廃墟建築士 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468809

作品紹介・あらすじ

いつか崩れて自然へと回帰していく姿に魅せられ、「私」は廃墟を造り続けてきた。時の経過によって醸成される廃墟こそが、その国の文化的成熟度を表すのだ。だがある時、「偽装廃墟」が問題となり…(『廃墟建築士』)。七階での事件が多発し、市は七階の撤去を決定した。反対する市民は決起集会を開くが…(『七階闘争』)。意識を持つかのような建物に現実と非現実が同居する、不思議な4編の物語。

感想・レビュー・書評

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  • うーーわーーー!!
    どの作品も、現実の社会問題と幻想をしっかりと絡めてあって、上手い。上手い。
    良いとは聞きながらも機会を逃し、著者初読み。
    もっと早く読めば良かった…と思うけど、今でなければここまで響かなかったのかも。
    『七階闘争』が特に好き。
    フルスイングでバットで頭を殴られた気分。
    ずっとぐわんぐわんしてる。
    他の作品も読みたい!

  • うーん。建築、廃墟、図書館と好きなモチーフが揃い踏み。
    日常と少しずれた妄想的な設定も好みのはずなのに
    入り込めなかった。
    設定・モチーフは面白いけれどストーリーにひねりがない。
    人物描写が薄い気がする。主人公に共感できずに置いてけぼりに
    されたまま話が進んでしまう。
    どのストーリーも主人公の考えもそうだけれど、性別さえも
    判然としない。あ、男(女)だったのねと途中で気づいたり。
    高橋源一郎の解説もなるほどと思う反面、これって「解説」することから
    逃げているよなあと思ったり。
    色々消化不良。収録四編の中では「図書館」が好きだった。

  • この作者の話のパターンは大きく2パターンある。
    奇妙な世界を受け入れ生活している人の視点と、受け入れられず疑問を持つ人の視点 いつも意識して読んでいる。

    ●「7階闘争」
    立て続けに起きた事件、事故が全て7階で起きたことから、全ての7階を排除しようとする運動が高まり、主人公は反対活動に巻き込まれていく話
    多分、「7階」を何かに置き換えると、作者の意図が見えるかと思って挑戦してみたが…難しい。しかも解説の方も同じようなことを語ってた(^^;)

    現実にも駅前なんかで「なんらかの抗議活動」をしているのを見かけるけど
    真面目に向き合ったことがない私にとっては「無意識、無感情、無関心」を怒られているような物語にも読めた。
    「となり町戦争の縮小版」のような印象

    ●「図書館」
    「本来は存在しない動物を具現化してみせる能力」を持つ女性が主人公で、
    地方の図書館の「野生の姿」を夜間開館で観覧できるよう調教する話
    「図書館を調教」と書くだけでかなり違和感があるが、実際にいくつもの紆余曲折を経て調教手段が確立され認知されているかのような世界観で話が進む。他の短編「動物園」の続編

    ●他「廃墟建築士」「蔵守」の二篇


    直感的に現実の生々しいモノと結びつく言葉を、存在しない事象の説明に結びつけることで
    作者自身がこの能力をもち
    「本来は存在しない事象」を、実態があるかのように見せるている。

    そこが毎回面白く、読んでしばらく何度か振り返っては「あれはもしかしたら…」と考えることがある。

  • 小説が一言では表現できない感情や説明を物語という形で表出させるものだとしたら、象徴性なんて物語とはあまり相容れないものなのに(いわゆる良く分からんというやつだ)、三崎亜記の物語は象徴性に思いっ切り具体性を持たせるという綱渡りのような技巧を成功させている。高橋源一郎の解説が平易な表現でありながら的を射ていて、三崎亜記の小説は具体的な奇想(?)を描くことで七階も廃墟も図書館も蔵も、置き換え可能な何かをそこに照射する。それは読む人によって受け止め方が異なる深さを持っていながら、文字通りのフィクションとしても抜群に面白い仕上がりになっている。個人的には素敵な光景を見せてくれる「図書館」が好き。

  • 言いたいことは分かるし設定も面白いのだが、寓意が説明じみていて残念だった。上手にまとめすぎてしまって広がりを感じない。イマジネーションを巻き起こせなかった。

  • 「廃墟を作る」という言葉に心ひかれて購入。

    物質的な建築だけに終わらず、時間をかけて「廃墟」にしていく過程を大切にする、そうして先人達が残した「廃墟」に想いを馳せる、そんな表題作でした。
    ただ、私個人の気持ちとしては、建築物は実際に利用されてこそ、と思うので、住みもせずに作られた廃墟など偽物!とか思ってしまうけれど。

    この短編集に限らず、この人の作品は「もしもネタ」が多い。
    「もしも、そういう常識(読者にとっては非常識)がまかり通ってる世界だったら」というアレだ。

    理屈をこねくりまわすのに飽きた時に、ちょうどいい本かも。

  • 奇々怪々。世の中の情理とは相容れないながらも、決然としたリアリズムを垣間見ることができる。そしてそれらを峻厳なる意志が貫いていると思う。

  • 暗喩、というのだろうか。
    廃墟を建築する、というのは、理に叶わない話に聞こえるかもしれないが、結果全ての建物は無に帰す。
    つまり、その無に帰す前の段階では、どんなに短い間でも、廃墟、となる理屈ではある。

    最近、自分が入社当時やっていた仕事で、あるいはそれ以降やった仕事で、今もかたちをなしている、価値を持ち続けているものはあるのだろうか、と思うことがある。
    もう少しスコープを広げると、考えたくもないが、自らの人生それ自身も、同じだが。

    だからといって、全て無意味と短絡するのも、多分早計だとは思うが、はきとした答えは見つからぬままではある。

    この小説を読みながら、そんなことを考えた。
    古くからの友人の推薦だったのだが、同じことを考えながら、読んで、勧めてくれたのだろうか。

  • 内容説明
    いつか崩れて自然へと回帰していく姿に魅せられ、「私」は廃墟を造り続けてきた。時の経過によって醸成される廃墟こそが、その国の文化的成熟度を表すのだ。だがある時、「偽装廃墟」が問題となり…(『廃墟建築士』)。七階での事件が多発し、市は七階の撤去を決定した。反対する市民は決起集会を開くが…(『七階闘争』)。意識を持つかのような建物に現実と非現実が同居する、不思議な4編の物語。

  • 建物にまつわる不思議な短編集。
    七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野性がある。蔵に意識がある。
    私は中でも七階闘争がすきでした。

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著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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