水滸伝 12 炳乎の章 (集英社文庫 き 3-55)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462081

感想・レビュー・書評

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  • 晁蓋の死から立ち上がろうとする梁山泊。宋江が部屋から出るまで郁保四は旗を立て続けた。林沖が言葉には決してしないけれど、郁保四を認めているのが読みとれて、微笑んでしまう。
    そんな中、塩の道を作って守り続けてきた盧俊義が捕われ、拷問を受ける。この拷問もよく考えられている。気骨の士である盧俊義を、心や体の痛みで危うくさせなるのでなく、沈機には拷問をしていく中での絆で喋らせようとさせた。かなり印象に残る場面。
    塩の道隠蔽のための北京大名府占領や、その過程での残酷な選択や呼延灼の攻め、趙安の宋江への奇襲から守るための韓滔の死、関勝の梁山泊攻めなど、多くの見どころがある。しかし、この巻の最大の見所はやっぱり燕青。格好良すぎる。これまで、父としている盧俊義の守り役として書かれていたが、この巻から燕青のみにもスポットが当てられる。英雄達との絆や、文官にも認められる多岐な能力や人格。けれど、やはりその中でも父を背負って死域を2日間歩き続けるという、父を守ることで一番輝いた。
    「私は、人ではなくなります。けだものでも、鬼神でも、なんでもいい」

    それから、朱富の店で英雄たちが韓滔を語るシーンも最高。朱富という豪傑ではない者の目で英傑が見れるが、それはなくとも会話がいい。
    「俺は宋江殿を死なせた男として、最初に処断されそうな気がする」
    「あの板斧でか、呼延灼」
    「そうだ、林沖。どこにも曇りのない、あの李起の板斧で」
    「願い下げにしたい、それは」
    みんな李起大好きだなw作者も含めてww
    俺も大好き(キリッ

  • 梁山泊軍の命脈である塩の道に青蓮寺の手が伸びる。
    捕縛された盧俊義の救出と、残った証拠を回収すべく梁山泊軍が出動する。
    今回は沈機の拷問談義と、関勝が印象に残った。暗殺者史文恭も意外な姿となって再登場。

  • 本巻の主な事件は、
    1 青蓮寺による廬俊義の捕縛
    廬俊義は梁山泊を経済的な面から支え続けてきた大物であり、ここで死亡することがあればそれこそ梁山泊にとって大打撃であるが、弟子の燕青の超人的な活躍により梁山泊へ脱出。この描写は読んでいて非常にハラハラした。
    2 梁山泊軍の北京大名府一時占領
    北京大名府といえば東京開封府に次ぐ大都市である。一時的であるにせよ、ここを占拠できたということは梁山泊の攻撃力がついてきたということだろう。
    3 雄州の関勝将軍による梁山泊進軍
    これにより北京大名府の占領は一時的なものとなってしまった。このとき梁山泊にはビッグネームは不在であり、ここでもし本腰を入れて梁山泊を攻められていれば間違いなく陥落していただろう。しかし攻撃しなかったことで、いよいよ関勝の梁山泊入りを濃厚なものとさせる。
    4 関勝将軍の梁山泊入り
    今まで梁山泊入りした元官軍の将は、その経過の詳細が描かれていたが、関勝の場合は葛藤や心情の移り変わりが主で、具体的な行動の記述がなされていない。実は気になって次巻を見てみたのだが、いつのまにか関勝一派が融け込んでいた。北方氏独特の遊び心の一つなのだろう。

    主要な官軍の将もほぼ梁山泊入りし、今後の人事的な展開が楽しみである。本作品の魅力の一つは様々な人間の生きざまが描かれることにある。お気に入りの登場人物は?と聞かれてもまだこれだという者は定まっていないが、全19巻を読み終えるまでには虜になるくらいのキャラが現れるのだろう。それを楽しみに読み進めよう。

  • 青蓮寺は執念で盧俊義を追い詰め、拷問する。
    梁山泊は、盧俊義奪回に向けて全力を傾ける。

    ストーリーは文句なしに面白い。
    人生の深みも感じ読み応えもある。

    しかし、一点どうしても納得ができない箇所は、
    宋江と呼延灼が、闇塩の道を守るため民間人100人を虐殺する場面である。
    これはどう考えても大量虐殺であり、ジェノサイドにも等しい悪行で
    いくら宗が悪政だからといって正当化できるものではないだろう。
    この一点がどうしても腑に落ちないが、
    それ以外は文句なしに面白い。

  • 北京大名府進行、ロシュンギ奪回。

  •  文句なくいろいろなことが破滅に向かっていて、滅びの美学って感じがしてきた。

     そういう中で、やっぱり燕青の活躍は心に残る。拷問の怖さと共に。関勝もあげたいのだけど、とりあえずは「顔を壊された男」宣賛の存在感に負ける。関勝が煮え切らないからかな。

     物語の進行よりも、登場人物の存在感が光る一冊。なかなか気持ちがよい。
    2008/9/12

  • 燕青が盧俊義を背負って、北京大名府を脱出する回。

    よって、普通なら燕青と盧俊義のことを書くのでしょうが、

    自分がこの巻で印象に残ったシーンは、拷問と豪傑たちが酒を飲みながら、死んだ仲間のことや大刀関勝のことを語るシーンです。

    拷問というと、相手の体に鞭を打って痛みを与えることで、暴露させるものと一般的には思われますが、ここに出てくる男たちはいずれも大志を抱いた豪傑たちなので、その程度では、暴露するはずもありません。

    ここでの拷問とは、相手の希望を一つ一つ潰していき、生きる希望を無くさせること。その後、同じところを何度も何度も責めては、一時休憩を与えて、また同じところを繰り返し責める。相手が死にたくなるまで、それを毎日繰り返す。

    そう!心を毀すのが、拷問なのである。

    水滸伝は大志を抱いた豪傑たちの物語。その根本を断つ!という意味でも、この巻の拷問シーンは興味深いシーンとなっています。


    そして、豪傑たちが酒を飲みながら語るシーン。

    呼延灼と彭玘が朱富の店で、韓滔の最後を語り合い(呼延灼・彭玘・韓滔は梁山泊に加わる前からの戦友)、そこに林冲と史進も加わり、話は大刀関勝から黒旋風の李逵のことまで放談します。

    この中で朱富だけが軍人でも豪傑でもありません。もちろん梁山泊の一員ではありますが、彼は梁山泊のある湖のほとりで魚肉の饅頭を売る飲み屋の主人です(梁山泊への船渡しが本当の彼の役割ではありますが)。

    雄々しい男たちが酒を飲みながら吐露するところを、私たちは朱富の目を通して垣間見ることで、英雄豪傑たちの中の弱い側面を見ることができるのです。

    英雄豪傑の活躍だけが読みどころではない。人には様々な魅力があるところを、この水滸伝ではあらためて感じさせます。

  • 2010年7月5日(月)に読んだ。

  • 今まで読んだ水滸伝の中で一番泣いた。

    廬俊義を救うために燕青が救い出して

    梁山泊まで運ぶところが泣けて仕方がなかった。


    死域をも超え、ただ無我夢中になって進むさまが

    鮮明に浮かぶようで自分まで苦しかった。


    あと、関勝が加わった。あー良かった。

  • 捕らえられた盧俊義を燕青が助け出す。関勝が進軍後、梁山泊に入るまで。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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