- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087464917
感想・レビュー・書評
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暮らしの手帖の編集長であるというだけで勝手に堅いイメージを持っていたのだが、良い意味で裏切られた。高校を中退して、渡米して、心の赴くままに本屋を始める。可能性の大きさを教えてくれる内容で、私はもっと若い頃に読みたかったなぁと…。(いや、今からでも遅い事はないか(^_^;))
後半、ロンドン・ニューヨーク・パリ・ロス・台湾・中目黒について書いてある旅行記?は大変面白かった。旅行雑誌には書かれていない裏旅行記という感じで。フラッと外国に行ってみたくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文庫フェアで出会った本。
人と同じにしなくてはいけない、ということに耐えられず高校を中退したあと、
日雇い労働をしながら生活する。
その時出会った人たちの影響で本を読むようになり、その中の一冊に強く感銘をうける。
この本の舞台に行きたい!
気持ちを抑えきれず、つてがあるわけでもないのにアメリカへ。
さまざまな人、文化と結びつくうち、
彼の中でひとつ生き方が作り上げられていく。
路上で本を売ったところからはじまり、
今もカウブックスを続けている
『暮しの手帖』編集長としても知られている松浦さんの動き始めた頃のことに重点をおいたエッセイ集。
この本を読んでいて、最初にひっかかったのが、文末でした。
丁寧なですます調のなかに、突然放り出される著者の本音のようなぶっきらぼうな一文があって、いちいちそこで、え?と止まってしまっていました。
それがいつのまにか、その文章が声を持ってきて、明る過ぎない喫茶店で向かい合って語って聞かせてもらってるような気持ちになっていきました。
著者自身が体感したことしか書かれてないんだろうな、という信頼が最後には残るエッセイでした。
文章に誠実さと、もっと良くできる!という強い向上心と、でもそんなことよりもこの素敵なものを残していきたいんだという使命感、その中に茶目っ気が入っていて、こんな人と仕事がしたいとそりゃみんな思うよね、となりました。
人柄がきれいに文章に染み込んでいる、とっても面白い本でした。
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松浦弥太郎『最低で最高の本屋』集英社文庫。
学歴を身に付けなかったことの言い訳をくどくど書き、ケルアックの『路上』に感化され、渡米したかと思えば、歯痛で8ヶ月で帰国するやアメリカにかぶれ、サブカルチャー周辺を漂い、自分は世間一般の人間とは違うのだと自負する著者による超つまらないエッセイ集。
青春を学問や運動に捧げ、進むべき道を模索し、社会のお役に立つ職業に就き、全うで真っ直ぐに一生懸命に生きる人びとがどんなに偉いことか。遊ぶのも良し、時に人生の脇道を進むのも良し。しかし、負け犬の遠吠えのような下らぬ価値観を押し付けられては吐き気がするだけだ。
本体価格533円(古本100円)
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松浦弥太郎版「就職しないで生きるには」。就職せずして個人で仕事をしていく方法。
松浦さんといえば「暮らしの手帖」編集長で古本屋さんをやっている文化人、っていうイメージが先行しているから、学歴も高い人かと思っていた。高校中退ということをこの本で知ってびっくり。
でも、そういうレールの敷かれた道を歩いてきたんじゃないからこそ、視野が広かったり他人と違う視点をお持ちなんだろうなあと納得もする。簡単じゃないよね。
「本当のことってなんだろう」と葛藤する思春期のことも書かれている。私も高校生ぐらいのときは多数決で決められた「正しさ」とか「当たり前」にうんざりしてたな。反骨精神、というものなんだろう。思春期の中で養った反骨精神が、それからの人生で必要になる自分自身の価値基準を形成するのに大切になっていくものだと思う。
道徳的な「正しさ」ではない、自分自身との戦いから学び、勝ち取った「正しさ」が底流に流れているからこそ松浦さん自身の輪郭がはっきりと見えてくる。
古いものの価値を知っていて、本が好き、という時点で私にはとても好ましい人物に映るのだけど、それだけじゃない人間力を兼ね備えている人。
人間としての幅の広さは、ニューヨークの道端で本を売っていたときから培われていたという。地をなめるようなつらさもあったはずなのに、「自分が一番楽しかったころ」として振り返っている。
働くって、単に楽しい、楽しくない、つらい、つらくない、のどれでもなくて、むしろそのすべてをひっくるめたところにその本質があるんだと思う。働くことの原点にいつでも立ち返れる人。そういう人こそプロフェッショナルと呼ばれるんだと思う。 -
松浦弥太郎さんがどういう人か全然しらなかったけど、
実はすごいひと。cowbooksのことは知っていた。
すごく面白い人生を歩んでいる人で、
参考にできるかはわからないけどパッションはもらえる本。
とりあえずやってみなきゃわからないし、
やってみればどうにかなっちゃううのかなあって思える。
そんなセンスを兼ね備えてみたい。
海外にたくさん行っていてうらましい。
最近そんなことばっかり考えている。 -
一行目の『就職しないで生きるには』は以前から気になる本のひとつで、それがひっかかって購入。著者がまさか『暮しの手帖』編集長だったとは知りませんでした。「ヒント集」がすきで、たまに本屋さんでぱらぱらめくったりしていたのでなんだかうれしかった。だけどあまりにもやさしい文章だったから、読むのが途中でつらくなりました。経験してきた様々な思いや出来事が積み重なって「松浦弥太郎」を創っているなら、わたしはこんな人間にはなれない(でも、なりたいと思う)。高校中退後の日々の葛藤や小さな営みから今に至るまではたぶんすごくつらいものであったと思うのに、読んでるわたしを叱ってくれなかった。ただひたすらにやさしくて、だけど意志のある文章だと思った。
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夏フェア本。松浦本2冊目。生き方指南。というと、大げさだけど、生きるヒントnot五木寛之、仕事のヒントが詰まっている。気がする。
編集者やデザイナーってのは特別な人や肩書ではなくて、生きている以上、みんなが編集者でデザイナーなんじゃないかと漠然と思っていて、そのコツはなんぞやっていったら「複雑なことを単純化していく作業」なんだなって。ストンと心に落ちた。 -
最高の面と最低の面の両方がバランスよくあることが本当のこと。
孤独を受け入れること。
自分が成長するために仕事をすること。
続けること、工夫すること。 -
“街の本屋さん”の代表格、千駄木・往来堂書店の
『D坂文庫』から選んだ一冊。
『暮しの手帖』の編集長・松浦弥太郎さんが自身の
青春時代と、そこから得たものをつづったエッセイ。
高校を中退してアメリカに渡ったといういわゆるアウト
ローから始まって、本を売ることに楽しみとやりがいを
見つけたことが軽いタッチで描かれている。
でも、このタッチにだまされてはいけないはず。きっと
大変な苦労をしているはずだから。
でも、苦労したことをまったく出さずに、こんな
タッチで書いてしまうような人をワタシは支持する。
難しいことを簡単に説明できる人と同じように。
だから、このタッチの中にときどき顔を出す人生訓も
ワタシは素直に受け入れられた。(読んでいる間は
「人生訓」なんて堅いフレーズすら思いつかなかった
けれど、これはまちがいなく「人生訓」だ。)
下手な人生本を読むよりよほど効いた、ワタシには。
これでまた気になる著者さんが一人増えた。 -
著者が中目黒に本屋を出すに至るまでの経緯がわかる一冊。であると同時に、好きなことが仕事になっていくうえで、著者が働くということに対して思うことを綴っている。
自分がいなくても続いていく本屋を作りたいという思いに本への愛を感じたなぁ。
今はネットで簡単に欲しい本を探せて買える時代になってしまったけど(むしろ電子書籍もある)、やっぱりたくさんの本に囲まれて、そこから自分の目で本を探すのって楽しいし、最高にワクワクする。本屋さんはそういう本との出会いの場なんだなぁと改めて思った。
いつか私もカウブックス訪れてみたい。