったり南に行ったり、動き回るものの、父を討った岳飛について考えることとなる・・・


    そして、南宋の韓世忠の水軍が完成しました。
    近々、梁山泊水軍と海戦の予感・・・
    たくさん死んじゃうのかなぁと心配でしかたありません。

    水滸伝から通算して、現在41巻目!!!

    随分と遠い所まで来たなぁと感じてしまう岳飛伝7巻でした!

  • いつもレビューは発行日の翌月の5日前後になっているので、読むのに2週間近くをかけているかのようではあるが、実際は違う。

    たいていは発行日の5日以内に購入して、その5日以内には読み終わっている。いや、実際は2日で読み終える。読まないでは、いられなくなる。出来るだけ、ゆっくり読みたいと思う。読んでいる時だけ、現(うつつ)の憂さを忘れることの出来る本は少ないからだ。読み終わったら、何度か読み直す。そしてレビューを書き始める。そうやって、既に40巻以上の大水滸伝シリーズを読んで来た。

    まだ10巻もあるのだけど、なんか既に終わるのが辛くなって来た。ここにいる登場人物たちとの別れが刻一刻と近づいている。

    久しぶりに蔡豹が登場した。本人も本文の中でも「わたしは梁山泊ではない」と言っているが、なぜか王清と共に目次の登場人物欄に彼らは梁山泊として数えられている。実父を殺したのは、育ての親の蔡福だと信じてしまっている蔡豹の人生は、子午山でも真っ直ぐになる事はなかった。しかし浪子燕青が彼に仕事を与えた。そこから何かが変わらないか。期待したい。

    宣凱さえも目に見えなかった史進の剣さばきに、日本の剣豪を当ててみたいなどの叶わぬ夢を持ってみる。長編ならではの超奥手・宣凱のエピソードが愛おしい。史進が言う。
    「行け。行先は、おまえより、万里風が心得ているさ」(233p)

    10万人の町は既に町ではない。国だ。南に行って、ただ営々と砂糖を作り、交易するという単純な仕事から、営みが大きくなっていって、生活だけではなく、幸福さえも求めてゆく。秦容が始めるその試みは、しかし梁山泊があるから出来たことではある。
    「替天行道の志が、なぜ存在し続けていられたのか。その理由が、はじめてわかるような気がした」(119p)

    理想を追い求めるとは、どういうことか。ひとつのかたちを見せつけてくれて、わたしには、とても興味深い話である。

    2017年6月1日読了

  • 第7巻は、様々な人達(猿も!)の営みが描かれる。
    ホッコリしたりジーンときたり。
    これは嵐の前の静けさなのか?
    次巻に進もう!

  • 岳飛は南に逃れ拠点をつくる。その援助は呉用の遺言に従った梁山泊が行った。
    金と南宋は自国の国力を増すために交易に目をつける。そして両国ともに梁山泊をいずれ潰そうと決めた。
    ここまで読んでやっぱこいつ嫌いだわと感じたのが南宋の韓世忠。異母弟を犬呼ばわりして殺すわ、父娘と思っていた女を妻にするわ、勝てない戦はしないわで生理的に受け付けない。

  • 嵐の前の静けさが続いている感じ。
    大きな戦いはなくて、これから起こる大きな戦いの下ごしらえが着々と進んでる感じ。

    そんな中で、韓世忠と梁紅玉だったり、韓成と郤妁だったり、宣凱と朱杏だったりと、男と女の物語が展開していた印象。

    そうそう、ようやく項充がちゃんと出てきた。史進や李俊、孫二娘、顧大嫂、李立なんかも、死に場所を探してる感じになってきてて、どういう幕引きをするのかも注目か。

    あとは岳飛がこれからどうなるのかも、もちろん楽しみ。

  • 岳飛の復活。
    やはり戦いがあまりないと楽しさ半減という感じですが。
    ここからの梁山泊・岳家軍。
    どのような展開を起こしてくれるのかは期待大ですね。

  • さすが主人公だけあって、どん底から這い上がるのが早い。
    南宋と秦容の土地の間に岳家軍が駐留するということは、岳飛は南宋と戦うことになるのだろうか。

    大きくなりすぎた梁山泊の交易は、少しその形態を変える。
    拠点を縮小し、常に物が動いているように。
    南宋は日本との交易の道を探る。
    そして南宋の水軍は徐々にその力を増していく。

    今回は韓成の話が良かった。
    死ぬことで幸せになるという方臘(ほうろう)軍の生き残りを調練して、童貫戦で梁山泊の切り札として人の盾を作った韓成。
    それは、韓成としてもやりたくなかった作戦ではあったのだが、それでも大勢の人間をただ死ぬためだけに戦場に送り出したことの免罪符にはならない。
    ずっと自分を許せなかった韓成は、梁山泊を出て、西域に赴く。

    西遼に従わない部族を、武器を持たない韓成が命がけで説得する。

    ”「おまえ、戦がいやだと言い続ければ、ほんとうに戦がなくなると思っているのか?」
    「なくなるものか」
    (中略)
    「たえず、血は流れ続ける。歴史が、それを証明している。しかし、戦をやめようと声を上げるのは必要だ、と俺は思っている。」”

    北方謙三が書きたかったのは、これか、と思った。
    好戦的な部族に、戦う武器を持たず、殴られ、蹴られても、話し合いを求める韓成。
    何か月も何か月も。
    やさぐれているように見えた韓成は、ずっと自分を許せず、認めることができなかったんだとわかる。

    この先梁山泊は、今まで以上に貿易に傾いていくのだろう。
    その時呼延凌(こえんりょう)率いる梁山泊軍はどうなるのだろう。
    自然消滅?それとも玉砕?
    どちらにしろ、歴史の表舞台から消える日は近づいてきている。

  • 窮地を脱し大理で一人再起を誓う岳飛の元に集まる岳家軍の面々。甘薯糖作りも軌道に乗り十万人規模の集落建設を計画する秦容。
    国力を上げるため南方に狙いをつける秦檜、再び動きを見せ始めた青蓮寺、水軍の衝突の気配が色濃くなっていく梁山泊と南宋。今後の伏線がいくつもみられる。
    印象的だったのが岳飛と張朔の邂逅。父・張清を討った男と酒を酌み交わし語らう何とも粋な演出。

  • 南宋を逃れた岳飛は、南で梁山泊との縁を深めていきます。一方、老将たちが消えていく中で、若い宣凱や王貴は恋にも一途に走り、世代の波を実感させます。
    その陰では、水軍から次の戦の狼煙が上がりそうな予感を漂わせる巻でした。

  • 相変わらず、登場自分物の小粒化は感じてしまうし、水滸伝からのお馴染みさんが出てくると、嬉しくなってしまう。でも、現状なりの世界観が構築されてきて、人物の小粒化を、世界の拡大で補っているようなイメージ。中国だけでもとんでもない広さなのに、南へ西へ、果ては日本まで、かなり広がりまくってます。いわゆる戦争は減ってきているけど、自然との闘いみたいな部分が多く描かれていて、これはこれで魅力的。再生しつつある岳家軍の今後とか、梁山泊の行く末とか、見守るべき展開はまだ数多あり、今後ともやっぱり目を離せないです。凄いな、北方大水滸。

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北方謙三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×