平面いぬ。 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475906

感想・レビュー・書評

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  • どうして乙一の短編集は表題作よりそのほかの方が好きなのだろう。今回は平面いぬが良かった。乙一って小さい世界で事件を起こすのが得意だよなって思った。いや、そんな話を私が好きだから印象深いのかも。とにかく来るべき時が来たら私は猫のタトゥーを彫るぞ。

  • 昔、16歳で、デビューしたという 乙一氏の本を読んでみたいと、思いながらも、購入したのは「平面いぬ」で、時代小説に、凝ってしまって、そのまま本箱に仕舞われたままであった。

    このコロナ禍で、我が近くの30年程のツタヤが、ついこの間閉店していた。
    いつも通りあるものだと、思っていたのに、この1年当たりまえが、当たりまえで無くなった。

    そんな訳で、我 本箱から、取り出した1冊である。
    4話からなる。
    「石の目」
    子供の頃 拾った石から 成人した時迄、心にひかかっていたものが、成人してからも思いが募る。
    目を見たら、石にかえられるという伝説や行方不明の母の思い、・・・・
    友人ともに山へ、、、そこであった女の人は・・・・母なのか?それとも、石にかえる女か?
    ぞわぞわ・・・とした感覚で、読み通す。
    友人は石になっていた辺りでは、どうなる!!!と、思って慕ったのだが・・・
    自分が死ぬときに、気の箱を開けてしまいたいと、思う。
    苦痛も無く、そのままの姿で風化してくれたら、それもいいかもなんて、考えてしまった。

    「はじめ」
    友人との待ち合わせの喫茶店、そこで、はじめの1周忌の話から展開知っていく。
    友人と2人で、作り上げた人物、幻覚の世界を作り、現実の世界の住人と遊ぶことが、出来る不思議な感覚の話。
    何処までが、現実で、何処までが、偶像の世界なのか?
    ノビが、助かったのには、ホッとしたけど、・・・・
    2人の中学生が、8年間、はじめという女の子と、一緒だったけど、2人も大人になったから、消えて行ったのかも・・・

    「BULE」
    ケリーの作る人形は、素敵と評判である。
    そして、心を込めて作成した王子・王女・騎士・白馬、・・・・そして、残り切れとぼろと化した毛糸の残りで、もう1体を作った。
    それは、目もマジックで、・・・名前をBULEとつけられた。
    売られた先は、10歳の娘ウェンディの誕生日プレゼントになった。
    娘は、4体は、大事に扱ったが、BULEは、粗末な洋服などで、ほっておかれ、弟のテッドのものへ。
    人形の世界も、人の気配がないと動き出す様は、デイズニー映画のトイストーリーと同じ。
    でも、BULEの健気さと、テッドの優しさが、好きである。
    テッドが、男の子でも、洋裁が、出来る子であれば、残ったブルーの布地で、小さな人形を作って欲しいものだと、思いながら、無事の騎士も、最後まで、ウェンディは、大事にしないように思われたのは、気のせいかもしれない。

    「平面いぬ」
    高校生で、親にも言わずに入れ墨をするのだろうか?
    今は、中学生から、化粧は勿論、ピアスの穴を開ける子がいると、聞いたけど、はじめは、もう成人した女性が、主人公だと、思っていた。

    主人公の女子高校生は、3㎝ほどの青い毛並みの犬を彫って貰いポッキーと、名付ける。
    そのポッキーが、動き出す。
    黒子も食べてしまう状態に。
    食事もするのだと。
    不思議なのだが、自分の身体中で、動き回る犬の存在は、どうなのだろうか?
    そして、両親と優等生の弟の3人がガンと言われて あと数か月の命と診断される。
    そして、1人ボッチになるのだが、・・・腕に、又、もう1匹 彫って貰いオレオと名付ける。
    そして、それは、今 子犬も一緒に、身体中を動き回っている。
    もし、これが、身体中でなかったら、良いけど、このまま増え続けるのだろうか?と、先の事を考えてしまって、余計に不安になった私は、やはり年寄りなのかもしれないと、思いながら、読み終えた。

    本のカバーが、最初 青色の犬が、お臍の近くに描かれながら、ジーンズの前側が、お尻のように思えて仕方がない。
    右手側のオレンジのTシャツのしわが、肘部分に見えるからかも、・・・錯覚で、お臍が無くて、ジーンのホックが、開いて無かったら、どう見ても、背中側に見えてしまう。
    そんな摩訶不思議な感覚と同じように、本の話も、摩訶不思議な話ばかりであった。

  • 4つのお話が詰まった短編集。
    どれもファンタジックながら、もしかしたら現実に起こり得そうなお話が並んでいてとても面白かった。
    うまい具合に全て上手くはいかない切ない終わり方で、記憶に強く残るお話ばかりだった。個人的には後に書いてあるほど好み。

  • 4つの作品が入っている短編集。
    どの作品も、乙一ならではの不思議なストーリー。
    最初、暇つぶしで読み始めたけど
    どんどん物語に引き込まれてしまいました。

    個人的には『はじめ』という作品が好きです。
    面白いのに切なくて、なんだか懐かしいようで。

    やっぱり乙一はスゴイ。

  • BLUEが1番印象に残っている。決して幸せな人生では無かったけど、好きな人のために全てを捧げることができるのはとても幸せだと思う。切なくて泣いてしまいました。

  • 少し不思議で切ない短編集。

    「石ノ目」……目が合うと石にされてしまう、メデューサのような伝承。主人公たちが迷い込んだ家の家主は本当に石ノ目なのか。ここで消えたと思われる母との再会は。

    「はじめ」……学校の鶏小屋の当番で、可愛がっていたひよこを誤って踏み殺してしまった主人公。とっさについたウソは、「はじめ」という架空の少女のせいにするもの。それから「はじめ」は彼らだけが見られる幻覚として本当に現れた。

    「BLUE」……腕利きのぬいぐるみ作家の遺作となった、王子、王女、騎士、白馬、そして余り物の布で作られた、青い肌に歪な形をしたブルー。彼女たちは特別な布でできていて、動いたりぬいぐるみ同士で話したりすることができた。ウェンディという少女にプレゼントとして贈られるが、ブルーだけは気に入ってもらえず、粗暴な弟のテッドの手に……。
    4作中個人的に一番好きな作品。子供の残酷さと温かさをより如実に表に出したトイ・ストーリーのような。

    「平面いぬ。」……中国人の彫り師によって左腕に彫られたタトゥーの犬が、生きて動き出す。
    山田のキャラが好き。ラスト手前、したり顔で説教をする老人にケーキを投げつける場面がいい。

  • 『石の目』これは民俗伝説や怪談ファンにはたまらない話。その目を見た者を、石に変えてしまうという魔物の伝承を巡る怪異譚。そして、一番印象に残ったダウナー『BLUE』。命を吹き込む事ができるという生地で作られたぬいぐるみ5体のうち、余った生地で作られた青い肌のみずぼらしい人形ブルー。しかし、その心は人間よりも純粋で美しい。ありがちな童話っぽい話ですが、淡々とした物言いが一層その哀しさを際立たせ、短い文章で独特な世界を紡ぎだす。せつなさや繊細さなどが色濃く出ている白乙一作品です。

  • 表題作が好き。ふふっと笑えたり切なかったり、乙一独特の感覚。

  • 内容紹介
    わたしは腕に犬を飼っている――。ひょんなことから居着いてしまった「平面いぬ」ポッキーと少女の不思議な生活。天才・乙一のファンタジー・ホラー傑作集。『石ノ目』改題

  • まず一言。ホラーではない。
    いや、超自然現象を総合して『ホラー』と呼ぶのなら本書の内容も『ホラー』なのかもしれないけれど。個人的にはホラーではない。ファンタジーなのは納得だけど。怖くない。

    何故なら全篇に、愛が塗れているから。
    確かにメデューサっぽい設定だったり、ダークなトイストーリー感はあるけれど。全然怖くないです。寧ろ時々ほっこり最後は悲しい愛が目一杯詰め込まれていて涙腺が刺激される。

    乙一作品は本書と、児童書の一冊しか読んだことがないのだけれど。ゾクっとする話を期待していたので、ちょっと肩透かしだった。

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著者プロフィール

1996年、『夏と花火と私の死体』で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー。2002年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞を受賞。他著に『失はれる物語』など。

「2022年 『さよならに反する現象』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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