追想五断章 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.69
  • (259)
  • (716)
  • (591)
  • (80)
  • (7)
本棚登録 : 5731
感想 : 467
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468182

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 米澤穂信というミステリ作家は本当に面白いことを考える人だなぁ、と思う。そして果敢にチャレンジし、きちんと形に出来るすごい人だとも思う。

    伯父の古本屋に居候する青年、菅生芳光(すごうよしみつ)のもとに、死んだ父親が書いた五篇の小説を探してほしいとの依頼が舞い込む。存在するかもわからない小説の行方を調査するうちに...

    リドルストーリーとは『結末をあえて書かず読者に委ねるかたちで謎を提示する物語』という解釈で良いのだろうか。
    物語の中で探す目的となる小説の五篇全てが、その『リドルストーリー』となっているが、その『小説内小説』の出来がすばらしく、一つの読み物として楽しめる。また、結末のない物語という趣向が『追想五断章』という小説自体の仕掛けにもつながっていて、謎が解明されていく後半は唸らされた。

    ミステリの仕掛けの糸と物語の糸が有機的に絡み合い、また解きほぐされていく様はいつもながらに見事。
    全編を通しての胸の中を風が吹き抜けるような寂しさ、哀しさ、苦さは好みの分かれるところだろうが、僕は好きだ。

  • これは凄い。
    プロットが精緻で、読み終えてびっくり。
    真相は序章に匂わせてあったけど、終盤に可南子が独白するまで辿り着けずでした。
    リドル・ストーリー本文と、「真相」を示す最終行の関係にズレがあるんだろうなあ、という点は、何となく察したけど。

    解説にもある通り、『アントワープの銃声』の雰囲気は、『ロス疑惑(疑惑の銃弾)』とそっくりで、もしもこんな真実が隠されていたとしたら、と思うと、ドキリとする。

  • なんだろう?今思い返せば、「特にここが!」ってポイントは全くないのに、読んでる時はすげー怖かった。
    幽霊も殺人鬼も出てこないのに、真実を知るのって怖いのね。
    あれか。暗闇を懐中電灯一つで進んでいく感じか。先に何が潜んでるかわからない恐怖。

    そもそも話が全体的に暗い。というか、薄暗い。
    登場人物も口数が少ない上に何か影を抱えてるし、舞台は薄暗い古書店だし、話の本筋以外も全部どんより暗い。
    プラス、5つの短編を探し解読するに連れて、どんどん真相の、しかも良くないニュースのほうが集まってくる。

    リドル・ストーリーの最後の一行を入れ替えると、話の意味が変わってくるというオチは容易に予想ができるけど、まさか今まで以上に暗い結末に持っていくとは、予想の上を行かれた感じ。
    これ、米澤穂信の作風を知らない人が読んだら、さぞやがっかりする内容だと思う。救いがなさすぎて。

    と、否定的な感想を書いたけど、自分は好きでした。ホラー好きだし。
    「こんな恐怖もあったんだ!」という感動がありました。

  • 死んだ父の書いた小説の載った雑誌をさがして欲しい、と若い女性が古本屋にやってくる。昨日引き取った古本の中にあるのではないかという。やはり父を亡くし大学を休学して叔父の古本屋で居候をしていた芳光は、探し始める。短編のその小説は全部で5編あり、それぞれ別の同人誌に載せられていたのだが、探すうちに依頼人の少女と、その母と父にまつわるある噂に行き着くが・・

    挿入される小説がちょっと読みずらかった。


    「小説すばる」2008.6月号~12月号連載

    2009.8.30第1刷 図書館

  • テンポよく探し出せて、そのまま一晩で読み終えました。結末は予想できた範囲内、だけど辿る内に人物像が見えてきて、謎解き感が面白かったです。
    なんとなく読後モヤっとしたのは、主人公の人生の一部を垣間見たような傍観者だったからだろう。

  • 面白かった。
    あんまり期待せずに読んだのだけど、期待以上に面白かった。

    主人公は経済的な事情で大学を休学し、
    古書店を経営する叔父のところに居候しており、
    古書店を訪れた女性に依頼され、小説5篇を探していく
    というストーリー。

    殺人事件の容疑者が残した小説を探していく過程が
    うまくて引き込まれてしまう。

    人が次々と殺されていくミステリーのような
    切迫感・緊迫感が望めないはずの、
    小説5篇を探していくというだけのストーリーで
    ここまで読者を物語に引きずりこませるのはすごい。

    5篇の作中作も秀逸で、不思議な味わいがある。

    時代設定はバブル崩壊後の90年代初頭。
    日本が失われた10年という暗い時代に突入していく雰囲気と
    大学生でもない身分不定の居候アルバイトという
    何者でもない主人公の暗さが全編通して感じられる。

    「アントワープの銃声」という殺人事件も、
    海外で行われた妻殺しの疑惑ということで
    三浦和義の「ロス疑惑」を彷彿とさせるもので、
    暗い雰囲気が読後も心に残る作品だった。

  • 伯父が営む菅生書店に身を寄せる菅生芳光は、北里可南子という客から依頼を受け、父親の遺した五本の短編小説を探すことになる。
    五本の短編には共通点がある。それらはどれも、結末を読者に委ねるリドルストーリーであるということ。そして芳光は、それとは別の共通点と、作者北里参吾に関係する過去の事件を知ることになる。

    リドルストーリーにはやはり結末がないほうがいい(というか、結末を読んだらしっくりしてしまうような話は良質のリドルストーリーではない気がする)。
    伯父さんが本当はどう感じているのかや芳光がこのあとどういう人生を歩むのか、結局それもうまく見えてこない終わり方が、さりげなく気が利いている。すきです。

  • 面白かった!リドル・ストーリーと真実を繋ぐからくりが解けるにつれ、興奮で鼓動が早くなっていった。途中から、もしかしたらと思っていた事が当たっていて「やっぱり!」と思う感動と、まさかの種明かし。つまり、結論は予想できるものであっても、それに至る仮定が自分には思いもつかない流れで…。
    米澤作品はそういう面白さがあり、自分の波長に合っていて好きです。

    • kwosaさん
      おっしゃる通りですね。
      結果だけでなくプロセスは大切ですよね。
      米澤作品は仕掛けの面白さと物語の面白さを兼ね備えた希有な存在で、僕も大好きで...
      おっしゃる通りですね。
      結果だけでなくプロセスは大切ですよね。
      米澤作品は仕掛けの面白さと物語の面白さを兼ね備えた希有な存在で、僕も大好きです。
      花丸ありがとうございます。
      2012/05/26
  • とてもおしゃれな作品だと感じました!
    アントワープの銃声の真実を世間に取り掛けるためのリドルストリーが、娘から真実を遠ざけるために使われている。
    各リドルストリートも引き込まれる面白さがあり、しかも結末を入れ替えることもできる。
    そして何といっても最後に、愛があったのかを謎にのままにし、リドルストリートのように締めくくっていて、本当に何から何まで洒落ている作品でした!

  • 主人公がひょんなことから依頼された、5編のリドルストーリーを探すお話。
    リドルストーリーと言う言葉をこの作品で初めて知りました。
    単純にそれだけでは終わらないのが米澤穂信さんですね。面白かったです。

全467件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

米澤穂信の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×