星に願いを、そして手を。 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458411

感想・レビュー・書評

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  • 2016年作品

    夏バテや気分も滅入っていたので、心のビタミン剤として、爽やかそうなこの本を選んだ。
    よく読む恩田陸は後回しに。

    16歳でこの本を書けるとは経歴を見ると頷ける。
    現在、京都大在学中。
    主人公24歳、他同級生、孫16歳、天文学というプロットが上手く16歳で創作しやすく、背伸びせずフレッシュ感があり、賞を得たと感じる。

    館長が無くなり、科学館閉館する話で、館長の過去や主人公の思い出、孫の話で3つの時間も表現している。

  • 当時16歳の著者が書いた、小説すばる文学新人賞受賞作。読んでいる間、青いなあ、と思うことが多かったのですが、16歳がこの小説を書いたと聞くと、その青さの意味も大きく変わってくる気がします。

    中学時代毎日のようにプラネタリウムと図書館が併設された通称「科学館」で過ごしていた4人の少年少女。しかし、ある時を境に4人の距離は疎遠になってしまう。それぞれが就職し大人になってから、その科学館の館長の訃報が届き4人はひさびさに顔をそろえる。そこで科学館の閉館も明らかになり……

    作品の雰囲気は全体的に感傷的。それぞれの大人になりきれていない部分、夢を諦めたことに対する後悔であったり、青春時代の気まずさを引きずっていたり。そして物語の前半は回想が多用されて、それも彼らが青春時代を引きずっている感じを演出する。

    4人の話と並行して描かれる館長の孫のパートも、将来のことが具体的に想像できないであるとか、言葉にできないモヤモヤであるとか、そういった感情が描かれます。

    将来の夢、変わっていく人間関係、一つしか選べない未来。そうしたものに対する不安というか、言葉にできない思いというものが、物語全体に投影されている気がします。そしてこうした話を16歳が書いたと聞くと、スッと腑に落ちる気がする。著者自身が抱えていた今と将来への鬱屈とした思いが、作品全体を纏っていたように思います。

    現在科学館で働く薫が書いた高校の校庭への落書き、館長が残した論文、そうした謎を配置しつつ、物語はクライマックスへ。

    夢の残酷さ、変わっていくものに対する言いようのない不安。それに対し著者は、この小説を書くことでそれに言葉を与え、意味を見出したのではないか、と思います。
    物語は全体的に青臭くて、今の年齢の自分が読むと正直気恥ずかしくなる部分や言葉も多く、物語や登場人物に入りきれないところはありました。

    30代、40代以上の年代が、この小説を書いていたとしたら、たぶん自分は少し白けた目でこの物語を読んでしまっていた気がする。だから、この小説を16歳が書いたというのは、ある意味では納得できるし、印象に残るのだと思える。

    この年代がどこかでぶつかる、夢や未来に対しての感情が感傷的に、そして瑞々しく描かれた作品でした。

    第29回小説すばる文学新人賞

  • 才能があっても、なくても、
    願い続けていても、諦めても、
    みんながそれぞれ違う苦しみを持って生きている。
    その苦しみに大きいも小さいもない。
    無意識に選びとっていて、どうしても選ばなかった方が良いように見える瞬間がある。
    夢は苦痛を伴うけれど、
    その夢を見ることこそが生きることの希望になる。
    満ち足りてないからこそ雄弁になるけど、
    雄弁さは満たされることへの始まりにはなり得る。
    祐人から理奈、理奈から祐人への憧れが苦しみを伴うようになったように、
    直哉の河村への憧れはいつか苦しみを伴うかも知れないけれど、
    ずっと追いかけたいという気持ちが無くならないでほしい。
    そして河村も同じように直哉を追いかけたいと思っていると思う。
    お互いに追いかけ合っていると思った。

  • 夢の話。
    私はまだみる方だからこそ考えさせられる作品でした
    今高2(新高3)なんですけど、この1年で感じられたので、夢のためにうける大学選択がせまってきていて、現実の厳しさを感じることを感じることがあります。そこで諦めて違う選択をとる人もいたり、踏ん張る人もいます。この話は夢の大切さを伝えるというより、夢のあり方を教えてもらったなと感じます。今色んな選択ができる時代だからこそ昔よりも諦める選択をしなくてはいけない時が多いのではないかと思います。すごく響きました。
    この青羽悠さんは昨年「凪に溺れる」で完全に虜になって文章というか世界観・考え方にほんまに好きで何周かしたんですけど、もうこれも好きで「幾千年の声を聞く」も購入してるのですぐに読みます!

  • 夢をテーマにした作品。高校時代、近くの東海高校に在学する同年代の子がすばる賞を受賞したという背景を相まって印象深い。
    みんな大人になるにつれて何かを諦めながら歳を重ねている。そして、まぁこんなもんかと終着していくと思うのだが、そんな中でも最後まで夢を追い続ける自分でありたいと思った。

  • 古本屋でたまたま目にして気になったから購入。

    著者が16歳の時に書いた作品で、16歳でこのような作品を書ける事にはただただ脱帽。

    恐らく、ネットの世界にはもっと色々な作品が溢れていて日の目を見るのを待っているのかもしれない。

    今作は、タイトルにもあるように星が重要なテーマになっている。

    閉館になる科学館を舞台に昔の友人が集う。

    なんか、それだけでいいなぁ〜と思う。

    子供から少し大人になって、幼少期を過ごしたところに、そのとき過ごした仲間と集う。

    いつかやってみたいな。

    河村さんいいなぁ〜。

    それにしても、プラネタリウム。

    寝ちゃうんだよなぁ〜。

  • 途中、ただの青春懐古物語か…とだれた感もあったが、謎が解けた瞬間からはとても面白かった。

    ただの4人の青春ではなく、過去の3人、現代の2人の糸の絡まり合いも面白い。

    祐人の夢を諦めた…の件はちょっとわかりにくいし、だからって別れる?みたいなところはあったけれど、それも夢とは…の帰結に繋がるのかな。

    『この星空の光は、写真に焼き付けるには弱すぎる。でも、心を動かすには十分だ』

    星がほとんど見えない空の下に住んでいるけど、時々、星空を眺めてみよう。

  • とても読みやすい小説だった。
    夢を諦めて公務員となった祐人と自分が全く一緒で感情移入してしまった。
    この小説を高校時代に読んでいれば、自分ももっと夢と向き合っていたかもしれないと感じさせられる小説であった。

  • 16歳かあ、
    等身大の青春とか大人になる不安とか 
    ほんのり漂っていて心地よかった

  • 読了。

    夢を追う勇気、諦める勇気、さがす勇気、、
    時間は有限です、今が過去に変わるのは一瞬です。
    分岐だらけの人生、正解探しをして生きてるわけじゃない。今やれることを信じてやるしか、進むしかないんだ。

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著者プロフィール

2000年、愛知県生まれ。2016年、『星に願いを、そして手を。』で第29回小説すばる新人賞を史上最年少で受賞して、作家デビュー。著書に、『幾千年の声を聞く』(中央公論新社)、『青く滲んだ月の行方』(講談社)など。

「2023年 『凪に溺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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